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狩り対象の魔物の事を聞きました



「おっと、あまり長居していてもいけないな。デリア、そろそろお暇しよう」

「あ、私はタクミさん達と夕食を取ってから、家に戻るよ。昨日もそうだったの」


 持って来ていたお金でニャックの料金を払った後、話しも程々に、そろそろ帰ろうと立ち上がったカナートさんが、デリアさんにも声をかけた。

 デリアさんは、今日も一緒に夕食を取る予定になっているので、カナートさんに首を振っている。

 一緒に食べる人が増えると賑やかで楽しいし、料理に不慣れな男ばかりよりも、デリアさんがいてくれると助かる。

 さすがに全部任せたりはしないが、手伝ってくれるだけでも美味しい料理ができるからな。 


「そうか、まぁ一人で食べるよりはそちらの方がいいか。あ、そういえば村長から伝えてくれって言われていたんだが」

「どうしたの? もしかして、暇だから相手をしてくれとか、そういう?」

「それも一つだな。だが本題は明日の事だ。木こり衆が狩りをするらしくてな、デリアにも参加して欲しいらしい」

「うん、わかった。明日皆と一緒に森に行くね」


 デリアさんが家で一人というのを、カナートさんも心配していた側なんだろう、朗らかに納得して頷いてた後、村長さんからの伝言を思い出したようだ。

 村長さんが暇だから、デリアさんに来て欲しいって言うのはともかく、木こり衆に混じってデリアさんが狩りをするのか。

 まぁ、複数人で森に入るから単独だし、危険はできるだけ避けるようにしているんだろうし、そのためにデリアさんも一緒にって事なんだろう。

 本人の言い分を信じるなら、オークもサーペントも問題なく狩れるみたいだから。


「でも、ちょっと急だね? いつもならもう少し前に言ってくれるのに」

「昨日燻製肉を作っていただろ? それで新しい肉が欲しくなったらしい。それと、奴がいた形跡を見つけたらしい」

「奴……?」

「あぁ、それは私もいかなきゃだね。わかったよ!」

「頼む。村長達には俺から伝えておくから」


 そう言って、カナートさんは戻って行った……多分これからデリアさんが了承した事を、村長さん達に伝えに行くんだろう。

 ニャックの交渉っぽい事を頼まれたり、カナートさんも忙しい人だなと思うけど、そう言えば普段は何をしている人なんだろう?

 いや、それよりも話の中で気になる事を言っていたが、なんだろう? 聞いてみるか。


「デリアさん、今言っていた奴ってのは?」

「あ、タクミさん達には通じませんよね。村では奴って言ったら、とある魔物の事になるんです。村にとっては大物なんですけど、美味しいので皆に人気なんです。見つけたら、何がなんでも狩るって木こりの人達が必死になったりします」

「へぇ~、そんな魔物が。どんな魔物なんだろう?」


 大物って事は、体が大きいのだろうか? それともオークより強いからという意味だろうか? ともかく、デリアさんもそうだが、木こり衆とやらもオークを狩って来る事があるらしいので、オーク肉には慣れているはずだ。

 それでも村の人達に人気で、木こり衆が必死になる程って事は、よっぽど美味しいんだろうな。


「大きさは……多分レオ様に近いくらいだと思います。個体差がありますし、成長していないとそこまで大きくなりませんけど」

「レオくらいって、かなり大きいんだね」

「はい。しかもその大きさなのに素早くて、見つけても逃げられたりします。確実に仕留めるためと、逃がさないためによく私が呼ばれるんです」


 レオくらいって事は、馬よりも大きいって事で……確実に人間よりは大きい。

 その巨体で素早いっていうのも、ちょっと想像しづらいけど、さすがにレオやフェンリル達程素早く動けるわけじゃないだろう。

 と言っても、レオどころかシェリー以外のフェンリル相手に、剣の一撃を当てる事すらまだできないんだけど。


「大きくて素早い、美味しいけど逃げる……もしかしてその魔物って、アウズフムラの事かい?」

「フィリップさんは知っているんですね。そうです、アウズフムラって呼ばれています」


 護衛としてや兵士としてか、さすがに魔物に関する知識はそれなりにあるらしく、フィリップさんはその魔物の事を知っていたみたいだ。

 見れば、ニコラさんも頷いているから、知っているんだろうな。

 アウズフムラかぁ……名前からはどんな魔物か想像が付かないけど、なんとなくどこかの神話とかで聞いた覚えがある気がする。

 とは言っても、地球で語られていた神話だし、この世界とは別物なんだろうけど。


「大きさとかはわかったけど、どんな魔物?」


 そのアウズフムラという魔物が、大きくても素早いって事はわかった……あと、オークよりも美味しいらしいって事も。

 ちょっと興味が出て来たので、さらに詳しく聞いてみる。


「えーと、毛が白く肌も白い……だったかな?」

「いえ、フィリップ殿。それは雌のアウズフムラです。雌は食べるのではなく、乳を採取して飲む方です」

「あぁ、そうか。白は牛乳の方か。食べるのは雄で、黒い毛に黒い肌で真っ黒だった。素早いのもあって、暗い時に見つけるのが難しいんだよなぁ」

「体が大きい分重いので、痕跡はよく残っているんですけど、自分達以外の気配に敏感なのですぐ逃げたり隠れるんですよね。森の中は暗い所が多いので、黒い体なのも相俟って見つけ辛いんです。そもそも臆病なので、人のいる場所や村に近い森の外れに来るのは珍しいんですよ」

「雄と雌で色が全然違うんだ。ふむふむ、臆病で逃げ足が速いし気配に敏感と……」

「木の葉や草を食べるので、他の生き物を襲うのは稀ですし、肉類は食べないので臭みが少ないんです」

「木の葉はともかく、草食って事かぁ」


 逃げ足が速いはともかく、レオくらい大きくて雄は黒い……色は関係ないか。

 草食で雄は肉として、雌は乳を採取ってそれ、もしかしなくても牛じゃないか? フィリップさんが牛乳って言っているし……屋敷でレオがよく飲んでいるけど。

 牛だと考えると、臭みが少ないのもあって豚肉の味がするオークより、人気になってもおかしくないかな。

 いや、牛肉より豚肉の方が好きっていう人もいるだろうし、なんとなく高級で美味しいお肉と言えば牛肉っていう、貧困なイメージだけど。


「その魔物ってもしかして、角があったり、四足歩行だったり?」

「四足で動くのはそうですけど、角はないですね」


 角、ないのか。

 乳牛だと雄雌両方角があったりするが、まぁ、牛によって角がない種類だってあるし、必ずしもなきゃ牛じゃないって事はないよな――。



アウズフムラはアウズンブラ、アウドムラともいい、北欧神話に登場する角のない雌牛ですが、こちらでは雄もいるようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 牛って割りと神様の乗り物だったりするんですよね。
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