コカトリスの子供達をどうするか相談しました
「ピ、ピピィ?」
「ピィ、ピィピィ?」
「こうして見ると、少し可愛げがあるような……?」
ラーレの前にコカトリスの子供達が並び、俺やクレア、セバスチャンさんやティルラちゃんも一緒に、どうしたものかと考える。
コカトリス達は自分達の後ろにいるラーレや、俺達の後ろにいるレオを見て、逆らうだけ無駄と判断したのか、今は可愛さアピールをしているようだ。
見た目は鳩そのものなのだが、鳥らしく首を動かしながら歩いて見せたり、首を傾げさせたりだな。
あとは、真後ろに首を回したり……これはどちらかというとマイナスのイメージを与えたようだが……人間は首を真後ろに回したりはできないからな。
「ふむ、肉類でも野菜類でもなく、穀物を好む……と」
「そう見たいです、セバスチャン。ラーレが言っていました」
「キィ」
ティルラちゃんは、ラーレに聞いたコカトリスの食べ物をセバスチャンさんに伝えている。
穀物か……芋とかもそうだが、鳩や成長してニワトリっぽくなるのなら、大豆や小麦がいいのかな?
大豆というか、ソーイはともかくとして、小麦の方は屋敷だけでなくラクトスの街やランジ村でもありふれているので、そこまで高い物じゃないはず。
これなら、食費に関しては問題なさそうだな……クレア達が、食費をケチったりはしないだろうけど……。
「キィ、キィー。キィキィ、キキィ!」
「わかりました!――えっと、ラーレが言うにはあまり高く飛べないので、勝手に逃げる事もほとんどないそうです。それに、成長していない今は石化の能力もなくて、そこらの鳥とほぼ変わらず危険もないらしいです」
高く飛べないとラーレの言葉を通訳するティルラちゃんの横で、精一杯翼をバサバサさせて飛んでいるが、確かにティルラちゃんの頭上程の高さも飛べていない……良くて、俺のお腹くらいの大体一メートルくらいかな。
これだと、屋敷を囲む塀に遮られて飛んで逃げたりもしないだろうし、それで屋敷以外に勝手に行ったりして誰かに迷惑をかける事はなさそうだ。
「まぁ、レオ様やラーレ、シェリーがいるから、コカトリスの子供が危険と思う事はないわね」
「ですな。コカトリス自体レオ様やラーレがおらずとも、フィリップさん達でどうとでもなります。おそらく、屋敷にいる使用人でもなんとかなるでしょう。この様子を見るに、こちらに危害を加える気はなさそうですが……」
「ピィ!」
「ピピ!」
戦闘能力に関しては、そもそもコカトリス自体石化させる事を除けば、オークに敵わないどころか、人間の大人でも対処可能という事だから、使用人さん達でもなんとかできるらしい……人を乗せられるくらいの大きさが厄介なくらいかな?
石化能力も、小さい範囲にしか影響を及ぼさないみたいだし、そもそも子供だとそれすらないから、一切危険がない……というより、そこらの鳥となんら変わらない魔物であるとの事だ。
その辺りの事を確認しながら話すクレアとセバスチャンさんに対し、コカトリス達はティルラちゃんの両肩にそれぞれ止まり、首を引っ込めたり体の前で翼をすり合わせたりしてのアピール。
これだけアピールするのは連れて来られてすぐ、食料だなんだと言われたからなんだろう……ある意味生きるために必死だと言える。
「さすがに、ここまで必死なのを見せられたら、食べるなんて考えられないよなぁ……」
「ラーレに連れて行ってもらって、森へ還すというのも……親達はもういないらしいですし」
「ピ!」
「ピィ!」
「それは止めて欲しいって言ってるよー?」
「まぁ、親達のように守ってくれる存在とか、連れて逃げてくれる誰かがいなかったら、森にいる魔物の餌になるのが精々らしいからなぁ……」
ラーレと同様、コカトリスの言葉がわかるリーザの通訳に、頷きながら眉をしかめて考える。
コカトリスの親たちがいれば、石化能力を使って威嚇したり、ラーレみたいに掴んで飛べば逃げる事も可能らしいけど……コカトリスの子供達は、魔物のいる森の中ではいわば最下層の存在で、取り残されればその先の運命は決まっているようなもの。
対抗する手段も逃げる手段もない以上、何者かの食料になってしまうのは簡単に想像できる。
「さすがに、やられて来いと言っているようなものだから、森へ還すのはなし……かな?」
「そうですね。ティルラではありませんが、私もここまで近くで見て関わった以上、見捨てるのは偲びないです。やっぱり、屋敷で面倒を見るのが一番良さそうですね……」
「ワウ!」
「キィッ! キキィ、キィー!」
クレアの言葉を聞いて、レオがラーレに一吠えすると、ビシッと片方の翼を上げて敬礼っぽい仕草をし、何度か鳴く。
ティルラちゃんに聞いてみると、連れてきた責任としてラーレが面倒を見ると言っているようだ。
さっき言い合いの原因になった、ティルラちゃんが面倒を見る、というのとはちょっと違うので少し不満そうだったけど、喧嘩から話し合いを経て、自分が主に面倒を見るのは無理だと理解しているんだろう、特に何かを言い出す事はなかった。
「とはいえ、コカトリスの子供の面倒を見るというのは、どうすればよろしいのでしょうか?」
「食べ物は穀物だからなんとかなるとして、裏庭で放し飼い……ですかね?」
「キィ、キィキィ」
「迷惑をかけないよう、言い聞かせておくから、その辺に放しておいて問題ないそうです。あと、汚れたら水をかければ綺麗になるだろうって……」
「汚れたらって……お風呂代わり、かな?」
鳥だからか? レオと一緒でお湯を嫌うのかもしれないな……。
「……ピ、ピピピ?」
「ピィ……ピ?」
「えっとね、できれば砂も用意してくれると、嬉しいかも? て言ってるー」
「キィ! キィキィ!」
「ピピー!」
「ピ!」
「……我が儘を言うな、食べられないだけありがたく思え……ってとこかな?」
「そうみたいです、タクミさん」
水をかければと聞いて、コカトリスの子供達がティルラちゃんの肩に止まったまま、控えめながら何かの主張。
リーザの通訳によれば、砂も欲しいと言っているみたいだが……ラーレが一喝して、首を引っ込めて翼で顔を隠してしまった。
状況からなんとなく、ラーレが言った事がわかったけど、コカトリスは砂浴びを好むのだろうか? いや、水を否定していなかったから水浴びもするのかもしれないが……すずめかな?
確か、ニワトリは砂浴びで鳩は水浴びを好むけど、すずめは両方浴びると何か雑学的な話を聞いた覚えがある。
まぁ、レオがいたから鳥を飼うつもりもなかったので、特にその時は聞き流していたんだが……見た目が鳩で、成長したらニワトリっぽくなって、両方の性質を持っていると考えたらいいのかもしれないな。
砂かぁ……。
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