ラーレにはニャックが好評でした
「最初に見た時より、形が整っていますね」
「リーザちゃん凄いですね。私は……真似しても多分同じようにできないと思います……」
クレアやティルラちゃんも、リーザが作ったハンバーグを見て感心している様子……なのはともかく、ティルラちゃんは料理を手伝った事がないんだろうから、同じようにできなくても当然と言える。
最初は上手くできなくても、徐々に慣れて行くものだし……リーザも最初から、成形が上手かったわけでもないからな。
「……ん? 少し不思議な食感がしますね……これは、ニャックですか?」
「さすがクレア、よく気付いたね。セバスチャンさんに言って、ヘレーナさんに混ぜてもらうように言っておいたんだ」
「食感が違う以外は、味も変わりなく美味しいですし……これはいいですね!」
「ははは。まぁ、ニャックをそれだけで食べ続けるのは辛いから、こういう事も試してみようかなとね。飲み物の方は不評だったけど、こっちなら皆大丈夫だろうと思って」
「そうですね。私もそうですけど、何人か喉につっかえていましたから……」
ニャックドリンクは、クレアもそうだが他にも数人の使用人さんがのどにつっかえさせてしまっていた。
最初に試作した時、試飲したヘレーナさんもそうだが、ライラさんやティルラちゃんは大丈夫だったのになぁ……やっぱり、飲み物に固形物をというのは、もっと気を付けて飲むように注意しておかないといけないみたいだ。
それはともかく、ニャックを小さく刻んでハンバーグというか、挽き肉に混ぜて使ってみてはと提案したんだが、それなりに上手くいっていたようで良かった。
おからや豆腐ハンバーグのように、違和感なく……とまではいかないが、ちょっとした変わり種というか、食感を変えられて悪くない。
惜しむらくは、卵を使ってのつなぎだとちょっと不十分な感じがするくらいか……刻んだニャックが大きいのか、ハンバーグが崩れがちだったりする。
もう少し、小さく刻んだら大丈夫そうではあるけど、それはそれで作ってくれるヘレーナさん達が大変そうだから、これくらいは我慢だな。
ニャックに微妙な反応をしていた、レオやシェリーは特に気にせず食べているようだし、肉の量を減らしてヘルシーなハンバーグを作るというのは、達成できたと思っておこう。
「キィ、キィ!」
「ラーレ、ニャックが欲しいんですか?」
同じくハンバーグが用意されていたラーレは、ティルラちゃんに鳴いてニャックを要求している様子。
トフーを使ったサラダの時もそうだったけど、肉よりも味付けされた野菜やニャックの方が好みのようだ……最初は肉類が好物と言っていたのに。
まぁ、ラーレ自身今まで調理した物を食べた事がなかったからとか、そういう理由っぽいけどな……あちらは肉だが、フェン達もそうだし。
何も手を加えていない野菜とか、味気なかったからだろう。
「あ、ラーレ。ちゃんと他の部分も食べないと駄目ですよ!」
「キィ……」
ハンバーグのおかわりをしたラーレは、鋭いくちばしを器用に使って、混ざっているニャックだけを取り出して食べていたんだが、それをティルラちゃんに見とがめられていた。
好き嫌いというか、好きな部分だけを食べたいという事なんだろうけど、ちゃんと残さず全部食べるんだぞー。
「クゥーン……」
「レオも、おかわりが欲しいんだな」
「……グ、グルルゥ……」
ラーレを見ていたら、今度は甘えた声を出してレオからもおかわりを要求される。
さらに、フェリーからも……こちらは、少々遠慮がちに鳴いているけど、涎が抑えきれていない。
セバスチャンさんやライラさん、他の使用人さん達が準備をしてくれて、おかわりを用意して食欲旺盛な魔物達のお世話をしてくれる。
ニャックが入っていたから、少し物足りなかったとかかな? ともあれ、お腹を壊さない程度に食べるように、レオやフェリー達には注意しておいた――。
昼食の後は、フェリー達を前にセバスチャンさんから駅馬の構想を説明。
馬の方は、なんとか都合がつきそうではあるが少々時間がかかるようで、まずは公爵領全体というよりも、一部で試験的にやってみようという話になっているようだ。
いつの間にやら、セバスチャンさんはエッケンハルトさんに早馬を飛ばして連絡しており、そちらからの許可諸々は出ているとの事だった……この速さは、おそらく俺が駅馬の話をしてすぐ、手配していたっぽいな。
ちなみにこの際、レオからの圧力やら何やらでフェリー達に強制してしまわないよう、ティルラちゃん達と屋敷の中に入ってもらっている……リーザは通訳のためにいてもらっているけど、後でしっかり褒めておかないとな。
ラーレは離れた場所にいるが、コッカー達を相手にしているし、フェリー達も気にしている様子はないのでこちらは大丈夫だろう。
「……という訳でして。フェンリル達に、他の魔物から馬や人を守ってもらう事はできないか、と考えております。森を離れる事になりますし、無暗に人を襲わないという条件になります」
「グルゥ……」
セバスチャンさんが説明を終え、フェリーを筆頭に唸るような声を出して考えている。
フェリー達に駅馬を作った際にやってもらう事は、魔物が襲って来た時などの警備で、一つの場所に一体か二体いれば十分事足りるだろうけど、その代わりに森から離れて暮らしてもらう事になってしまう。
無暗に人を襲わないというのは、おとなしい今の様子を見ていれば大丈夫だろうけど、群れで生活している魔物に、そこから離れてというのは……やっぱり無理かな? なんて、今更ながらに考えてしまう。
「ガウ……ガウゥ?」
「グルゥ。グルルゥ?」
「えっと、食べる物とかは自分達で狩りをするの? って聞いてる」
「いえ、そこはこちらからお願いしている事でもありますから、用意させて頂きます。……馬よりは費用が掛かりそうですが、兵士を雇って配置するよりも安上がりですからな」
「グルゥ! グルルルゥ!」
「ハンバーグ、ハンバーグを用意してくれたら! だってー」
リルルがフェリーに何かを確認するように鳴き、頷いてこちらを見たフェリーがセバスチャンさんに向けて鳴きながら首を傾げる。
リーザが通訳して食べ物に関してだとわかったけど……餌付けしてしまったかも、なんて考えていたが……これは本格的にそうなってしまったようだな。
野生のフェンリルがそれでいいのか……? と思わなくもないけど、それだけハンバーグを気に入ったという事なんだろう――。
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