村での生活をクレアさん達に話しました
「してタクミ様。ブレイユ村での生活はどうでしたかな?」
「セバスチャン、屋敷にいる時からタクミさんの事を気にしていたようなんです。新しい事を思いつくんじゃないかって……すみません」
「我々とは違う知識の中で育っているタクミ様は、面白い提案をされますからな。ついつい期待してしまうのです」
「はぁ……まぁ、村では楽しく過ごせましたけど……えっと……」
リーザやデリアさんの、獣人に関する話もそこそこに、セバスチャンさんからブレイユ村での事を聞かれる。
何やら、新しい事に触れると俺がこれまでなかったような事を提案するのではないか、と期待しているらしく、申し訳なさそうにするクレアも、期待している雰囲気を隠していないので、同類と言えるかもしれない。
とはいっても、そうポンポンと新しい事を思いつくわけでもないしなぁ……とりあえず、村で過ごした話でもしておこう。
「ふむ……井戸や川から水を得て、生活の基盤にするというのは一般的な事ですな。多くの村ではまだ、水道という設備が整っておりません」
「元々、井戸や川の付近に人が集まり、村や街ができるので……水道は多くが必要とされているわけではないのよね」
「便利なのは間違いないですけど、必ず必要というわけではないですね」
村に滞在している間、飲み水だけでなく生活用水は全て村にいくつかある井戸から汲み上げていた。
水場の近くに人が集まって……というのは地球の歴史でもそうだし、生き物にとって必ず必要な事だから、これは当然だし理解できる。
ただ、汲み上げた水を運んだり、竈場でためておくのはちょっとした苦労を伴うけど、水道を通す工事をするのとどっちがいいかと問われたら、よくわからない。
便利なのは否定できないけど……既に井戸や川の水を使う事に慣れていたら、どうしても工事して水道を通す必要性はないのかもしれないな。
「あ、でもお風呂は欲しかったかな。屋敷でもそうだけど、やっぱり温かいお湯に浸かるのに慣れているのもあるから」
「あれは大量の水を使いますからね。豊富な水源がある場所でも、そうそうできません」
「水道があるからこそ、できる事ですな。大量の水を人が運んで、多く消費するわけにも参りませんから」
「そうですよね……」
村での生活に不満らしい不満はなかったけど、やっぱり湯船に浸かれなかったのはな。
一日や二日や、男だから体を拭くくらいでも我慢できない事はないけど、それでもお湯に浸かるのに慣れている身としたら、やっぱり欲しい所だ。
クレアやセバスチャンさんが言うように、井戸や川から浸かれる程の水を運んで、さらに沸かして……というのは手間がかかり過ぎるから難しい、というのもわかるけど。
「サーペント酒、ですか。あの村ではそのようなお酒が飲まれているのですね?」
「うん。だけど……クレアはあんまり見ない方がいいかも……」
「サーペントは、オーク同様に仕留めた後に食べる事ができる魔物とされています。体内の毒に対処する必要はありますが……それでも、体に良い食べ物であると。一部でサーペントの肉部分が取引されてもいますが、あまり好まれてはおりませんな」
「それはどうしてなのかしら? 体に良いのであれば、高値で取引されそうだけど……」
話が村で親しまれているサーペント酒の事になるけど、あの見た目はあまり女性が見て喜ぶ物じゃないから、お勧めはできない。
セバスチャンさんは当然のようにサーペントの事を知っていたらしく、食べられる事なども知っていて簡単に説明してくれた。
クレアさんは好まれていない理由がわからないようだけど、俺は実際にお酒を飲んだし、その身も食べたからセバスチャンさんの言いたい事がよくわかる。
「簡単に言うと、その味ですな。サーペントに関して、美味しいという評判を聞いた事がありません。体に良いと言われていても、美味しくない物とわかっていれば好んで食べる者は少ないでしょう」
「あと、その見た目もですね。まぁ、調理されたのはまた違うのかもしれませんけど、ブレイユ村のサーペント酒は、ぶつ切りにしただけですから……」
「毒を抜く以外は、他でも調理はそう大差ありません。おそらく、タクミ様が見た物とほぼ同じでしょう」
「おいしくないうえに、見た目が悪いなら、誰も食べたくないわよね……体に良いから、少量は食べる人もいるのでしょうけど」
好まれていない理由を説明するセバスチャンさんに、見た目に関しても説明する。
クレアさんは、サーペント自体は知っていたようで、その見た目を想像して渋い表情になった……まぁ、単純に蛇が十センチくらいの大きさで切られているだけだからなぁ。
あとさらに付け加えるなら、歯ごたえとかもあるけど、さすがに想像させるのも嫌がらせになりそうなので控えておく。
村の人達やフィリップさんには言えなかったけど、あれを食べるならオークの生肉を食べた方がマシだと思う……いや、オークの方は焼かないとお腹を壊したり、それはそれで大変な事になりそうだけど。
「しかしサーペント酒ですか……いくつか、手に入れておきましょうかな」
「え……セバスチャン、好まれていないのにどうして?」
「……タクミ様、村の者達が好んで飲んでいるというのは、それなりの理由があるものですが……私が考えているのとは違うのでしたな?」
何故かサーペント酒に興味を持ったセバスチャンさん。
いくつか買うつもりのようだけど、クレアが少し嫌な顔をして問いかける。
まぁ、見た目を想像したら欲しいとは思わないだろうけど……セバスチャンさんは、クレアの問いにはすぐ答えず、俺へと質問した。
「セバスチャンさんが考えているのがなにかはわかりませんが、村長さんは昔、お酒で暖を取るためと言っていました。薬草を使った薬味と一緒に飲む事で、薪を節約していたようです」
「ふむ……クレアお嬢様。サーペントには一つ大きな効果があるのです。まぁ、そこから体に良いという話が広がったのですがな?」
「そうなの?」
「はい。もしかしたらブレイユ村の者達は、その事も知っているかしれませんが……サーペントを食べると、男性が元気になるのですよ」
「男性が……それは私のような女性には効果がないの?」
「ない、とは言えませんが、わかりかねます。ただ、男性は目に見えて元気になり、実感も得られやすいのです」
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