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828/1997

シェリーの事で相談を持ち掛けられました



「あら、賑やかですねタクミさん?」

「あ、クレア」

「姉様ー!」

「ふふふ、今日のティルラはちょっと甘えん坊かしら?」

「ほっほっほ、少しづつではありますが、色々な事が決まって行っているようですな……?」

「ははは、まぁ……」


 ゲルダさんに甘えるリーザと、ラーレ達とじゃれ合うティルラちゃんをレオと一緒に眺めていると、クレアとセバスチャンさんが裏庭にやってきた。

 ここぞとばかりに、ティルラちゃんがクレアに抱き着き、姉妹の触れ合い……以前喧嘩後に仲直りをしてから、こうしてティルラちゃんが全力でクレアに甘える場面が増えたように思う。

 それは、いずれランジ村へ行くクレアに今のうちに甘えておこうという事もあるんだろうけど、本音で話をしたので、我慢する必要がなくなったからなんだろう。

 こういうティルラちゃんを見るのは、俺が初めて屋敷に来た時、ラモギの薬で病が治った直後くらいだったから、微笑ましいな……レオが来てからは、そちらに関心が行って甘えていたというのもあるんだろうけども。


 セバスチャンさんの方は、ゲルダさんに抱き着くリーザや、裏庭の雰囲気から俺達がなんの話をしていたのか察したんだろう、目を細めて笑っていた。

 さすがにもう握手はしていないけど、ゲルダさんが泣いた跡が垣間見えるし、ちょっとわかりやすかったかもしれない。

 まぁ、ライラさんの時とは違って、目の前でわかりやすく誘ったわけじゃないから、注意はされないはずだ――。



「タクミさん、少しシェリーの事で相談があるのですが……」


 ゲルダさんにランジ村に来てもらうようお願いしてからしばらく、午後の鍛錬を終わらせて夕食まで少し時間があったので、休憩がてらクレアとテーブルについてお茶を頂いている。

 そんな時、コッカーを肩に乗せたティルラちゃんと、トリースを肩に乗せたリーザが、シェリーと駆け回っているのを眺めながら、クレアから何やら相談を持ち掛けられた。


「シェリーの事で? それなら、俺よりレオの方が……」

「ワフ?」

 レオは、俺の横で伏せて休んでおり、時折リーザ達の方を気にかけるように視線を向けたりしている。

 俺の声とシェリーの名が聞こえたからだろう、レオが顔を上げて首を傾げながら鳴いた。


「もちろん、レオ様も一緒に」

「……シェリーに何かあったのかな? 見た感じ元気そうに走り回っているけど……言う事を聞かないとか?」

「いえ、そういう事ではないんです。元気がないとかでもなく、ちゃんと私が言った事は聞いてくれます。とは言っても、シェリーにはほとんど言い聞かせるような事はないんですけどね」

「ふむ、それじゃあどんな相談なんですか?」

「ワウー?」


 シェリーは俺達人間の様子を見て覚えたのか、特に何か厳しく言わなくても、結構行儀がいいからなぁ……以前は食欲に負けてつまみ食いをしてしまったが、レオに怒られてからはやっていないようだし、クレアの言う通りあれこれ言う必要はなさそうか。

 でも、元気がないとかそういう事でもないようだし、相談ってなんだろう?


「今のように、遊んでいたりすると平気なようなのですけど……何かを噛みたがる癖が付いているようなんです。あ、もちろん人を強く噛んだりはしません。私が手を出しても、軽く咥えるくらいですね」

「噛みたがる癖ですか……俺が見ている限りでは、そんな癖が付くような事はしていなかったと思うんですけど……」


 中型犬くらいの大きさとは言っても、シェリーはフェンリルだから、本気で噛めば人間なんてひとたまりもないだろう。

 とはいえシェリーは賢いから、噛み癖が付くような事はないと思っていたんだが……。


「その噛みたがる対象はとかは? その、人を見たら噛みたがるとか、特定の物に対して噛み付こうとするとか……」

「人に対してはあまり……特定の物という程ではないようです。木や石で作られた物の中で、硬めの物を噛もうとしている……いえ、噛んでいるようです」

「硬い物を……噛んでいるよう、というのは? 実際にその場面を見たのでは?」

「いえ、私が見ていると何か落ち着かない様子を見せるだけで、何かを噛んだりはしていません。離れている時などに、戻ってみると噛み跡が付いているのを発見しました。それをシェリーに聞くと、自分が噛んだからと……」


 硬い物を噛むのか……それでいて、クレアや他の誰かと一緒にいる時は我慢しているのかなんなのか、噛みたがることはないと。

 誰かの目があって怒られるからなのか、気が紛れるからなのかはわからないけど……。


「理由をシェリーに聞いたりは?」

「聞きましたけど、ムズムズして思わず噛んでしまったと言っていました。噛めば少し収まるようです」

「……ムズムズ? 噛んで収まる……もしかして」

「何か、わかるんですか?」

「ワウ?」


 想像でしかないけど、もしかするとそうなんじゃないか? と思い当たる事がある。

 というか、隣で首を傾げながら鳴くレオの方は、わかっていてもおかしくないと思うんだが……。

 俺の想像が正しければ、レオも経験した事があるはずなんだけどなぁ……もちろん、今の姿ではなく、マルチーズだった時の事だけども。


「はっきりとそうだと断定はできないけど、牙の生え変わりなのかも……」

「牙の生え変わり、ですか?」

「ワフ!?」


 クレアが首を傾げるのはわかるけど、なんでレオが「そうなの!?」というように驚いているんだ……。


「えっと……レオ、お前も経験した事があるだろう? 牙というか、歯が生え変わる時にくすぐったいようなむず痒い感覚がして、何かを噛んで落ち着かせようとしてた事が」

「ワウ~……? ワフ、ワウ!」

「レオ様にも、そんな事が……」


 ため息交じりにレオに言うと、少し考えるようにした後ようやく思い出したようで、大きく頷いた。

 シルバーフェンリルになった影響なのか、こちらの世界とかの知識がある程度入っている分、もしかしたら昔の記憶が少し薄れているのかもしれない。

 いやまぁ、生後数カ月程度に起こった時だから、単純に忘れていてもおかしくないのか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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