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803/1997

ティルラちゃんは落ち着いてくれたようでした



「ワフ、ワフ!」

「いや、それでもいいけど……レオが大変だからな。とりあえず、案の一つとして考えようか」

「ワウ……」


 何かの案を、という事でレオからも主張があった。

 内容は、ランジ村からレオが全力で走って屋敷に向かう、という事だったんだが……まぁ、レオならできるだろうし、全力で走れば一日で往復だってできるかもしれない。

 ただそれだと、レオにばかり負担をかける事になるし、誰かを乗せる事もできないからな。

 不満気に声を漏らすレオだが、さすがになぁ……それなら、二日くらい余裕を見て俺やリーザと一緒に屋敷へ移動した方が良さそうだし、ティルラちゃんも喜ぶだろう。

 遊ぶ時間もそれなりに取れるだろうしな。


「とにかく、ティルラちゃんが寂しがらないようにするにはどうしたらいいか、じっくり考えよう」

「……タクミさん、そんなに強調して言われると、恥ずかしいです」

「なーに、ティルラちゃんくらいなら寂しがったって、全然恥ずかしい事なんてないから、大丈夫だよ」

「全然、大丈夫に思えません……」

「ワフ……」

「……ティルラお嬢様、こうなったら開き直る方がいかもしれませんね?」


 意気込んでいる俺とは違い、なぜか恥ずかしそうに俯くティルラちゃん。

 大人なら隠したりとか、恥ずかしいから表に出さない……というのはわかるけど、十歳のティルラちゃんは何も恥ずかしがる必要なんてないと思うんだけどなぁ?

 ティルラちゃんだけでなく、レオやライラさんまで溜め息を吐くような雰囲気だったのは、ちょっと納得がいかないが……。


「さて、ティルラちゃんはもう大分落ち着いたかな?」

「はい。タクミさんとレオ様のおかげで、色々整理できました!」

「ワフ」


 ちょっとした冗談で和ませつつ、ティルラちゃんに確認すると元気よく頷いてくれた……うん、いつもよりはまだ少し硬い感じはするけど、大丈夫そうだ。

 喧嘩というか、感情的になって言い合いをしてしまったら、第三者が話を聞いて落ち着く事もできるだろうから。

 ……逆に話を聞く人物によっては、もっとややこしくしたりして拗れる事もあるけど、そうならずに済んで良かった、レオがいてくれたおかげかもしれないけど。

 まぁ、ティルラちゃんの年頃で、短時間で心の整理ができたと言えたりするのは大人というか、賢いと思う。


「それじゃ、クレアから謝ってもらいに行こうか」

「え、私が謝るんじゃないんですか?」

「ティルラちゃんの事をよくわからず、頭ごなしに否定したからね。謝らないと……あー、俺もだ。ごめんね、ティルラちゃん。他の事ばかり考えていて、ティルラちゃんが寂しがっているのに気付けなくて……」


 ティルラちゃんを部屋の外へと促しながら、クレアの所へ向かおうとする前に、ちょっとした冗談を挟む。

 いや、クレアが謝らないとというのは割と本気だけど……こういうのは、お互い謝って仲直りというのが一番収まりがいいからな。

 驚くティルラちゃんに、自分もだと思い当たって謝っておく。


「タクミさんも!? あ、えっと……はい。私も、素直に相談できなくてすみません」

「うん、これでお互い仲直りだ。俺とティルラちゃんは喧嘩してたわけじゃないけど……でも、こうして謝られると、ティルラちゃんの方も謝れるでしょ?」


 クレアはティルラちゃんの事を、よく考えず頭ごなしに否定をした。

 ティルラちゃんはクレアが心配してくれているのを考えず、素直に相談せずに溜め込んだり、勉強や鍛錬に集中できずに中途半端になりかけた。

 どちらが特別悪いという程でもなく、どちらも相手に感情をぶつけるように言い合っていたから、お互いが謝って仲直りすればいい……と傍から見ている俺は感じる。

 一番は、仲のいい姉妹であって欲しいという、俺の願いもあるし、こんな事でお互い気まずくなってしまわないように、だな。


「タクミさん、私はそんな事がなくてもちゃんと謝れますよー」

「あははは、そうだね。ティルラちゃんは謝れるよねー、うんうん。でも、覚えておいた方がいいかな? とりあえず、だと見抜く人相手だと逆効果だけど、ちゃんと自分が悪かった事に気付いて、反省して謝れば、許してもらえる事ってのは多いんだ。まぁ、どうしても許せない事だとか、それじゃ済まされない事もあるけど、言い合いとかくらいなら大体はね?」

「はい、ありがとうございます!」

「ワフー?」


 ちょっと不満気に言うティルラちゃんに、少しだけ真面目な話。

 うわべだけの謝罪はもっての外だけど、自分が悪いと思った時にはそれに気付いて、謝れるって言うのは大事だと思うから。

 謝っても許されない事っていうのはあるだろうけど、今回は違うし、謝る事や感謝をする事は大事だ……なんて、クレアとティルラちゃんの言い合いを見ている最中、セバスチャンさんやライラさんと話していて気付いた事でもある。

 レオから疑わしい視線を向けられ、受け売り? というような鳴き声が聞こえるが、スルーしておこう、うん。


 二人が言い合いしていた時は、ずっとおろおろしていたのに……俺やセバスチャンさん達の話を聞いていたんだな……。

 ちなみにライラさんは、何も言わずにティルラちゃんに微笑むだけだった。

 ライラさんのおかげでこの事に気付けたから、偉そうに言ってすみませんと心の中で呟きながら、感謝するように会釈しておいた――。



「キャゥ~」

「にゃはは! くすぐったいけど気持ちいいよー!」

「ふふふ、シェリーはここを撫でられるのが気持ちいのね? リーザちゃんはこうかしら? もう少し強めに撫でた方がくすぐったくないのかしら……?」

「えっと……クレア?」

「……姉様?」

「はっ!」

「あ、パパとママだー!」

「キャゥ!」


 ティルラちゃんと共に、レオやライラさんを連れて裏庭に戻ると、そこではクレアが片方の手でシェリーのお腹を撫で、もう片方でリーザの尻尾を撫でている光景が広がっていた。

 優しく撫でるというより、気持ちのいい箇所を発見してワシャワシャと撫でる様子はなんというか、心を落ち着けるよりも現実逃避に近い物を感じてしまう……。

 まぁ、シェリーもリーザも喜んでいる様子だからいいんだけど……クレアって意外とテクニシャン?

 邪魔しちゃ悪いかなー……と思いつつ、ティルラちゃんと一緒に声をかけると、わかりやすく声を上げて我に返ったクレアが振り返り、立ち上がった――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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