携帯食について聞きました
魔法が難しいと実感する程に、どんな魔法でも使えるというユートさんのギフトが、ものすごい能力なのかわかる。
……言葉の組み合わせとかどうしているのか気になるけど、扱えない魔法がなく、ギフトの限界までは魔力がほぼ無限という時点で、反則級だ。
今更ながらに、チートと呼ばれる能力ってユートさんの『魔導制御』みたいな事を言うんだなと思った。
あれに比べたら、『雑草栽培』って見劣りするなぁ……扱いが大変そうだから、羨ましくはないけど。
『雑草栽培』も便利な能力なんだが、もっと役に立てるように利用法を考えないとな。
「ニコラ、凄く楽しそうに説明していたな? セバスチャンさんみたいだったぞ?」
魔法の講義が終わり、焚き火を三人で囲んで食事をしながら、フィリップさんがからかうようにニコラさんに言った。
「タクミ様が、すぐに理解してくれるので説明する甲斐がありました。セバスチャン殿は、あのような気持ちだったのかと……まぁ、あの方程の知識はありませんが」
「いえ、セバスチャンさんの説明もですけど、ニコラさんの説明もわかりやすかったからですよ。おかげで、自分にも今までとは違う魔法が使えそうな気がしてきました」
「魔法は便利ですが、咄嗟の行動には向いていません。それに、扱いを間違えると危険なので、注意して下さい。まぁ、タクミ様なら大丈夫そうです」
「ははは、まぁ、気を付けます」
確かに説明を受けている最中、セバスチャンさんの事を思い出したりもしたけど、俺の理解力が良かったからと褒めてもらって、ちょっと面映ゆい。
説明の仕方が良かったからだと思うし、お世辞も混じっているんだろうけどな。
最後に、ニコラ先生の注意を受けて頷き、魔法の講義を終了だ……火を出すだけでも危険があったりもするから、試す時はちゃんと周囲に注意してやるように、胸に刻んでおこう。
「あ、そう言えば……一般の家庭では、キャンドルの魔法で火をつけるんじゃないんですか? 確か、広く使われているとも聞きましたけど……。でも、さっき俺が使た時は火が付きませんでしたし」
ふと気になって、一般の家庭ではどうしているのか聞いてみる。
家の中で、さっきのようなフレイムバーンアップくらい火力のある魔法が、どこでも使われているわけではないだろうし、誰でも簡単に扱えそうなキャンドルの方が使われていそうだ。
というより、最初にセバスチャンさんから説明された時、一般にも使われているような事を言われたしな。
「あれは、拾った枝ではなく乾いた薪に対してのみですね。家庭で火をつけるならまず薪に火を付けますから。それに、ワタを使ったり少しだけ油を塗ったりして、燃えやすくしてから火を付ける方法もあります。こちらは、余裕のある家庭で使われている方法ですね」
ワタって事は、着火剤代わりみたいな物か……油はそれなりにお金がかかるから、余裕のある家庭でっていうのはわかるな。
ともあれ、俺がやろうとしたように拾っただけの枝に、キャンドルの魔法で火をつけるというには通常ではしない、というよりできないようだ。
レオがいる時はいつもレオが火をつけてくれていたし、クレア達と外で野営をする時は気付いたら使用人さん達の誰かがやってくれていたからなぁ……ある意味、これも今回少数で屋敷を離れて学べた事と言えるか。
「やはり、ヘレーナさんのスープは美味しいですね。色々な食材も入っていて、体の事も考えられています」
「だなぁ。屋敷で働き始めて、実感するできるものの一つだ。まぁ、数日かかる場合には、今回のように最初の一日目だけしか味わえないけどな。――タクミ様が見つけた、このパンも美味しいですけどね」
「口に合ったようで何よりですよ。俺も食べた事がなかったので、ちょっと不安でしたけど……中に入っている焼きパスタは食べた事があったので、自信はありました」
話が変わって、ヘレーナさんが作って持たせてくれていたスープや、ラクトスで買っていた焼きパスタパンの話へ。
スープは色んな野菜が長時間煮込まれていた物なので、ほぼ固形物はない状態だけど、それだけに体が温まるうえ栄養的にも良さそうだ。
焼きパスタは言わずもがなだな……焼きそばと違うと言っても、焼きパスタの時点で美味しかったし、それがこんがり焼かれた美味しそうなパンに挟まれているんだから、美味しくないわけがない。
……若干、フィリップさん達の口に合うかという不安はあったけど。
ちなみに、焼きパスタパンはスープを温めている間に、火の近くで焼けないように置いて温め直しているので、冷めたままで食べるより美味しい。
「屋敷で働く前……いえ、御屋形様に訓練をされている時は、粗末な物が多かったですからなぁ……」
「思い出させるなよ……まぁ、携帯食と言えばあんなものだろ? 食材を運ぶんじゃなくて、保存ができる食べ物を持つんだ、美味しい物なんてほとんどないさ」
スープを一口、焼きパスタパンを齧って味わいながら、しみじみと呟くニコラさん。
それに嫌そうな表情をしたフィリップさんが反応した……エッケンハルトさんから課せられた、厳しい訓練を思い出したんだろう。
俺やティルラちゃんに話していた時に、泣きだしたくらいだからなぁ……興味はあるけど、自分が受けたいとは思わないが。
訓練はともかく、携帯食と聞くだけで美味しそうな響きではないのは確かだ。
缶詰とかもなさそうだし、どういう物が携帯食として食べられているんだろう? と興味が引かれた。
これまで野営をする時は、大人数で食材を運び、外でもちゃんとした料理を食べられていたから、この世界での携帯食がどういう物か知らない。
「携帯食って、どんな物なんですか? まぁ、美味しくないとか味気ない、というのはなんとなくわかりますけど……」
「そうですね……一概に携帯食と言っても、様々な物があります。一般的に広く食べられているのは、やっぱり干し肉ですか。オークの肉などを塩に漬けたり塗ったりして乾燥させた物、と言えばわかりやすいかと」
「干し肉、なんとなく想像は付きます」
頭の中に浮かぶのはジャーキーだけど……フィリップさんやニコラさん達が、嫌な顔をする程にマズイとは思えない。
あーでも、今フィリップさんが言ったのは塩だけか。
俺が食べた事のあるジャーキーは、スーパーとかコンビニでおつまみコーナーに売っている物だからな。
あれは、塩以外にも他に香辛料を使ったり、美味しくなるように作られているから、フィリップさん達の言う干し肉と味が同じなわけないか――。
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