クレアは落ち込んでいないようで安心しました
「あぁ、そう言えばクレアはどうしていますか?」
「クレアお嬢様の事が、気になりますかな?」
「いや、まぁ……前にブレイユ村へ行くのを却下されてから、何も言って来ないので。……変な意味ではないですよ?」
「その変な意味、というのがどういう意味か聞きたいところですが……今のところは、特に何もないようですな。一緒に行けないとなった翌日は、少々沈んでおられましたが、すぐにいつもの雰囲気に戻られました。昨日も、楽しそうにティルラお嬢様やシェリーと話しておられました」
「そうですか。まぁ、以前ランジ村に俺とレオが行った時は、無理に付いて来るとは言わなかったので、大丈夫そうですね」
ふとセバスチャンさんと話していて、クレアの事が気になったので聞いてみる。
変な意味に捉えられてからかわれたりしないよう、予防線を張りながらだが……セバスチャンさんが突っ込んで聞きたそうにしているのは、気にしない。
ともあれ、以前レオとラモギを届けるためにランジ村に行った時は、移動時間の関係で馬に乗って並走とかができないため、一緒に行く事はできなかったんだが、今回は馬と一緒に移動するので付いて来ようとすれば無理にでも来れる。
最近のクレアは俺のせいでもあるんだが、以前よりも思い切りが良くなっている気がするので、別の意味で心配になったんだけど、大丈夫そうだな。
「おそらく、以前シェリーを見つけた際に森へ行く時、色々と苦言を呈しましたのでわかっておられるのでしょう。あの時とは違って危険は少ないでしょうが、無理を通すような事はしないかと」
「ははは、そうですね」
あの時クレアは、森へと行きたい一心でセバスチャンさん達に怒ったが、俺の見ていないところで逆に怒られてしまって反省していると落ち込んでもいたっけ。
だから、あの時と同じような事はもうしないかな。
こちらも大丈夫そうだから、安心してブレイユ村に行けるな……あ、そっちはそっちで打ち合わせしないといけない事があった。
「あ、フィリップさんは今、話せる時間はありますか? ブライユ村に行ってからの事も話しておきたいので」
「この時間は、屋敷周辺の警備か、訓練の時間だと思われますが……呼んで参りましょう。必要な話でしょうからな」
「はい、お願いします」
ブレイユ村に着いた後の事を、フィリップさんと確認というか決めておこうと思い、セバスチャンさんに呼んでもらう。
護衛者と被護衛者のままだと、ブレイユ村に到着してから一般の人のように過ごせないだろうからな。
商隊とかではないんだし、様を付けて俺を呼んだりしていると不自然だ……商隊とかも、様を付けて呼ぶのはほぼないかな?
うーん、旅仲間とか友人って事にするのが一番、やりやすいかな? 年齢も大きく離れているわけはないはずだし……。
「やはり、友人とした方が不自然に見られないと思いますよ?」
「しかし、某がタクミ様と友人のように接するのは……」
「固い固い。ニコラは固すぎるんだよ。こういう時は、臨機応変に対応するのが護衛ってものだ」
「……某には少々難しいかもしれません」
打ち合わせは、フィリップさんが友人のように接する事で、ニコラさんはあまり慣れないらしくこういう事は苦手な様子だ。
大事な話ではあるけど、深刻な話でもないのでお茶を飲みながらのんびりと話し合っている。
リーザはコッカーやトリースと仲良くなれたようで、シェリーやラーレと一緒にワイワイと他愛もない話をしているようだ。
レオは俺の隣で日を浴びながら伏せてリラックスしているが、聞き耳は立てているのか時折耳がぴくぴく動いている……まぁ、一緒に行けない分気になっているのもあるんだろう。
「まぁ、やっぱり友人同士とした方がやりやすいでしょうね。男同士ってのもありますし」
「ですよ。男同士でも、殺伐とした雰囲気の集団というのもいるでしょうけど、そういうのは村の人達が警戒しますから」
「殺伐としていた方が、気が引き締まってよいのでは……と思ってしまいます……ズズ……」
年齢も大きく離れていないし、男同士なんだから気兼ねなく友人として接した方が自然だろうと、俺もフィリップさんに同意する。
殺伐とした集団というのはちょっと気になるけど……頭に浮かんだのは、暗殺とかを生業としている集団だが、さすがに違うと思いたい。
ニコラさんは砕けた接し方が苦手なんだろう、愛用の湯飲みを使ってダンデリーオン茶を飲みながら、難しい表情でむしろ気が引き締まるので殺伐とした方がいいと言っている……けど、さすがにそれは俺もちょっとなぁ。
フィリップさんの言う通り、警戒されたり怪しまれるだろう。
というか、相変わらずニコラさんは見た目に湯飲みは合っているんだけど、着ている物や飲んでいる物はミスマッチだな。
ちなみにこのダンデリーオン茶、ダイエットのために飲むのが作った目的でもあるんだけど、意外にも護衛さん達に好評らしい。
よく飲まれているこれまでのお茶と違って、苦みが強いのが理由らしいけど……眠い時の深夜の見張りとかで気付け代わりに飲まれているとか……。
カフェインがないから、目覚ましの効果はほぼないと言っていいんだけど……そういうものなのかな?
勤務中に飲んでいるうちに癖になる人が多くいたらしく、話し合う際に用意されたお茶はダンデリーオン茶一択だった。
俺も親しんだ味に近いから、特に文句はない。
「ニコラはもう少し柔らかくなった方がいいぞ? そんなだから、女も寄り付かないんだ」
「……フィリップ殿に言われたくはありませんが」
「いやいや、俺はそれなりにな? ほら、ラクトスに行けば両手じゃ足りないくらいだし」
「えっと、そんな様子は今まで見た事がありませんでしたけど……?」
ニコラさんが固い考えだからか、急に女性関係の話へともっていくフィリップさん。
ジト目をしたニコラさんに、フィリップさんは自分がモテると言っているけど……今までそんな様子は見た事がない。
いやまぁ、端正な顔立ちと男にしては少し長めの髪が似合っているし、護衛兵士長もできる頼れる男性と、女性からモテそうな要素は多いんだけどな。
でも、護衛としてラクトスの街へ行った時は、全くそんな様子はなかったはず……。
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