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920/1998

空に見覚えのある何かが飛んでいました



 デリアさんの家庭教師に関しては、リーザが問題なく読み書きができるようになって欲しいというくらいなので、意気込む必要はあまりないんだけど、本人が少し不安なのか、もう一度勉強し直すような事を呟いていた。

 そんな風に、三人で椅子に座ってお茶を飲み、のんびりと過ごしながら、ふと空を見上げた瞬間……。


「ぶふぅっ!!」

「ぬぁ!? タクミ、汚いぞ!」

「ご、ごめんフィリップ。でも、あれって……?」

「ったく、何が……って、あぁ!!」

「どうしたんで……鳥、にしては大きいような? 森でも鳥は見かけたり、空を飛んでいるのを見ますけど、それと比べると……」


 見てはならないもの……ではないはずなんだけど、本来そこにいるはずのないものを見て、思わず飲みかけていたお茶を噴き出した。

 向かいに座っていたフィリップが、俺の噴き出したお茶をもろに浴びて申し訳なかったが、上空を示してそちらを見てもらうと、同じように驚いた大きな声を上げた。

 そういう反応になるよなー……デリアさんは、あれを初めて見た時の俺と似たような事を言っている。


「あれって、ラーレだよな?」

「……あの大きさは間違いないはず。しかし、なんでこんな所に?」

「タクミさん達は知っているんですか? でも、あの大きさだとかなり強力な魔物だと思うんですけど……上空から襲って来る魔物は苦手です。村の人達にも避難してもらわないと!」

「あーデリアさん。多分、というか絶対大丈夫だから、安心して。人を襲う事はないはずだから」

「そ、そうなんですか?」


 飛んでいる鳥、というより魔物……相当な高さを飛んでいるのに、体の大きさがはっきりとわかるくらい大きな体。

 さらに、初めて遭遇した時と同じく、こちらを窺うように村の上空をグルグルと回っている。

 間違いなく、ラーレだろう。


 デリアさんは、猫よろしく上空からの魔物は苦手にしているようで、立ち上がったはいいが、少し腰が引けていたりする。

 ただ、魔物と判断して危険だと考える警戒心は素晴らしく、村の人達にすぐ避難させるよう動こうとしていた。

 でもまぁ、相手はラーレだから大丈夫だ……とりあえず、走り出そうとするデリアさんの肩を軽くつかんで、止める。


「うん。まぁ、なんでここにいるのか……って、今旋回する時にチラッと見えたけど、フィリップ?」

「あぁ、二人乗っていたな。遠目だから顔とかは見えないが、多分ティルラお嬢様と……後ろのは鎧を着ているようにも見えたから、ヨハンナだろう」


 上空から窺うラーレは、空で滞空するよりもグルグル旋回しながら動いている。

 その際、旋回するために体を傾けた一瞬で、その背に乗る何者かがチラリと見えた。

 フィリップさんにも聞くが、同意見のようだ……間違いなく、ティルラちゃんだろうなぁ。

 でも、どうしてこんな所までラーレに乗って? なんて、じっくり考えているわけにもいかないようだ……デリアさんは俺が大丈夫と伝えて止まってくれたけど、他の人達が空を見上げてにわかに村内が騒がしくなってきている。


「ここで、皆に大丈夫と呼び掛けても……」

「効果はあんまりないだろう。実際に通常は見られない大きさの魔物が、空を飛んでいるんだから」

「だよな。それじゃ……こっちを見ているような気もするから、一先ず離れた場所に急ごう」

「さすがは、空の支配者とでも言っておくか? ともかく、ラーレなら俺達の事も発見してそうだから、それが良さそうだな」

「わ、私も行きます!」


 一人一人に話して安心させるのも時間がかかるし、呼びかけても魔物が空を飛んでいるんじゃ、皆落ち着いてくれないだろうと、早々に騒がれないようにするのを諦め、フィリップと話して村の外へ向かう。

 デリアさんも一緒に来るようだ。

 移動中空を見上げると、さすがラーレと言うべきか、かなりの高さから見ているにも拘わらず、こちらを補足してしっかりとついて来ているような動きを見せる。

 鷲だと考えれば、納得できるか。


 高高度から獲物を探し、急降下して捕まえるなんて映像を見た事がある。

 いや、俺達は獲物じゃないが……目的である事は間違いないだろう。


「おーい、こっちだー!」

「予想通り、背中にはティルラお嬢様とヨハンナが乗っているな。なんでこんな所まで……?」

「わわわ、降りてきますよ!」


 村を離れ、森の入り口……よりはラクトス寄りの位置に移動して、付いてきたラーレに大きく手を振る。

 さすがと言うべきか、俺達をしっかりと追って来ていたラーレは、ゆっくりと高度を落とし始めた。

 背中にティルラちゃん達が乗っているのもあってか、急降下はしないようだ……やったら、後でまたレオから叱られそうだからな。

 デリアさんは、こちらへと近付くラーレの姿に慌てている様子だ。


 ちなみに、村の人達が騒然とし始めてはいたけど、俺達が移動して村から出る頃には、ラーレが他の村を襲わず他へと向かっている事がわかって、ホッとした雰囲気が広がり始めていた。

 皆、空を見上げていたので、コッソリ移動した俺やフィリップさん、デリアさんには気付いていなかったようだ……とは言っても、後で何かしら説明しないといけないだろうなぁ。

 離れていく様子のラーレを見上げて、「何か不吉な予兆か?」なんて呟いていた人もいたし……何かの予兆とかではないですからねー、なんて言えなかったしな。


「タクミさーん!」

「ティルラちゃん。こっちこっち」

「ラーレ、タクミさんの前に降りるのです!」

「キィ!」

「あわわわわ……」


 降下するラーレの背中から、ひょっこり顔を出して俺を呼び、手を振るティルラちゃん。

 ラーレに指示するのが様になっているように感じるのは、俺がいない間に練習とかでもしていたのかもしれない。

 その後ろには街や森へ行く時とは違い、屋敷で警備している時と同じく、鎧に身を固めたヨハンナさんが乗っていた。

 まだ距離があるのではっきりわからないけど、兜から覗く顔色は悪くなさそうだから、セバスチャンさんのように空を飛ぶのが苦手という事はなさそうだ……なぜか、ずっと真顔で真っ直ぐ前を向いたまま、こちらを見ようとしないけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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