レオのクシャミは雰囲気を軽くする効果があるようでした
おかげさまで、連載800話達成(特別編は数えていません)出来ました!
これも読んで下さっている皆様のおかげです、本当にありがとうございます!
これからも引き続き、よろしくお願いします。
「そうだなぁ……確かにティルラちゃんと離れるのは、俺も寂しい。レオもそうだろ?」
「ワウ……」
「レオ様……」
言葉を間違えないように、気を付けながらティルラちゃんに話し掛けつつレオに問いかけると、同意するように頷いて、ティルラちゃんの体を鼻先でチョンチョンとつつくようにする。
レオなりに気付かなかった事への謝罪かもしれないし、今はまだ一緒にいられるからという意思表示なのかもしれない。
それに気付いたのか、ティルラちゃんは少しだけ体を離して手を上げ、近付けられていた鼻の頭をゆっくりと撫でた。
リーザが、初めてレオと打ち解けた時みたいな感じだな……って、それを続けていると……!
「ティルラちゃん……それは……」
「ワ……ワ……ワッフシュン!」
「きゃっ! レ、レオ様?」
「あー、鼻をくすぐられた感じになって、こそばゆかったんだと思うよ?――ライラさん、すみません……」
「いえ、これくらいはさせて下さい」
リーザの時と同じように、盛大にクシャミをするレオ。
レオの方も、今ここでクシャミをするのはまずいと感じたのか、少しは我慢したようだが……俺が止めようとする間も撫でられていて、我慢できなかったんだろう。
目の前でクシャミを受けて、リーザと同じようにベトベトになったティルラちゃんに、ライラさんが近付きタオルで拭き始める。
ただ、レオのクシャミのおかげで重かった空気が和んだ気がするのはありがたい。
「ワ、ワウ……」
「あはははは! レオ様、私が鼻を触ったからなんですから、大丈夫ですよ! レオ様のクシャミ、凄かったです!」
原因はティルラちゃんの小さな手だが、我慢できなかった事をすまなさそうにするレオに、ティルラちゃんがライラさんに拭かれながら笑って、許してくれた。
ただ、笑いながらも目尻から涙が溢れそうになっていたのは、これまでの話や、クレアとの言い合いが原因で感情が高ぶってしまったからだろう。
笑い泣きにしか見えないが、こうしていつもティルラちゃんは、弱い部分を見せないようにしていたのかもしれない……ほんと、強がってしまうところとかは、クレアそっくりでやっぱり姉妹だなぁ。
「ティルラちゃん、大丈夫。寂しい思いをさせない……とは言えないけど、できるだけティルラちゃんが寂しく感じないように、何かできる事がないか考えるよ。――レオも一緒に、な?」
「ワウ!」
「……タクミさん、レオ様……ちょっと苦しいですよー」
「おっと、ごめんごめん」
「ワウワウ」
まだ完全にライラさんが拭き終わっていないけど、それには構わずティルラちゃんの頭を撫で、ティルラちゃんを巻き込んでレオに抱き着くようにする。
俺の言葉に同意して、レオも力強く頷いてくれた。
決意をするように語り掛けつつ、ちょっと強めにレオへとティルラちゃんを押し付けるようにしていたのはわざとで、気を紛らわすためだが、苦情が出たので力を緩めて離れた。
おかげで、ティルラちゃんの涙は引っ込んでくれたようだ……感情を我慢せず、表に出す事は大事だと思うが、それは俺の前でじゃなくクレアの前で爆発させた方がいいだろうからな……今度は言い合いにならない事を願うばかりだが。
ちなみにティルラちゃんとくっ付いた際に、まだ完全に拭き取れていなかったので俺の服も、少しベトベトになっていたが……今は気にしない。
……すみません、ライラさん……洗濯の手間を増やしてしまって……今度手伝いますから。
せめて拭き取った後にして欲しかったと、訴えるようなライラさんの視線には、こちらも同じく視線で謝っておく。
手間を増やしてしまうから、洗濯の仕方とか、今度習って自分でもできるようにしておこう……ライラさんからは、それくらいはお任せくださいとか言われそうだけど。
「そういえば、ティルラちゃん?」
「なんですか?」
「ティルラちゃんにはラーレがいるでしょ? しかも、専用の鞍を用意してもらっているから、いつでも乗って空を飛べるわけだよね?」
「はい、そうですね」
「レオより速度は遅いのかもしれないけど、空を飛べば、ランジ村にもすぐ来れたりするんじゃないかな? 全力じゃないレオでも、半日くらいでランジ村に行けるはずだし……空を飛べばもう少し早く移動できると思うよ?」
「そうでした! ラーレに乗れば、いつでもタクミさんやレオ様やリーザちゃんに会えます! 毎日通えばいいんです!」
「いや……さすがに毎日は無理だと思うけどね?」
元気付けるために、ラーレでの移動案を出したが……さすがに毎日は無理だろう。
それに、実際飛んでランジ村に行くとしても、ラクトス経由にするか森の上空を飛ぶかとか、色々考える事もあるからな。
さすがに、ティルラちゃん一人でラーレに乗って移動するわけにもいかないから、誰かが一緒にいないといけないし、それを誰にするかも問題だ……セバスチャンさんは……無理そうだ。
それに、毎日ではないにしろ、頻繁に行き来しているとラーレが疲れてしまわないかも心配だからな……これは、俺が疲労回復の薬草を食べさせれば、解決しそうではあるけど。
ともあれ、ティルラちゃんと離れても、寂しくならないようにする案の一つとして考えて欲しいくらいだな。
これで完全に、寂しさが取り除かれたりはしないだろうし……他にも考えておかなきゃいけない。
例えば……孤児院にいる子供を、屋敷でティルラちゃんの遊び相手に連れて来るとか? いや、これはこれでなんとなく無理矢理でないにしても、問題がありそうだからダメだな。
もう少し、何か別の方法や、問題ない方法を考えないと。
「とにかく、ずっと一緒に……と言うのが難しくても、会う機会を増やしたり、別の事で寂しくないようにするのは可能だと思うんだ」
「そうですね……さすがタクミさん、凄いです! 私は、寂しくならない方法とか、考えもしませんでした! ずっと、寂しいのを我慢するために、今遊んで楽しんでおこうとか、そればかりです……」
「まぁ、ティルラちゃんくらいの年頃なら、それも仕方ないと思うよ?」
むしろ、我が儘を言ったり我慢しようとか考えている、ティルラちゃんの方が凄いと思う。
このくらいの年頃なら、無理にでも納得しようと考えず、我が儘を言ったりする事の方が多いだろうから。
ともあれ、こういった事は俺一人で考えるべき事じゃないから、クレアやセバスチャンさんとも相談しないとな――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
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