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野営の片付けをして出発しました



「おそらく、単純な剣の腕という意味では、既にタクミ様はフィリップさんより上だと思いますよ。何度も魔物と戦った経験や、危機的な状況の経験。それらも関係しているんでしょうけど。まぁ、本当に全力で戦ったら、戦闘の上手さの方でフィリップさんが勝つのでしょうけど」

「……いやいや、まさか……オークと戦った時のような、フィリップさんの動きはできないので、まだまだですよ」

「別に、フィリップさんと同様の動きをする必要はありません。それぞれがそれぞれに合った動きで剣を使えばいいのです。……とはいえフィリップさんは器用なので、剣以外にも武器全般を使いこなしますから、その経験から戦闘では勝てないでしょう。将来はどうなるかわかりませんが……」


 なんて、単純な剣の腕だけなら既に……という言葉を頂いた。

 言われたように、人には人それぞれの戦い方があるから、俺がフィリップさんと同じ動きができるようになる必要はないと思うが……それにしても、買いかぶり過ぎだと思う。

 とはいえ、自分が上達しているのが認められた気がして、ニコラさんにバレないように顔を綻ばせながら、テントに入った。

 寝相のせいだろう、テントの中ではフィリップさんがシュラフから体を出して大の字になって寝ていたので、適当に隅へ押し込んでから、自分のシュラフに入って就寝した――。



 ――翌朝、目が覚めてシュラフから抜け出し、フィリップさんと違って寝相のいいニコラさんを起こさないようにテントから出る。


「お、おはようございます、タクミ様」

「おはようございます、フィリップさん」


 焚き火の前で座っているフィリップさんから挨拶され、こちらからも返す。


「見張りと言っても、何もないとやっぱり暇ですね。訓練でもやって慣れてはいますけど……」

「まぁ、何もないに越した事はないんでしょうけど、慣れていても暇なのはどうしようもないですか……」

「暇というのは、慣れる事はなさそうですね。あ、こっちのお湯を使って下さい。そろそろ起きる頃だと思って、用意しておきました。少し冷たいくらいなので大丈夫かと」

「ありがとうございます」


 街道近くだから、あまり魔物が寄り付かないらしいけど、それでも何かの偶然で魔物が近付いて来る事があるし、不届き者が近寄って来る可能性もあるため、野営に見張りは必要だ。

 何もなければそれでいいんだけど、やっぱりずっと起きて焚き火の火を絶やさないようにするだけというのも、暇なんだろうな……朝の準備のため、お湯を先に用意してくれていたのも、暇潰しの一環なんだろう。

 フィリップさんにお礼を言って、手早く支度を済ませる……と言っても、髭を剃って顔を洗うくらいで、体は昨夜のうちに濡れタオルで拭くいている……風呂に入りたい。


「タクミ様も起きた事ですし、ニコラを叩き起こして朝食にしますか」

「ははは、フィリップさんと交代するまで見張りをしてくれていたんですから、優しく起こしてあげて下さい」

「ニコラの寝起き次第ですね……っと、そう言えば起きた時、最初に寝ていた場所と違ったような気がするのですけど……?」

「気のせいじゃないですか? それか、寝返りをした時に移動したとか?」

「ふむ、まぁそういう事にしておきましょう。では」


 フィリップさんが立ちあがり、テントへと移動しながら叩き起こすと言っていたので、穏便に起こすように言っておく。

 見張りをしていない俺が言うのもなんだが、半分はニコラさんが見張ってくれていたんだから。

 テントに入る直前、ふと思い出したようにフィリップさんに聞かれたけど、とりあえずすっとぼけておく事にした……なんとなく気付いていそうだけど。

 というか、訓練された兵士さんなんだから、大の字になっていたのを移動させれば気付くか……今度から気を付けよう。


 フィリップさんがニコラさんを起こし、朝食を食べてから野営の後始末を手伝う。

 朝食は、ヘレーナさんのスープが少しだけ残っていたので、そこに具材と水を追加してとりあえずの物でだった。

 薄味で微妙ではあったけど、これも野営時の醍醐味ではあるし、食べないと移動時に体がもたないだろうしな……少ない原因は、俺が昨夜おかわりし過ぎたせいかもしれないから、自業自得とも言える。

 ちなみにスープは、見張りの二人が夜中に体を冷やさないための物でもあるので、必要に応じて火にかけて温めて飲んでいたらしい。


 ずっと火にかけておくと、完全に水気が飛んでしまいかねないためだ……焚き火はコンロと違って、火加減の調節はできないから。

 朝食後はテントを崩し、焚き火の火を消した後に荷物をまとめて馬に持たせる。

 馬の方も、フィリップさん達がちゃんとお世話をしてくれていたので、疲れた様子は見えないので大丈夫そうだ。


「それじゃ、行きますよ?」

「はい、お願いします」


 昨日と同じように、フィリップさんの後ろに乗りってブレイユ村へ出発。

 明日到着する予定だから、もう一日野営をする必要はあるが、昨日ので少しは慣れたからなんとかなりそうだ。

 野営そのものは、ランジ村との往復や、フェンリルの森で何度も経験しているから、少しは慣れているしな。


 ブレイユ村へはランジ村同様、途中で街道がなくなっている。

 ラクトスから東へしばらく進んで、ランジ村との分岐点より手前で南下して森に向かう感じかな。

 畑だけでなく、森の木を伐採して木材にしているようだから、森に近い村というイメージそのままなんだろう……森には魔物がいるので、隣接という程じゃないかもしれないが。


「……ふぅむ」

「どうかしましたか、フィリップさん?」


 時折馬を休めるための休憩を取りながら、ブレイユ村へと向かっている途中、何やら考えているような声を漏らすフィリップさん。

 特に何かがあるわけでもなく、順調にブレイユ村に向かっていると思うんだが、考え込む事があるんだろうか?


「いえね? ちょっと魔物がいなさすぎだなぁと思いまして」

「村への道なので、魔物がいない方がいいんじゃないですか? ランジ村へ行く時みたいに、森の近くを通るわけでもありませんし……」

「そうなんですけど、それでも魔物がいてもおかしくはないんですよ。森から離れた魔物か、そもそも森とは別で平原に棲む魔物だったりとか」


 考えてみれば、俺が魔物と遭遇する時はいつも、森の中だったり森から出てきた魔物ばかりだった。

 平原……今移動している、ポツポツとある木以外は見渡す限り何もない草原になっているけど、そこに潜む魔物とかがいてもおかしくないのか。

 まぁ、公爵家の兵士さん達が巡回しているという話も聞いたし、森に比べたら数は少ないんだろうけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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[一言] 更新有り難う御座います。 ……フラグ……かな?
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