レオ達は楽しそうに遊んでいました
「ワフ!」
「きゃー! あははははは!」
「レオ様すごーい!」
「シェリーも、シェリーもできる?」
「キャゥゥ……キャウ!」
「おぉ、すげぇ!」
なんとか、今日一日の精神的な疲れを振り切り、レオ達の様子を見るために庭へ来ると、子供達の楽しそうな声。
レオは女の子の襟を咥えて持ち上げたり、子供達の頭上をジャンプして飛んで見せたりしていた。
シェリーには、別の男の子がレオと同じ事を期待するような無茶ぶりをしていたが、さすがにできないと自信なさそうに鳴いた後、素早く子供達の間を縫うように駆けて見せる。
それぞれ体の大きさが違うなりに、子供達を相手に楽しく遊んでいるようだ。
「デリアさん、大丈夫かい?」
「はい……すみません、取り乱して……」
「まぁ、孤児繋がりでそういう事もあるんじゃないかな。俺も人の事は言えないから」
レオ達の様子を眺めながら、タオルを握りしめているデリアさんに声をかける。
泣いていたデリアさんは、移動している間に落ち着いてくれたようだ。
取り乱したどころではなかったようにも思うが、そこはデリアさんのために突っ込まないでおこう。
「あ、パパだー。ママ、パパが来たよー!」
「ワウ!」
「おっと。よしよし、子供達と楽しそうに遊んでいたな」
「ワフ」
「ふふふ、レオ様も子供達も、楽しそうでしたね」
「いきなり目の前に来られるのは、迫力に押されますが……少しは慣れました……」
リーザが俺に気付き、レオの背中に乗って報せると、カレスさんの店の時と同じように子供達を飛び越えて俺達の前に着地。
さっきよりも近くだったから、ちょっと驚いたけど、すぐに手を伸ばしてレオを褒めておく……クレアも一緒に撫でていた。
デリアさんの方は少し腰が引けているようだが、最初のように緊張し過ぎたりはしていないようだ。
そうだな……これなら……。
「デリアさん、子供が苦手だったりとかはしない?」
「え、えぇ。村ではよく子供達とも遊んでいましたから、苦手ではないです。……無邪気に尻尾を掴もうとする事があるので、それは困りますが、最近では避けるのも慣れましたから」
「よーし……それじゃ……レオ、やってくれ!」
「ワーウ!」
子供は無邪気だから、尻尾が揺れていたりすると触りたくなるものなんだろう……俺も触りたくなる気持ちがわからなくもない。
ともあれ、子供が苦手ではないどころか、むしろ慣れている様子なのでレオに声をかける。
俺の考えている事が伝わったのか、すぐに動き出したレオが口先でデリアさんの後ろの襟を咥えて持ち上げた……さすが相棒、俺が考えている事をわかってくれる。
ニヤリと笑っていたせいかもしれないが。
「え、ニャ! え、え、えぇ!?」
「わぁ、お姉ちゃんリーザと一緒だー!」
「ちょっと、えぇ? レオ様、一体何を……?」
「ワフ、ワフワフ!」
「私も子供達と一緒に……わ、わかりました、レオ様のご命令ならば!」
「デリアさん、そんなに意気込まなくていいから、一緒に遊ぶだけだと思って!」
いきなりの事に驚いているデリアさんに、喜ぶリーザ。
リーザに関しては、初めて孤児院に連れて来た時遠慮していたら、レオにあぁやって連れていかれたんだっけか。
ぶら下げられながら戸惑うデリアさんは、耳をぺたんと畳み、尻尾を垂れ下げている……緊張というよりは、観念している様子に見えるな。
レオの鳴き声から獣人のデリアさんは言葉がわかるため、命令と受け取って異様に意気込んでいたので、楽しく遊ぶだけと後ろから声だけはかけておく。
「タクミさん、レオ様が怖がられていたり、身構えられているとあんな風に接点を持たせようとしますね? 確か、お父様やゲルダも……少し違いますが、レオ様に乗せていました」
「ははは、まぁ、あんなに可愛い奴なのに、怖がられていたりするとなんというか、もったいない気がするんだよ。レオも可哀そうかなと思うし。それに、デリアさんからはまだ答えを聞いていないけど、もしリーザに読み書きを教えるようになったら、レオが近くにいる事がいつもになるでしょ? だから、今のうちに少しでも慣れておいた方がいいかなって……」
あと、こんなにレオは可愛くて優しいんだぞ、って伝えたい我が儘なのかもしれない。
人によっては、マルチーズくらい小さくてもどうしても怖がってしまったり、犬嫌い……という事だってあるだろうから、無理に慣れさせようとまでは思わないけど。
それでも、仲良くなれそうであるなら、一緒に遊べるくらいになって欲しい……うん、本当に俺の我が儘だな。
あとレオ自身も、人懐っこいからなのか積極的に遊ぼうとするから、尚更な。
もちろん、クレアに行ったようにリーザへ読み書きを教えるようになれば、レオの近くにいる事が多くなるから今のうちに慣れておいた方が、と思うのも本当だ。
「タクミ様、クレアお嬢様、こちら準備ができました」
「ありがとう、ライラ」
「ありがとうございます」
「お待たせしました、タクミ様、クレアお嬢様」
子供達の輪に入って遊び始めたデリアさん達を眺めていると、ライラさんがテーブルと椅子を用意してくれた。
クレアと座った頃合いを見計らうかのように、アンナさんが来る。
アンナさんは、俺が子供達を雇うというお願いを承諾し、その確認のために職員の人達と話しをしていたらしい。
「タクミ様、まずはとなりますが……現在孤児院から監督役として出せる人は、二人となります。あちらに……」
「……はい」
離れた場所に、職員のようにも見える男女一組の二人が、アンナさんの紹介で頭を下げたので、こちらも会釈しておく。
アンナさんと一緒に来たので、職員さんかと思ったんだけど、監督役と言っているという事は、あの人たちもこの孤児院で育った孤児という事だな。
「それで、子供達ですが……少々お待ち頂ければと……何分、急な話ですのでいきなりこの孤児院を出て、離れた村でというのも、子供達は驚くでしょう」
「はい、大丈夫です。ランジ村での薬草畑も、まだ準備している段階ですから」
いつ雇って、いつ連れて行くか……という話をしていなかったか、そういえば。
一応まだ薬草畑が本格的に始まっていない……というのは伝えているが、今連れて行っても大丈夫と言われたら、逆に困ってしまうからな――。
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