ブレイユ村に行くための荷物をまとめました
「まさか、タクミ様と一緒に旅行でもする気分だったのですかな? ふむ……成る程……タクミ様に積極的に行くため、と考えたのですね。そしてそれを誤魔化すために、タクミ様の考えに乗るように、と?」
「そ、そんな事ないわよ! さすがに私だって、そんな……そんな……っ!」
セバスチャンさんの言葉に、顔を真っ赤にさせて反論しながらも、段々と勢いがなくなって俯いてしまったクレア。
クレアが真っ先に俺との事を考えてくれていたのかも、と思うと嬉しさもあるんだけど……セバスチャンさん、それを俺の目の前で言われるとこちらとしても反応が困るので、勘弁して下さい。
少し引いてクレアとセバスチャンさんの話を聞くつもりだったけど、どちらにせよ何も言えなくなってしまった。
頬が熱い気がするのは、きっと気のせいじゃない……。
「では、余裕を見て三日後の出発と致しましょう。それまでに準備を進めます。あと、行きはレオ様に乗って行ってもらいますが、フィリップとニコラを付けますので、馬の速度での移動となります」
「はい」
「ワフ!」
結局、セバスチャンさんに反論できなくなったクレアは屋敷で帰りを待つ事になり、レオに乗って村の近くまでの移動の相談も終えて、出発する日が決まった。
セバスチャンさんに対し、俺と一緒に頷いたレオは、村の手前までとはいえ一緒にいられるとなって、さっきよりは元気が出たようだ。
フィリップさんとニコラさんは、村に滞在中にレオの代わりに俺の護衛としてらしい……正直、護衛が付けられるというのに違和感を感じてしまうけど、色々動き出している現状、もしもの事があってはいけないんだなと、自分でも気を付けるように注意しよう。
フィリップさんはランジ村の時に一緒だったし、ニコラさんとも何度か森へ一緒に行ったり話したりしているので、一緒にいても他人感が出ない事が二人が選ばれた理由だ。
護衛という事を隠すにあたって、男同士での旅という事とした方が変に思われないから、という考えもあったりする。
レオが屋敷へ戻る時は、ライラさんが付いてくれるらしく、行きも途中までは一緒だ。
ライラさんは大変だと思うけど、リーザも任せられるし安心だな。
あと、レオがいない間の移動に関しては、俺がフィリップさんやニコラさんの乗っている馬に同乗させてもらう事になっている。
これは、俺が馬に乗れないから一緒にという事なんだが……ちゃんと馬に乗れるように練習した方がいいか、真剣に悩んでいたりもする。
出発するまでに薬草も作らないといけないし、準備でしばらく忙しくなりそうだ……。
クレアには悪いけど、しっかりブレイユ村を見て土産話で満足してもらおう、レオやリーザも一時いなくなるから、ティルラちゃんが寂しがるかもしれないしな。
ラーレも戻って来たし、新しくコッカーやトリースもいて仲良くしているけど、やっぱり姉妹は特別だろうから――。
「パパー、これはこっち?」
「うん、そうだな。えっと、他には……」
「タクミ様、リーザ様。こちらを」
「ありがとうございます、ライラさん」
「ありがとー」
「ワフ」
ブレイユ村へ行く事が決まって二日ほど。
そろそろ持って行く荷物の用意をしておこうと、夕食前の時間を使ってリーザと共に荷造りをしている……とは言っても、念のために剣を持って行く以外は服を荷物に詰めるだけなんだけどな。
手早く自分の服をまとめつつ、リーザが持って行く物も確認しているけど、俺も随分旅慣れたものだなぁ……レオやライラさん達に手伝ってもらっているのが大きいけど。
レオは、リーザの鞄の口を前足の爪先で器用に広げて、服などを入れやすくしてくれている。
最初は小さく畳むのを手伝おうとしたんだが、さすがにそこまで細かい作業は難しかったようだ……畳み方がわからなかったのもあるだろうが。
代わりに、ゲルダさんが畳んだ服を次々に鞄に入れているリーザ、楽しそうだな。
洗ってもらっていた服や、リーザ用に手直しされた服などをライラさんから受け取りながらお礼を伝える。
服以外の必要な物に関しては、フィリップさん達護衛さんが用意してくれているので、俺達が用意する物は少なくて済む。
行きの移動はレオに乗るけど、フィリップさん達が乗る馬の速度に合わせるため、余裕を見て二日程度の予定だが、そこまで多くの荷物にはならないだろうけどな。
「でもライラさん、何度も付いて来てもらってすみません。森に入る時もそうですし、少し前にランジ村へ行った時も……大変じゃないですか?」
「いえ……正直に申しますと、少々疲れを感じる事もありますが……私の役目はお世話をする事ですから。それが例え、屋敷の外であっても変わりません。ましてや、タクミ様について行くと決めたのですから、お供するのは当然の事です」
屋敷を離れる時、全てじゃなくても多くの場合はライラさんが付いて来てくれる事が多いため、俺としてはありがたいんだけど、ライラさん自身が大変じゃないかと少し心配になった。
フィリップさん達と違って、体を鍛えているわけではないだろうし、長時間外を移動する事になるから、ライラさんが疲れてしまわないかとも考えたりする。
だけど、ライラさん自身疲れる事はあっても、嫌がってはいない事を示すように微笑んで頷いてくれた……お世話するのが好きなのもあるんだろうけど、ありがたい事だなぁ。
「行きだけとはいえ、ライラさんの料理も美味しいので楽しみです。ありがとうございます……あと、よろしくお願いします」
「ライラお姉さん、ありがとー。えっと、よろしくお願い……します」
「ワフ、ワウー」
「いえそんな……私は自分がやりたいようにしているだけで、感謝される程の事では……」
改めて、お世話になっているなぁと思ったので、正面から感謝を伝える。
リーザもライラさんに懐いている事もあって、俺の真似をするように荷物をまとめる手を止めて感謝を伝えた……レオも同様だな。
急に感謝されて驚いたのか、なんだか照れているようにも見えるライラさんは、少しだけ頬が赤く見えた……セバスチャンさん程じゃないけど、いつも冷静に対応してくれるライラさんにしては、珍しいな。
まぁ、使用人として働いていたら誰かのお世話をするのは当たり前の事だとかで、正面から感謝を伝えられる事はあまりなくて、慣れていないのかもしれない。
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