言葉を崩して接する事にしました
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ニコラさんは、固い雰囲気や他とは違う感覚のような部分もあるので、近寄りがたい感じがして友人と言える人が少ないのかもしれないが、俺は……。
まぁ、昔を思い出すのは止めよう、寂しくなってしまうから……伯父さん達に迷惑をかけないよう、一人暮らしでバイト三昧、就職してからは仕事三昧だったし、レオの事もあったから友人を作る暇がなかったと考えておこうと思う……。
「なんでタクミ様までダメージを受けているのかわかりませんが……ともかく、今こうして話している時も、俺だけでなくタクミ様も、丁寧に話していますよね? それだと、なんだか友人のように見えないんじゃないかと」
「某は、誰に対しても丁寧に話すよう心掛けていますが……?」
「だからニコラは、気楽に話す友人が少ないんじゃないか? ずっと昔から知っていて、同じ護衛をやっている俺だからわかるが、他の奴らは壁を感じる事もあるらしいぞ?」
「……そうだったのですか……」
付きつけられた真実に、ショックを隠せないニコラさんはともかく……丁寧に話す事で壁を感じる、というのは確かにあるか。
いや、お互いにわかっていればいいんだろうけど、今回は村の人たちがどう見るかが問題だからな……お互い丁寧に話しているだけで、傍から見て友人関係と見えるかは微妙だ。
俺達友人同士でーす! なんて、喧伝して回るわけにもいかないし、それはそれで怪しいしな。
「だから、村にいる間だけは丁寧な言葉で話すのを止めた方が、自然に見えるんじゃないかと思うんです……いや、思うんだよ」
「……確かにそうですね。誰に対しても丁寧に、というニコラさんの考えはわかりますけど……男三人揃って全員丁寧な話し方をしていたら、傍から見ると変に思われ……いえ、思うかな」
本来の関係を明かしたら納得してくれるだろうが、一応友人と一緒に村やデリアさんを訪ねる、とした場合には丁寧に話ているのも不自然に見える。
フィリップさんの考えに納得し、改めて気兼ねない関係に見えるように丁寧な言葉をくずして話す事にした。
「そういうものです……そういうもの、か……? うぅむ、違和感と不自然さが際立ちますね……」
「全員じゃなく、一人だけなら納得してもらえるだろうから、ニコラはそのままで大丈夫だろ。全員が全員、丁寧にしていたらおかしい、というだけだからな」
「確かに。それじゃあニコラさん……いや、ニコラはそのままで、俺やフィリップが崩した話し方をするという事で」
「そうそう、そんな感じ。タクミ様……タクミも俺も気を付けよう」
ニコラさんはまぁ、様付けは止めて殿を付けて呼ぶつもりではあるらしいが、不慣れ過ぎて逆に怪しまれそうなので、基本は今までと変わらずとして……俺とフィリップさんは不自然にならない程度に言葉を崩す事に決まった。
とは言っても、今までずっとお互い丁寧に話していたので、怪しい部分があるのでブレイユ村に着くまでに慣れるようにしよう。
そうして、再開した食事中や後片付け、就寝までの素振りなどの間に慣れるため、特に意味のない会話をするようにして慣れつつ、テントで休ませてもらった。
見張りの順番は昨日と一緒だけど、今日は数時間おきに交代するらしく、そうしないと村に到着する頃に疲労のピークが来るかもしれないので、ズラすためだとかなんとか……俺にはよくわからないけど、慣れている二人に任せよう――。
「やっぱり、この辺りには以前魔物がいたのは確かなようだけど、今はいないようだ」
「痕跡でも見つけた?」
「ほら、これ……暇だったから少し探してみたんだが……」
「これは確かに、魔物の通った跡のように見えますな」
翌朝、三人で朝の支度をしながら雑談……のつもりが、フィリップさんが魔物の痕跡を示して真面目な話に。
俺達が焚き火をしている所から、少し離れた地面を示すフィリップさんに促されて見てみると、草花が少しだけ倒されて土が見え、何かを引きずった跡があるのがわかった。
その引きずった跡はうねるような線を描きながら、東へと向かっている……じゃないな、草の倒れ方を見れば、東から今俺達が見ている場所へと来たようだ。
「でも、ここで途切れている……」
「そこが不可解なんだ。魔物が移動してたのなら、また移動するからその痕跡が残るはず……なのにそれがないんだ」
「ふぅむ……」
痕跡は幅五センチくらいの細い線となっているけど、人間や馬の足跡ではないのは間違いないし、誰かが荷物を引きずったからという可能性もあるが、それだともっと太い線になるはず。
そしてその線が、俺達のいる場所の近くで途切れてのはなぜなのか……。
「というかそもそも、地面に引きずった跡が付く魔物って、なんだろう?」
「複数考えられますが……ここらに草花が多い事を考えると、サーペントだと思われます」
「サーペント?」
サーペントというと、蛇かな? 確かに、地面に何かを引きずったような跡があるから、蛇が地を這った後というなら納得だ。
「サーペントは、こういった草原の草花に身を潜めて得物を狙う魔物です。牙が鋭く、咬まれたらそこから毒が流し込まれるので少々厄介ですね。大きさは大体……ここからあそこくらいまであるかと。まぁ、体をまっすぐ伸ばせばですけど」
「毒蛇かぁ……」
ニコラさんが示したサーペントの大きさ……というより長さは、大体五メートルくらいで俺が考える蛇よりは大分長いようだ。
幅が五センチ程度の跡が付いているから、それより少し大きいくらいと考えると、少し細長いか?
地面の跡が細いため、馬に乗って移動している時は気付かなかったんだろうな……ここ以外にもいたのならだけど。
ともあれ、問題は長さとか太さではなく、毒を持っているという部分か。
蛇の毒にも色々あるけど……出血毒のマムシが危険だとか、日本にいた頃にテレビで見たっけか。
「ま、毒くらいなら問題ないけどな。こちらにはタクミさ……じゃない、タクミがいるんだから、すぐに薬草で治療できる」
「薬草は作れても、サーペントの毒に効く薬草を知らないんだけど……」
「確か、セバスチャンさんからコカトリスの石化について聞いたんでしたね? あれと同じ薬草で問題ありません。石化に対しては薬草を塗る事で効果を出しますが、サーペントの毒には飲めば快癒します」
「あー、あの薬草なんだ……なら大丈夫そうだ」
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