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懐かしさすら感じる返事をしてしまいました



「なんとなく、ニコラさんあたりは気付いていそうだけどな……」


 だからすぐに、驚きを引っ込めてエッケンハルトさんを引き合いに出したりして、参加するのに賛成側に回ったような雰囲気だった。

 フィリップさんは……どうだろう? 夕食の時にお酒が飲めないのを寂しそうにして、ちびちび水を飲んでいる姿を見ていると、鋭さの欠片も感じないけど……。

 あれでも屋敷の護衛兵士長で、剣の腕はニコラさんに敵わないとしても、他の事が優れているようだから気付いていても不思議じゃないか。


「ま、何はともあれ明日だな。魔物の狩りだし、自分から危険に飛び込むつもりはないけど、一応気を付けないといけないから、気を引き締めよう」


 俺が危険に飛び込むという事は、フィリップさん達やデリアさん達も危険にさらすという事でもあるからな。

 軽い気持ちで過ごす事はできないと考え、早くに出発する予定の明日に備えて、ベッドに横になってさっさと寝る事にした。

 思考に耽るのは、無事に狩りから戻って来てからでもいいだろうから――。



―――――――――――――――



「タークーミーさん!」

「はーあーい!」

「……タクミ、その返事の仕方はどうかと思うんだが……?」

「いや……つい……」


 翌朝、早めに起き出して朝食を取った後、準備をしてデリアさんの迎えを待っていると、家の外から俺を呼ぶ声がした。

 間違いなくデリアさんの声で、本人は特に意識していないんだろうけど、ついついリズムに乗った感じの返事を返してしまった。

 我に返った時には遅く、笑いを堪えたフィリップさんに突っ込まれてしまったし、ニコラさんはそっぽを向いているが口角が上がっているので同様らしい……ちょっと恥ずかしい。

 この世界、インターホンは当然ながら、呼び鈴なんて物もないからデリアさんは声をかけただけで、俺は以前見た昔のドラマや国民的アニメで見たのを覚えていたのが思わず出てしまった、という事にしておいて欲しい。


「入りますよーっと。タクミさん、お迎えに参りました……って、どうかしたんですか?」

「いえ、なんでもないから気にしないで」

「……ぷぷ」

「……っ」


 俺の返事を聞いたからだろう、中へと入ってきたデリアさんはすぐに俺の顔を見てキョトンとしている……少し頬が熱いから、恥ずかしさで赤くなっているからだと思われる。

 フィリップさんとニコラさんは笑いを堪えている様子だが、いっその事声に出して笑ってくれた方が、いいかもしれない。


「んんっ! えっと、狩りへ出発だよね?」

「はい! 他の皆は村の入り口に集合しています。タクミさん達も行きましょう!……タクミさん、剣を持つ姿が様になっていますね?」

「まぁ、一応それなりに扱える程度には、鍛錬しているからね」


 とりあえず恥ずかしいのを誤魔化すように咳払いし、本題へと戻る。

 朝から元気なデリアさんは、俺達を連れて行こうとしてふと俺の腰に下がっている剣に注目した。

 そういえば、俺が剣の鍛錬をしている話をデリアさんにはしていなかったっけな……一応、オークを倒せるくらいには上達しているので、扱えると言ってもいいはずだ。


「それなりとは謙遜ですな。タクミ殿は、そこらの兵士には負けないくらい剣を扱えますよ」

「へぇ~、凄いですね。さすがタクミさんです!」

「……デリアさんからの期待というか、俺の評価が高すぎる気がするんだけど?」

「よほど、タクミに懐いているからだろう。だが、確かにタクミなら一対一ならラクトスの衛兵にも勝てるんじゃないか?」


 ニコラさんが補足して、デリアさんが目を輝かせて感心……なんか、再会してからデリアさんに褒められる事が多いな。

 ちょっと過剰な評価かなと思って呟いたら、フィリップさんにも衛兵さんよりはとのお墨付きをもらった。

 自分の身を守るために、剣の鍛錬をしているので衛兵さんと戦う気はないが、そうなのか……いや、皆俺を高く買ってくれているだけだろうから、調子に乗らないように気を付けよう。

 慢心は良くないからな、うん。


「まぁ、どれだけかはともかく、オーク一体くらいなら一人でもなんとかなるから安心して、デリアさん。フィリップもニコラもいてくれるからね」

「俺達なら、アウズフムラが来てもなんとかタクミを守る事ができるか?」

「突進が当たるかどうかなど、状況によりますし、希望を言えばもう一人か二人は欲しいですが……なんとかなるでしょう」

「あー、できればヨハンナがいてくれれば良かったが、あいつはお嬢様の傍を離れないからなぁ」


 腰に下げた剣を少しだけ持ち上げて、デリアさんが狩りに集中するよう安心して欲しいとアピール。

 フィリップさんとニコラさんは、もしもを想定して話しているみたいだけど……一応護衛を請け負ってくれた、でいいんだよな?


「オークを、それはすごいですね! 狩りに慣れている木こりの親方でも、数人で囲まないと狩れませんよ。もう少し頑張って欲しいんですけどねぇ……」


 おおう、デリアさん結構言うな……まぁ、本人が今いないからだろうけど。

 デリアさんとしては、オークくらいはもう少し頑張って単独で狩って欲しいようだが、そもそも木こりさんだからなぁ……魔物を狩る専門というわけでもなければ、戦う事が本職というわけでもない。

 狩りはどちらかというと、ついでみたいなものらしいから。



「ほぉ、そちらさんがデリアと仲のいいお客さんかい……」

「えっと、初めまして。タクミです」

「おう。俺は木こりの親方をしているもんだ。気軽に親方ぁ! と呼んでくれ」

「親方は、呼ぶ時に強めに声をかけないと納得しないんです。すみません、タクミさん」

「いや、デリアさんが謝る事じゃないよ」


 いつまでも話していても仕方ないので、デリアさんと一緒に村の入り口に来て木こりさん達と合流。

 集合していたのは森の方へ向かうための南側の出入り口……俺達が来た方とは逆だな。

 そこでは、十人くらいの二十から三十後半くらいに見える男性が、それぞれに斧やのこぎりなどを持って待っていた。

 この人たちが木こり衆と呼ばれる人達か……その中で胡坐をかいて地面に座っていた、一番年かさの男性が立ち上がり、お互いに自己紹介。


 他方では、フィリップさんとニコラさんが他の木こりさん達と挨拶していた。

 というか、親方ぁ! って呼ぶたびに、わざわざそんな空から女の子が落ちて来るような呼び方をしないといけないのか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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