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護衛兵士さんはそれなりに目立つようでした



「とは言いましても、やはり我々は目立ちますね。衛兵とは違う装備ですし……」


 レオは目立つという話から、ニコラさんも周囲を見ながら呟いた。

 男三人と言うだけならまだしも、俺だけでなく当然ながら、フィリップさんやニコラさんも帯剣しているし、身軽に動くために金属の鎧は着ていないけど、革の鎧を身に着けているし、肘や膝などの部分には金属製の物を着けている。

 街の中にいる人達で、剣を持っていても腰に下げていたりする人はほとんどいないし、鎧を身に着けている人は衛兵がほとんどだ。

 まぁ、旅人だろう人は鎧を身に着けていたりもするようで、チラホラと見かけるけど……剣も持っていて複数で行動している、というのは少ない。


「まぁそりゃな。公爵家の護衛を務める者が、街の衛兵と同等の装備をしていちゃいけないだろう」

「俺は詳しくないのでわかりませんけど、そうなんですか?」

「よく見ると詳しくなくてもわかるんですが、質が違う、と言うのが一番わかりやすいですか。衛兵の身に着けている鎧や剣は、大量生産されている物……質が悪いとは言いませんが、それなりの物を安く買っているようです」

「それに対して、屋敷や公爵家で直に護衛をしている者達は、それぞれの体格などに合わせた物を使っています。少しの違いでも動きが阻害されてしまったりもするので、意外と重要なんです」


 ニコラさんに同意するように言うフィリップさんに、装備の質がどう違うのかわからない俺から質問をしてみる。

 フィリップさんとニコラさんの二人で代わる代わる説明してくれたけど……確かに良く見れば質が違うような気がするな……あまり汚れていないし。

 貴族としての見栄のようなものだろうか? 身分差があるのかはわからないけど、衛兵さんの方は誰でも身に着けられるような大量生産の装備を使い、公爵家の護衛さんはオーダーメイドで装備を作る、と言ったところか。

 まぁ、見分けやすいようにというのもあるんだろうし、別に衛兵さんの装備が安物で質が凄く悪いというわけではないと思うけど。


 鎧そのものは、各所に傷のような物があったりもするけど、それも衛兵さん達と比べると少ない……これは、ちゃんと手入れしてあるからというのもあるだろう。

 あぁ、そういえばフィリップさん達が持っている剣は、柄や鍔、鞘にそれぞれ凝った意匠もしてあるのに対し、衛兵さんの持っている剣や槍は簡素なものだ。

 こういうところでも、違いがあるんだろうな。


「まぁ、少々上等な装備を身に着けた旅人……くらいの認識でしょう」

「成る程。とにかく、レオが一緒の時程目立ってはいないって事ですね」

「はい。クレアお嬢様が一緒の時には、レオ様とは別にセバスチャンさんのような執事や、世話をするメイドが一緒にいる事が多いので、大所帯になって、それはそれで目立ちますけどね」

「目立つという事は、注目されるという事でもあります。良からぬ輩が近付いて来る可能性もありますので、気を抜かずに護衛ができるのです」

「それを歓迎するのは、鍛錬好きなお前くらいだよ、ニコラ……」


 何はともあれ、レオがいる時やクレア達といて大勢いる時よりは目立たないという事で、護衛がやりやすいようだ……むしろ気を抜いてしまわないようにする方が大変なのかもしれない。

 というか、レオがいてさらにクレアもいて……リーザや他の人も大勢いた時って、これ以上ないくらい目立っていたんだろうなぁ……と今更ながらに気付くけど、どうにかできる事じゃないか。

 ニコラさんは、薄々わかっていたけど自己を追い詰めるというか、自己研鑽が好きなようで、フィリップさんに呆れられているけど……そこが一番ニコラさんの雰囲気に合っていると俺は思う。


 なんというか、今は持っていないけど刀を使ったり、時代がかったような喋り方だったりで、ストイックな武士というイメージだな。

 そんな風に、いつもとは違った雰囲気を楽しみながら、男三人で雑談をしつつ東門で馬を受け取り、ブレイユ村へ向かって再び走り始めた。

 こういった雰囲気なら、ブレイユ村に行っても友人同士で来たんだと思ってもらえそうだな――。



 ――ラクトスから馬に乗って出発し、ブレイユ村へ向かう。

 その最中、馬に乗った状態になんとか慣れてきたおかげで、フィリップさんともそれなりに話せるようになってきた。

 屋敷を出発してすぐは、揺れで舌を噛みそうになったからな……全く話せない状態ではなかったけど。


「そういえばフィリップさん」

「なんですか、タクミ様?」

「以前、フェンリルの森でオークと戦った時の事ですけど……あの時の動きは、やっぱり訓練で学んだんですか? あの、少しずつオークの動きを鈍らせるような攻撃の仕方です」

「あぁ、あれですか。訓練で習ったのが半分、自己流が半分と言ったところです」

「自己流……」


 馬で駆けている最中、流れる景色を見るのもいいんだけど目を引く建物があるわけでもないし、とりあえず話をしようと思って声をかける。

 話題は、気になっていたフィリップさんの戦い方だ。

 オークとペアで戦闘した時、フィリップさんは的確な動きで俺がやりやすいように動いてくれていたし、少しずつ動きを鈍らせるように、オークの急所とかではなく足の腱とかを斬りつけていたから。

 エッケンハルトさんから現状で教えられているのは、戦闘は短期決戦でやるべきであり、できる限り相手の急所を狙うのが有効という事だったから、フィリップさんの戦い方は新鮮だった。


 考えてみれば、そうやって相手を弱らせてから……という戦い方もあるんだなと納得できるけど。

 ……相手をなぶっているようにも見えるので、あまり推奨される戦い方じゃないのかもしれないが、自分より格上の相手をと考えると有効な手段でもある。

 それに、弱らせる戦い方をしてくれたので、ペアでも動きやすかったし……という事で、ちょっと気になったんだが、自己流が混ざっているのか。


「ちょっと良さげな言い方ですけど、結局は経験からですね。魔物と戦ったり、訓練を重ねるうえでどう戦うかと考えていくうちに、あぁいう戦い方ができるようになった……と言うだけですよ」

「成る程。経験から来る戦い方なんですね。やっぱり、長く剣を扱っている方が、戦いの幅は広がりそうですね」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 剣は悪ければ鋳造。 良くて数打ち。 総鍛造なんかは……。
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