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リーザの様子がおかしい事に気付きました



 習わしとは別にシェリーの牙を保存する理由として、フェンリルであるからというのもあるらしい。

 レオはさらに特別だけど、フェンリルの牙はそこらの金属よりも硬いらしく、人間より豊富な魔力に触れているため、魔力を帯びていて特殊なんだとか。

 セバスチャンさんが調べた文献の中には、大人のフェンリルの牙を金属に混ぜ合わせる事によって、硬く切れ味の鋭い剣や、特殊な魔法具のような剣が作られた記録があるらしい。

 シェリーはまだ子供なので、その牙が使えるのかはわからないが、そういった理由もあって保管しておこうとなった……クレアは、シェリーの大事な牙を使う事に反対していたけど。


「あ、そうだリーザ。屋敷に戻った後はしばらく俺がいないけど、大丈夫か?」


 シェリーの事はクレア達やレオに任せればいいかと思い、少し心配なリーザに聞く。

 今は屋敷の人達にも馴染んで、特に問題なさそうに見えるけど……出会ってすぐは俺やレオの傍を離れようとしなかったからな。

 レオが一緒にいてくれるけど、俺がいなくても寂しがらないかどうかは気になるところだ。

 大丈夫であって欲しいけど、寂しがられなかったりしても、それはそれで俺の方が寂しく感じそうなきもするが……これが、娘を持つ父親の複雑な心境なんだろうか?


「う、うん……大丈夫。パパがいないのは、ちょっと寂しいけど……ママがいるんだもんね。パパが帰って来るまで、待ってる。一番に、お帰りって言ってあげたいなぁ……」

「そうかぁ、それは嬉しいな。うん、帰って来たらリーザに一番に迎えてもらう事にしよう」

「ワフワフ!」


 リーザは寂しさを我慢しているのか、俯きながらもちゃんと待っていると言ってくれた。

 全然平気と言われるのも辛いが、寂しそうにしているのを見るのも、それはそれで辛いな……けど、こういう時こそ元気づけないとな。

 そう思い、リーザが笑ってお帰りと言ってくれる姿を想像しながら明るく言うと、レオも主張。

 そうだよな……レオがまだ小さかった頃、俺の帰りを待っていつも迎えてくれていたから、お手の物か。


「ははは、もちろんレオにもな。――リーザ、レオと一緒に迎えてくれるか?」

「うん。だ、大丈夫。パパが帰ってくるの、待ってるから……」

「……リーザ?」

「ワフ?」


 笑ってレオを撫でながらお願いし、改めて聞いてみるとリーザから返答はあるんだが……何か様子がおかしい。

 そういえば、部屋に戻って来た時は準備した荷物を見ながら、明日の出発を楽しみにしている様子だったのに、今はそれがなくなっている。

 俺と離れる事が、一瞬で元気がなくなる程寂しい……とかならまだしも、よく見るとそんな雰囲気ではない気がして、リーザを呼んで様子を窺う。

 レオも気付いたようで、首を傾げながら鳴いてリーザを見ている……俯いたままだが、その体は何かを我慢するかのように小刻みに震えているような……?


「な、なんでもない……よ。リーザ、大丈夫だから……」


 俺とレオに心配されていると気付いたのか、リーザが顔を上げて笑って見せるが……その笑い方はいつもの元気は一切なく、無理に作った表情にしか見えない。

 声にも元気がないし、両手はお腹を押さえていて……。


「……まさか、お腹が痛いのか?」

「ううん……痛くない……よ……」


 手を当てているお腹を見て、腹痛かと思って聞いてみるが、再びリーザは堪えている表情で否定。

 いやいやいや、どう見てもお腹が痛くて我慢しているようにしか見えないぞ!

 押さえているのはお腹だから、腹痛で間違いなさそうだが……食べ過ぎ……ではないよな、今日はいつもと変わらないくらいの量を食べていただけだし……。


 ならどうして……もしかして、料理の中に悪くなっていた物があったとか? いや、それならリーザ以外も同じ物を食べているんだから、リーザだけというのもおかしいし、ヘレーナさんが見逃すとは思えない。

 ……リーザの食べた物だけ、偶然悪くなっていたとか? いや、原因を考えるよりもまずリーザを見ないと!


「ワフ、ワフ……」

「えっと……リーザ。嘘や我慢はしなくていいんだ。痛いなら、痛いって言ってくれた方が、俺やレオも安心するから、な?」

「……ほんと? リーザの事、嫌いにならない?」

「もちろんだとも! な、レオ?」

「ワフ!」


 心配そうに鼻先を近付けるレオに続いて、安心させるように声をかけながら、リーザからどういう状態なのかを聞き出すために声をかける。

 さすがに隠し通せないと思ったのか、俺を見上げる目は力なくすがるような感じで、声も弱々しかった。

 リーザの事を嫌う事なんてない、と伝わってくれと大きく頷き、レオも同意して頷く。


「うんとね……リーザ、さっきからお腹が痛いの。パパの言う通り、ずっと我慢してたんだけど……ごめんなさい、大丈夫だから……リーザを嫌わないで……」

「何を言っているんだ! お腹が痛いくらいでリーザを嫌ったりするもんか!」

「ワフ! ワフ!」

「うん……ごめんなさい……」

「あぁいや、リーザを責めているわけじゃないんだ。痛い時やどこかおかしい感じがしたら、気にせず言っていいんだからな?」


 痛いのを我慢せず、俺に訴えたら嫌われてしまうと考えていたのか……もしかしたら、面倒に思われたりするかもなんて思ったのかもしれない。

 以前、スラムで標的にされていた頃は痛いと訴えたりするよりも、何も言わずに我慢していた方が、すぐに叩かれなくなったとも言っていたから、それが関係しているの可能性もあるか。

 ともかく、お腹が痛くなったりした程度でリーザを嫌ったりしないと、レオと一緒に伝えつつ、どうするべきかを考える。


「えっと……えっと……こういう場合は……あ、とにかく横になるんだ。そっちの方が楽だろう?」

「う、うん……」

「ワフゥ……キューン……スピー……」


 リーザの過去はともかく、今は腹痛をどうにかしないと……と焦ってしまい、考えがまとまらない。

 とにかく、横になって安静にした方が、少しは楽になるだろうとベッドへ促す。

 レオも、俺と同じように突然の事で混乱しているらしく、ベッドの横からリーザを覗き込んで鳴いたり、鼻をスピスピさせていた――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


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[一言] 更新有り難う御座います。 ……年齢的に理由を察した!?
[一言] …御赤飯?(ぉ)
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