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ニャックを大量に買うかどうかの決着が付きました



 そういえば、クレアだけでなく使用人さん達のうち、女性がダイエットに興味を持っていたっけ……食べる量を減らす工夫を、ヘレーナさんにお願いしていたようでもあるし。

 だとしたら、クレアが大量に買うのも、問題ないのかな?

 ちなみに、ライラさんが加わったくらいから、視界の隅でヨハンナさんもコクコク頷いていたので、護衛さんにもニャックの需要はありそうだ。


「で、ですが……それだけ大量に買うのは、売り手のカナートさんにも迷惑が……掛かったりはしませんか……はぁ……」

「そうよ。売れる時に売る……これが商売の秘訣だと、さっきカレスからも聞いたわ」


 旗色が悪いセバスチャンさん。

 カナートさんへの迷惑という理由を使おうと考えたみたいだが、すぐに自分で否定した。

 ほぼ買い占めというのは、考え方によっては迷惑だったりもすると俺は思うんだが……。


 後で聞いた話によると、カレスさんが言っているように基本的に特別な事情がなければ、多く買ってくれる人を優先し、利益を確保する事が商売の考え方なのだそうだ。

 だからこそ、ラモギが買い占められた時は、街の近くにある屋敷にいるはずのクレアやセバスチャンさんに気付かれる事なく、ラクトス中のラモギが簡単に買われてしまったとの事。

 少しずつ買うと、途中で値を上げて足元を見る商売をする人もいるらしいので、多く買う時は思い切って買う方が後々得をする可能性が高いらしい。

 だとしたら、クレアが一気に買おうとしているのは、理にかなっているのか……量が多過ぎる気もするけど。


「その……迷惑というわけではないですし、ニャックが売れてこちらとしては喜ばしいのですが……」

「どうしたの、カナートさん?」

「いえ、樽でですし、水に浸けてあるので、運ぶのが大変ではないかなと……」

「そ、そうですクレアお嬢様。あれだけの樽を一度に運ぶのは、少々難しいかと」


 ここで、カナートさんがセバスチャンさん側に回って、援護射撃! というつもりはないんだろうけど、確かに六樽を運ぶのは難しそうだ。

 軽かったり、もっと小さければいいんだけど、水が並々と入っていて大きさも一人一樽持つのが精一杯なくらいだからなぁ。

 一樽数十キロはありそうだし、そもそも持ち帰るにしても運ぶための馬車がない。

 まさか、重い樽を持って屋敷まで歩いて帰れ、なんて無茶をクレアが言ったりはしないだろう。


「……確かに、一度に屋敷へ運ぶのは難しそうね」

「クレアお嬢様、一樽くらいなら馬車に乗せられますので、今日のところはそれを持って帰り、残りは屋敷へ運ぶよう手配してはいかがでしょうか?」

「それがいいわ。日持ちのしない、火にかけた方のニャックを持ち帰って、日持ちのする方は後で屋敷に届けてもらいましょう。もちろん、カナートさんに運ばせるわけにはいかないから、こちらで手配するわ。それでどうかしら、セバスチャン?」

「……わかりました。仕方ありません、そこまで仰るのであれば、手配するように致しましょう」


 勝者、クレアとライラさん、ヨハンナさんとなった……勝負しているわけじゃないけど。

 離れた場所で拳を握って喜んでいるヨハンナさんとは違い、話をポカンと聞くだけだったデリアさんやリーザ、ティルラちゃん、それにフィリップさん達もか。

 俺は、なんだかちょっと見ているのが楽しくなって、変な事を考えていたりもしたが。


「それじゃぁ、そうね……カレスに言えば、屋敷まで届くよう手配してくれるわね?」

「はい。そのように、連絡を取りましょう」

「あ、それならニックに俺からって言えば、一緒に運んでくれると思うので使ってやって下さい」

「畏まりました……」


 クレアの問いかけに、観念したセバスチャンさんが頷き、カレスさんに輸送を頼む事に決まった。

 ついでなのでニックを使う事を提案……どうせ、また薬草を取りに屋敷へ来るのだから、ついでに運んでもらえばいいだろう。

 俺にも頷いた後、護衛さんの一人にカレスさんの店へと行って、連絡を取り合うよう指示。

 どうでもいいけど、ニャックとニックって似ているな、ややこしい……まぁ、それを言うならアンネさんとアンナさんとか、他にも色々とあるけど、狙えるわけもないし単なる偶然だな、間違えないように気を付けないと。


「……えっと……どうすればいいんだ?」

「売れたんだから、素直に喜んだらいいと思う……クレア様、ありがとうございます」

「そ、そうだな。お買い上げいただき、ありがとうございます」

「えぇ。ニャックは大事に食べさせてもらうわ。あ、定期的にブレイユ村から送ってもらうのも、いいかもしれないわね……?」

「まぁ、そういうのは今回買ったニャックをある程度食べてから、決めてもいいと思うよ」

「そうですね、タクミさん」


 戸惑っているカナートさんに、デリアさんが助言し、二人で一緒に頭を下げた。

 ニャックを広めるという意味では、ほとんどを買い占めるのはどうかと思うけど、多くが売れ残る心配がなくなったから良かった……のかな?

 とりあえず、定期的に送ってもらうかどうかは、屋敷で皆に食べてもらってから決める事なので、さすがにやんわりと止めておいた。

 あまり多くあって、食べきれなくなってもいけないから。


 横にいるセバスチャンさんから「タクミ様の言う事は、よく聞くのですね……」なんて、ちょっと落ち込みながら言われてしまったけど。

 ……真っ向から止めようとするんじゃなくて、先延ばしにするように言ったから、クレアも頷いてくれただけだと思う。

 だからヨハンナさん、何かを期待する目でこっちを見ないで下さい。


「それじゃ、私達はそろそろ行きましょうか。ずっとここにいると、邪魔になってしまうから」

「売るための商品も、ほとんど残っていないけど……まぁ、そうだね」


 少しして、カレスさんの所から数人の人が来て、カナートさんとニャックを運ぶための話を始めたので、クレアに従って店から離れる事にする。

 カナートさんやデリアさんは特に何も言わないだろうけど、体の大きなレオもいるし、大人数で店の前を占拠してたら邪魔になってしまうからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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