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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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92/2004

エッケンハルトさんはレオを怖がってる様子でした



「ああ、ここに来る途中で受け取った。クレアが無事なのはわかったが、どうせ途中まで来ていたしな。それに、久しぶりに娘の顔を見るのも悪くないとな、馬を飛ばして来たぞ」

「お父様……」


 エッケンハルトさんはクレアさんが無事な事は知っていたようだ。

 それにしても、これだけ子煩悩そうな姿を見せられたら、娘が嫁に行く事になるお見合い話とか持って来そうにないのに、何故なんだろうか?


「それで、見慣れない人もいるようだが?」

「あぁ、タクミさんです。お父様」

「旦那様、クレアお嬢様を助けて下さった方です」


 おっと、話が俺の事になったようだ。

 俺はクレアさんの後ろから一歩前に出て一礼する。

 礼は見様見真似だからちゃんと出来てるか不安だったが、緊張感が無くなったとはいえ、それを気にしてる余裕は無い。

 レオはライラさんに撫でれられてまだ後ろにいる。


「初めまして、広岡巧と申します。タクミとお呼び下さい」

「おお、おぬしがタクミ殿か。クレアを助けてくれた事、礼を言うぞ。話はセバスチャンからの報せで聞いている」


 どうやらセバスチャンさんは、エッケンハルトさんに送った二度目の報せで俺の事も伝えていたようだ。

 エッケンハルトさんは無精髭を周りに生やしてる口で笑いながら、俺の横に移動し肩を叩いて来た。

 バシバシと音が響くくらいの強さで、俺がクレアさんを助けた事を喜んでるのは伝わって来るんだが、結構痛い。


「タクミ殿は中々の男のようだな。私がこうして叩いても動揺しないとは」

「いえ……あの……はぁ」


 いや、貴方が叩いてる肩が痛くて身動きが取れないだけなんですが……。

 その前に人の肩を叩いて反応を試すとかしないで欲しい……それでどんな人間かわかるのかどうか俺にはわからないけど……。


「お父様、タクミさんが痛がっています」

「おっと、すまない。やりすぎたか」

「いえ、大丈夫です」


 クレアさんが注意してくれてようやく叩くのを止めてくれた。

 ……赤くなってないかな……今日風呂に入ったら確かめてみよう。


「ワフ」


 俺が叩かれるのを見たからか、それともエッケンハルトさんに自分も何か主張をしたかったのか、後ろでライラさんに撫でられていたレオが俺とエッケンハルトさんの間に割って入る。

 レオの体に押された形になったエッケンハルトさんは、少し面食らったような様子だったが、間に入って来たのがレオとわかって驚きの表情で見る。


「これは……シルバーフェンリルなのか……?」

「そうです、お父様」


 俺の代わりにエッケンハルトさんの疑問にクレアさんが答える。

 これはセバスチャンさんからの報せに無かったのか、エッケンハルトさんは驚きつつ腰が引けてる。

 そりゃ、レオの巨体がいきなり目の前に来たら驚くし怖いよな。

 しかも、エッケンハルトさんはリーベルト家の当主様だ、クレアさんの話ではシルバーフェンリルの事を詳しく知っていてもおかしくないだろう。


「シルバーフェンリルが何故ここに……しかし……人を襲わないのか?」

「ワフ!」


 エッケンハルトさんの言葉にレオが返事をするように鳴いたが、それを聞いて体がビクッと跳ねてる。

 初めてレオとこの屋敷に来た時のゲルダさんと反応が似てる……恐る恐るという感じだな。


「旦那様、レオ様はタクミ様の従魔で、人を襲う事はありません。もちろんタクミ様に害を成す事があればその限りでは無いでしょうが」

「ワフワフ」


 セバスチャンさんがエッケンハルトさんに説明して、それにレオが頷いている。

 ……従魔というより相棒という感覚なんだけどな。

 昨日のクレアさんとシェリーの時のような従魔契約とかはしてないわけだし。


「そ、そうか……しかしシルバーフェンリルが人間に従うとはなぁ……」

「それに関しては私達も驚きました。詳しい話はまた後にしましょう。ここで立ったままと言うのも……」

「そうだな……それなら客間で話を聞こう。私の書斎ではこのシルバーフェンリル……レオ様と言ったか……の体の大きさでは狭いだろう」

「わかりました。すぐに準備させます」


 セバスチャンさんの返答と同時に、何人かの使用人が玄関ホールから離れて行った。

 その中にはライラさんやゲルダさんもいたが、きっと客間の用意やお茶の用意をするんだろう。


「それで……レオ様は後で聞くとして……クレア、その足元にいるのもまさか……」

「ええ、こちらはフェンリルです。私の従魔になったんですよ。シェリー、挨拶を」

「キャゥ!」

「シェリーもレオ様も可愛いんですよ!」


 エッケンハルトさんはクレアさんの足元でお座りをしていたシェリーに気付いたようだ。

 まぁ、中型犬の大きさで普通はいない場所に見慣れないものがいるのだから気付くのも当然か。

 クレアさんがお座りをしているシェリーを抱き上げてエッケンハルトさんに紹介。

 シェリーも礼儀正しい……かはわからないが、自己紹介するように一鳴き、ティルラちゃんはエッケンハルトさんにレオとシェリーの売り込みだ。


「従魔……いつの間にそんな事に……これもタクミ殿と関係が?」

「ええ。タクミ様のおかげで助かりましたし、このフェンリル、シェリーも命を救われました」

「そうか……色々と話す事が多そうだな」


 シェリーには、大きさからなのかあまり気後れしていない様子のエッケンハルトさん、まぁ娘のクレアさんが抱いてるのが大きな理由かもしれないが。

 それでもまだレオの大きさからか、シルバーフェンリルへの恐怖からなのか、レオに視線を向ける時は恐る恐るという感じだ。

 レオはそんなに怖い奴じゃないんだけどなぁ……初対面だから仕方ないか。

 ゲルダさんの時のように少しづつ慣れて行ってもらおう。


「旦那様、客間の用意が整ったようでございます」

「わかった。積もる話もあるからな、まずは客間に移動しよう。……お前達、ご苦労だった。しっかり休め」

「「「ハッ!」」」


 セバスチャンさんにメイドさんが一人近付いて耳打ち、どうやら客間の用意が終わった事を報せに来たようだ。

 エッケンハルトさんは一緒に屋敷へと来た護衛と思われる3人に声を掛けると、3人は敬礼をしてメイドさん達がいる方へ向かう。

 多分、どこかの部屋で休むんだろう、エッケンハルトさんは馬を飛ばして来たと言っていたから、ここまで大変だったのかもしれないな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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