新しい飲み物は明日にでも試作してみる事にしました
タピオカドリンクにニャックを代用して、新しい飲み物を作る事を考える。
でも、砂糖が貴重なうえにニャックは甘さ控えめどころか、ないと言っていいから……ミルクティーにしたとしても、甘くて美味しい飲み物ができるわけじゃないし、味には不安がある。
この屋敷で出るお茶は美味しいし、ミルクを混ぜてニャックを入れるだけだから、不味くはないとは思うが……という程度だな。
こればっかりは、作ってみないとわからないが、無糖のミルクティーだってあるんだし、失敗はほぼないだろうと思っていたりもする。
とにかく、クレアが買ったニャックを全部消費するために、と考えたんだが……ポトフに入れて食べれば美味しく食べられるし、屋敷の女性達も興味津々なので、消費に関しては考えなくても良かったかもしれない。
とはいえ、呟いた事がクレアやセバスチャンさんに聞かれた事が発端とはいえ、自分で言い出した事なので試すだけは試してみようかな。
「まぁ、ニャックを入れるので、ニャックドリンクとか、ニャックミルクティー……と言えばいいんですかね?」
「ミルクティーという事は、ミルクも入れるのですかな?」
「はい。ここで出されるお茶は、ミルクを入れない事がほとんどですが、ダンデリーオン茶を飲みやすくする際に入れたりするように、ミルクを混ぜる飲み方もあります」
屋敷で出されるミルクだが、さすがに遠心分離機はないだろうから低脂肪乳じゃないはずだし、それを混ぜた時点でカロリーゼロはあり得ない。
ニャックは低カロリーでもゼロではない。
健康とかを考えると、どちらがいいのかは飲み物に何を求めるかで変わってくるだろうが、ダイエットという意味では結局のところ、ダンデリーオン茶には敵わないってだけの話だ。
「ふむ、それは特殊な作り方をするのですか?」
「いえ、ニャックを小さめに切って、お茶と混ぜるだけです。あとは好みでミルクを入れるかどうか……でしょうね。明日にでもヘレーナさんに言って作ってみますよ」
「簡単なのですな。砂糖の話もありましたが?」
「そちらは、本来砂糖を入れる飲み物だから、ですね。元々は甘い飲み物という考えの物なので……」
甘くないタピオカドリンクというのもあるのかもしれないが、俺は飲んだ事がないため、想像する際に砂糖で甘くする考えが先行していたんだ。
というより、日本では女性の人気が高く、職場でも女性社員がコンビニで買って来たのをよく飲んでいるのを見かけたが、男性はあまり飲んでいないイメージ……あくまでイメージで、俺も飲んだ経験がほとんどないからだけどな。
ちなみに、俺が飲んだのもコンビニで売られていたタピオカミルクティーで、砂糖をふんだんに使ってかなり甘い物だった。
「甘いデザートや、料理の際に少量を使うのならまだしも、飲み物で多く砂糖を使うのは難しいでしょうな……」
「はい。なので、味に保証はないと言っていいと思います。まぁ、不味い物はできないと思いますけど、美味しいかどうかは……微妙なところですね」
明日ヘレーナさんに話して作るだけ作ってみて、誰かが好んで飲むくらいでなければ、この先作られる事もそうそうないだろう……ただの思い付きだし、そんなもんだな。
施策は明日という事で、その場は解散となった。
クレアも話は聞いていたが、他の使用人さん達の中で特に女性も含めて、ニャックを食事にという程には皆、食いつかなかった……日本だと女性に大人気だったのになぁ……ダイエットと天秤にかけると、痩せる方が優先されたようだ。
砂糖を使わない方向なので、甘くないというのもその理由だろうけど。
セバスチャンさんだけは、新しい物だから興味がありそうで、ヘレーナさんと話す時は厨房に呼んで下さいと言われた。
まぁ、意見を聞くにはちょうどいいだろう。
その後は、ティルラちゃんと一緒に剣を持って素振りをしておく。
本当は日中の疲れもあるだろうから、休みにしようと思ったんだが、むしろ素振りでさらにティルラちゃんを疲れさせる事で、ラーレがいない寂しさを強く感じる前に、寝てくれるかなと考えたからだ。
子供達ともよく遊んでいたから、今日は寂しいとか感じるまでもなくぐっすり寝てくれるだろう。
素振りの後は風呂に入り、部屋に戻ってデリアさんや子供達と遊べた事の感想を、嬉しそうに話すリーザが寝付くまで付き合い、就寝した――。
「キィー!」
「この声は、ラーレです!」
翌日、朝のうちにいつものように薬草を作り、ニャックの入った樽を持って来たニックに薬草を渡す。
昼食後にはティルラちゃんやリーザと一緒に、なんとかレオに剣を当てようと四苦八苦しているところで、聞き覚えのある声が周囲に響いた。
ティルラちゃんがすぐに反応し、空を見上げながらラーレの声だと断定。
もしかしたら従魔契約を結んでいるティルラちゃんには、鳴き声というよりも、何かを喋っている声のように聞こえているのかもしれない。
「キィ、キィー!」
「やっぱりラーレです! お帰りなさーい!」
「おーほんとだね」
「ラーレだー」
「ワウー」
全員で手を止め、空を見上げると遠くから段々と近付いて来る、翼を広げた何か……大きさと声から、ラーレとわかる鳥がこちらへと向かって来ていた。
大きいはずのラーレが、それなりに小さく見えるくらい離れているのに声が聞こえるって事は、相当大きな声で周囲に響いているんだろうなぁ。
まぁ、屋敷の周囲には他に住んでいる人がいたりもしないので、近所迷惑になったりはしないけども。
「あれ? ラーレ……何か捕まえてないか?」
「ワフ」
「なんでしょう?」
近付いて来るラーレを見ていると、足に何か生き物のようなものを捕まえているのが見えた。
呟くと、レオも見えたらしく頷き、ティルラちゃんは首を傾げている。
「キィ!」
そのまま、俺達の頭上付近まで来ると、ゆっくり下降してきたラーレが捕まえていた物体を離す……と言うより、放り出した感じかな? 投げたわけではないけど。
「ピピ? ピィ!」
「ピィ! ピィ!」
「なんでしょう、ラーレの子供ですかね?」
「いやー、どうだろう? 子供だったらもう少し丁寧に扱いそうだけど……」
「ワウゥ?」
「ママに怯えてるみたいだよ?」
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。