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リーザはデリアさんとの出会いを心底喜んでいるようでした



 通常、人を雇う際には、この人を雇って自分や会社……今回の場合は薬草畑に対し、貢献してもらえるかや利益を出せるような人なのか、さらに言うなら従順そうかどうかなど、雇う事で利点となる部分を探したりする。

 ……まぁ、俺は雇う側になるのは初めての事だから、なんとなくそう考えているだけで間違っているかもしれないけど……ともあれ、雇った際に教育の必要はあるだろうけど、その人が貢献できるかどうかを見るのが通常だと考えている。


 けど、クレアはそれとは違い、人となりや発言内容を考えて、その人が雇われた際に利点があるのか……つまり働いている人が問題なく過ごせる、もっと言うと生き甲斐というか、楽しさを覚える事ができるかどうか、を見ているように感じた。

 なんというんだろうか……自分達のためというわけではなく、その人のためにどうなのか、を考えているようだった。

 どちらかと言えば、利益のために人を雇う視点というよりも、統治している場所で暮らしている人達が、平和に暮らせるように……という視点なのかもと思う。


 まぁ、部下ではなく配下と言った事にも驚いたけど、それは日本とこの世界との違いだろうな。

 クレアは公爵家として教育を受けているし、そういった視点になるのも納得すると同時に、自然と考えられるので、セバスチャンさんやエッケンハルトさんから、人を見る目があると信頼されるのかも? なんて考えながら、部屋に到着した。


「ねぇねぇ、パパ?」

「うん? どうしたリーザ?」

「ワウ?」


 部屋に荷物を置いたり、机にメモを置いて後で見返そう……なんて考えていると、後ろからリーザが呼ぶ声。

 振り向くと、首を傾げるレオの横で嬉しそうなリーザ。


「私と同じ、尻尾と耳があるお姉ちゃんがいたね。形とかは、ちょっと違ったけど……」

「デリアさんだな。リーザと同じ獣人だけど、やっぱり嬉しいか?」

「うん! だって、パパやママはいるけど、リーザとはやっぱり違ったから……ママには、尻尾があるけど」

「ワウー」


 自分と同じ獣人がいた事で、リーザは嬉しさが隠し切れない様子……隠してはいないか。

 ともかく、やっぱりリーザ本人も自分だけ、他の人間と違って耳や尻尾がある事に何かしら感じていたんだろう。

 そりゃ、リーザの言う通りシルバーフェンリルのレオには、獣の耳や尻尾はあるけど、それとはまたちょっと違うしな。

 リーザの気持ちがわかったのか、レオは鳴き声をあげながら頬をリーザに擦り付けていた。


「探せば、他にもリーザと同じ獣人もいるかもしれないぞ? それこそ、北にあるっていう獣人の国に行けば、人間の俺の方が珍しくなるくらいだ」

「そうなんだー。でも、リーザと同じ人がいっぱいいても、やっぱりパパやママと一緒がいいなー」

「ははは、もちろん俺もレオも、リーザと一緒だ。いつか、リーザやデリアさんだけじゃなく、他の獣人とも仲良くなれればいいな?」

「うん!」

「ワウ!」


 行けるかどうかはわからないが、リーザのために一度は獣人の国へ、というのも悪くないかな。

 昔戦争をしていたという過去があるみたいだけど、今は仲が悪いと言う程でもないみたいだし、レオに乗ってリーザと一緒に旅を……というのも楽しそうだ。

 もちろん、現在進行している薬草畑の事を放ってはおけないので、そちらが落ち着いてからになるけど……落ち着くかなぁ?

 俺達と一緒がいいと言ってくれるリーザと一緒に、体を寄せて尻尾を振りながら楽しそうなレオも、両手を使って撫でておく。

 リーザが嬉しそうだと、レオも嬉しいんだろうな……時折、自分以外に夢中になると、ティルラちゃんとラーレのようにやきもちを焼いたりもするけど。


「タクミ様、よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ」

「失礼します」


 リーザやレオを撫で、夕食までもう少し時間があったので、さてどうしようか? と考えていると、部屋の扉がノックされ、ゲルダさんが入ってきた。

 ライラさんやミリナちゃんは、ラクトスまで行ったので、今は休憩中とか荷物の整理とかなんだろう。


「タクミ様、ヘレーナさんが至急厨房に来て欲しいと……」

「あー、もしかして、買って帰ってきたニャックに関してかな? わかりました、すぐに厨房へ行きます」


 買ったニャックのうち、一樽は持ち帰ってフィリップさんがすぐに厨房へ運び込まれたんだろう。

 最近、ヘレーナさんから新しい食材と見れば、俺と相談……という感じになっているような気がするが……まぁ、初めて見る物だとしたら、少しでも知識があった方がやりやすいだろうからな。

 ゲルダさんに頷き、厨房のヘレーナさんの所へ向かう事にする。


「パパ、リーザも手伝う?」

「うーん、今日はハンバーグの時と違って、簡単に料理ができるわけじゃないかもしれないから、レオと一緒に休んでてくれ。いっぱい遊んで楽しかっただろうけど、疲れただろう?」

「全然疲れてないけど……わかった! ママと一緒にいるー!」

「うん、いい子だ。それじゃレオ、頼むな?」

「ワフ!」


 子供達と遊んで疲れているだろうと思ったんだが……リーザはケロッとした表情で、確かに疲れを感じさせない。

 これも、獣人だから人間より体力があるとかなんだろうか? カレスさんの店だけでなく、孤児院でも子供達と遊んでいたのに……獣人おそるべし……俺だったら、翌日起き上がるのも辛いくらい疲労しそうだ。

 でも、デリアさんは孤児院の後に少し疲れた様子を見せていたから、獣人だからというわけでも……あっちはレオやクレアがいて緊張したからってのが大きいか。


 とはいえ、リーザが疲れていなくても、手伝える事があるかどうかすらわからないので、レオと一緒にいてもらう事にした。

 ……ニャック……こんにゃくに関して、俺が知っている事って芋から作られた事とかで、料理に応用とかはよく知らないんだよなぁ……とにかく、ヘレーナさんと話してみるか。



「お待たせしました、ヘレーナさん」

「タクミ様、お呼び立てして申し訳ありません。本来は私がタクミ様の所へ行くのですが……ご覧の様子で……」

「あはは、まぁ夕食の前ですからね、仕方ないですよ」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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