コカトリスの子供達にも役割ができました
『雑草栽培』で作った植物は、すぐに摘み取る事もあるが、放っておいても虫が付くのは確認されていないらしい……まぁ、一日程度で数を増やした後は枯れてしまうのだから、虫が付くような時間もないんだろうけど。
ともかく、増えた先の薬草などの植物は、ある段階で通常と同じ成長速度になるようで、そこからは他の植物と変わりなくなるのが確認されている。
当然虫も付くし土の栄養も必要で、さらに水も上げないと成長しないし枯れてしまうという事だ。
「屋敷の周囲にある植物も、今までは使用人が虫を取り除いて管理していましたが……これは中々有用かもしれませんな?」
「そうですね。二体でしかもまだ子供なので、限界はあるでしょうけど……虫を食べてくれるなら、植物を守ってくれそうです。さっきから見ていても、植物に傷を付けたりはしていないようでもありますから」
「植物をダメにする虫を食べても、植物には傷を付けない。薬草畑を作る時に役立ちそうですね」
俺の『雑草栽培』で、作ってすぐ摘み取るだけならいいんだが、そこから数を増やす事も必要なので、虫は天敵とも言える相手だ。
さすがに、効力があっても虫食いの薬草は、質として落ちるのは間違いないからな……。
まぁ、ここにいるコカトリスの子供達を利用するかどうかはともかく、コカトリスが畑とかに放せば虫を取ってくれる警備員として働いてくれるかもしれないなぁ。
「ピ、ピピィ」
「ピィ~」
簡易薬草畑を、楽しそうにパトロールしてくれているコカトリスの子供を見ながら、ラーレにコカトリスについて詳しく聞いてみる。
もちろん、通訳はティルラちゃんとリーザで、時折レオも参加している。
なんでもコカトリスは、森に棲む魔物達の中では掃除屋とか呼ばれているらしく、ラーレが連れてきた子供達はともかく、大人のコカトリスは人間を乗せられるくらいの大きさになる事もあって、それなりに大きな虫でも食べてしまうのだという。
さらに、土の中にいる虫も発見したりするうえ、くちばしでつついて土を柔らかくしてくれるので、森の木が育ちやすくなるとか。
なので、コカトリスのいる森は木々が成長しやすく、他の魔物もそれがわかっているから、あまりコカトリスを襲ったりはしないらしい。
例外として、食欲に負けた一部の魔物と、知性があるのか怪しいラーレにとっての食料でもある、オークやトロルドなどの魔物に襲われる事があったりはすると。
もちろんコカトリスも黙ってやられるわけではないので、石化能力を使って逃げたりするらしいが……ラーレが近付いたり、レオの気配を感じて逃げたコカトリスに関しては、またいずれ戻って来るだろうから、あちらの森は特に影響がないとも聞いた。
まぁ、ラクトス周辺の森で、木々が育たなくなると木材が不足してしまうから、戻って来るなら問題ないか。
広い森なうえ、近くに別のフェンリルの森があるから、簡単に不足するような事はないだろうけど、環境破壊とか森林破壊とかって言葉を誰でも聞いた事のあるような世界から来ているから、気になってしまうんだろう。
ちなみに、コカトリスの詳しい話を聞いて、セバスチャンさんが農業にも転用できないかと考えていたようだけど、まず掴まえて来るのが難しいし、ちゃんと言う事を聞くかわからないので、すぐには無理という結論だった。
こちらにはレオやラーレがいるから、逃がさないようにもできるし、言う事を聞いてもらえるけど、一般の農家には難しいだろうからなぁ。
「それじゃ、決まりね?」
「はい。ラーレが見ていれば問題もなさそうですし、意外にも手間はかからないようですからな」
「そうですね。水浴びは桶に入れておけば勝手に自分で洗うし、砂も同様。むしろ、薬草とかの植物についている虫を取ってくれるので、ありがたいと思います」
ラーレから話を聞き、コカトリスの子供達は無事、屋敷で面倒を見る事になった。
簡易薬草畑の近くに、雨除けの簡単な屋根を作ってそこで寝泊まりして、日中は薬草だけでなく屋敷の庭に生えている植物をパトロールし、人間の目では見つけられなかった、もしくは見逃していた虫を捕まえる。
砂は簡易薬草畑で、砂漠化してしまった場所の砂を使えば問題なさそうだし、桶に水を入れておけばそこで勝手に入って水浴びをすると……意外にも綺麗好きな様子。
飛んで逃げたりもしないし、人間に危害を加える事もないだろうし、ラーレが見ていれば問題もなさそうだとの結論だ。
あと、誰かがずっと付いていなくてもいいので、手間がかからないのも大きいか。
ちなみに、虫の収穫が少ない時は、自分達から主張して小麦をもらって食べるという事になった。
体の大きさに似合わず結構な量を食べるようだが、それもまだ子供で成長するためだろうし、レオやラーレに比べたら全然少ないうえに、小麦は大量にあるのでこちらも問題ない、と。
「良かったですねー。ここで安心して暮らせますよー?」
「ピピー」
「ピィピィー」
「……なんだか、結局ティルラに懐いているようね」
「そうだね。まぁ、最初から味方をしていたから、懐きやすかったのかもしれない」
コカトリスの子供達は、さっきのようにティルラちゃんの肩に止まって楽しそうに鳴いている。
最初に連れて来た時、レオやセバスチャンさんに怯えていた様子はもうない。
ティルラちゃんが面倒を見る、というのは却下されたけど、結局懐いてしまっているので一緒にいる事が多くなりそうだな。
ラーレもそうだが……ティルラちゃんは、鳥型に好かれる才能とかあるんだろうか? いや、レオやシェリーもそうだし、ランジ村の犬達もティルラちゃんには懐いていたから、動物や魔物に好かれるとかかな?
「まぁでも、日中は屋敷の植物を見回る役割になったんだから、あまり遊ぶ時間はないかな?」
「そうですね。手間もかからないようですし、レオ様達と遊ぶ時に、一緒に遊ぶ程度でしょう。……もう、ティルラの考えを無視して否定する事はしませんよ?」
「あははは、そうですね」
クレアやセバスチャンさんには、既にティルラちゃんが何を気にしていたのか、という事は伝えてある。
セバスチャンさんは薄々気付いていたようだったが、クレアは俺と同じくランジ村に行けば屋敷にティルラちゃんが一人になる、というのはあまり考えていなかったようだ。
ティルラちゃんの事を考えているようで、本当の意味で考えていなかったと、随分落ち込んで反省した様子だ。
だが、コカトリスの子供に挟まれて楽しそうなティルラちゃんを、微笑みながら見ているクレアからは、もう同じような事はないだろうと感じられた――。
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