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レオとフェンリルが遠吠えをしました



「タクミ様、よろしいのでしょうか?」

「レオが乗せても良いと言っているので、乗ってやって下さい」

「……わかりました」


 レオ、良くやった!

 これで馬車で女性に密着という嬉し恥ずかしになる事を避けられた!

 レオにアイコンタクトを送ると、また溜め息を吐くように首を振られた……そこまで呆れないでも良いじゃないか……。

 そんな事がありつつ、俺とクレアさんはフェンリルを連れて馬車へ乗り込む。

 やっぱり距離は近いが、三人乗って密着するよりは全然マシだ。

 フェンリルは馬車に乗るというのが初めてなのか、興味深そうにキョロキョロしていたが、やがて狭い俺とクレアさんの間に挟まるようにして伏せの体勢になった。


「ふふ、ここが気に入ったんですかね」

「狭い場所が好きなんでしょうね。ほら、体がぴったり何かにくっ付いて収まりが良いんじゃないでしょうか?」

「そういうものなんですねぇ」


 ……本当は、犬で考えると確か……狭い場所で安全を確保するとかそういう意味合いがあった気がするが、詳しくは知らない。

 そういえばレオも体が小さかった時はソファーの隙間に挟まって寝てる事がよくあったな。


「それでは、出発致します」

「はい」

「ええ」


 セバスチャンさんの言葉を合図に、馬車が走り出す。

 それと一緒に、護衛の人達や入り口で待っていてくれた執事さん達も屋敷に向けて出発した。

 ……あれ、セバスチャンさんじゃない方のもう一人いた執事さん、もしかして乗ってるのは俺が乗ってるのと同じ馬車じゃ……。

 あっちに乗れば良かったんじゃないのか?

 あちらは執事さんで男だ。

 男と至近距離でいる趣味は無いが、クレアさんやライラさんのような美人と近くで接するよりは恥ずかしさとかは無いはずだ……。

 失敗したなぁ。


「キュゥ」


 そんな事を考えてると、フェンリルが俺の顔を見て一鳴き。

 ……まぁ、このフェンリルの可愛い顔を見ながら帰るのも悪くないか……。

 俺もクレアさんと同じく、このフェンリルの可愛さにやられてるのかもしれないな。

 森から離れ、馬車に揺られて屋敷へ向かう。

 森へ行く時と同じく、半分くらいの道を進んだ所で一旦休憩を取った。


「キャゥキャゥ」

「ふふふ、元気ね」


 馬車から降りて、皆思い思いに休憩をしてる中、木陰で休んでるクレアさんの周りをフェンリルは走り回っていた。

 元気だなぁ。


「ワフ、ワフ」

「キャゥ」


 時折、俺の横で伏せて休んでるレオの所まで来て、何かを話すようにお互い声を出している。

 フェンリルはレオと話した後は、すぐにクレアさんの所へ戻って周りを駆け回る。


「何を話してたんだ?」

「ワウ? ワフー」


 俺は駆け回るフェンリルを見守っているレオに聞いた。

 レオは一度首を傾げた後、楽しそうな声で鳴く。

 んー、楽しい……かな。

 フェンリルが楽しいと思ってくれてるなら、連れて来たかいがあったって事だな。


「そろそろ出発しましょうか」


 セバスチャンさんが休憩をしてる皆に声を掛け、各々馬や馬車に乗り込む。

 俺とクレアさんはさっきまでと同じように、セバスチャンさんが御者をする馬車に乗り込み、フェンリルは俺達の間に挟まる。


「やっぱり、狭い場所が好きなんですかね?」

「ははは、そうみたいですね」

「キュゥ」


 俺とクレアさんの話に、肯定するように鳴くフェンリル。

 やっぱりこいつも、レオと同じで人間の言葉がわかるみたいだな。

 フェンリルって皆そうなのかな……?

 俺の疑問はそのままに、セバスチャンさんが手綱を操り馬を走らせる。

 俺とクレアさんは、馬車に揺られながら一緒にフェンリルを撫でたりと、可愛がりながら屋敷へと向かった。

 ちなみに、最初レオに乗っていたライラさんは、休憩の後は執事さんの乗る馬車に乗ることにしたようだ。

 休憩の時、レオに乗れて喜んでいたライラさんだが、レオは移動中に馬より早くあちこち走り回るから、疲れも出たんだろう。

 今回の森探索ではずっと料理を担当してくれていたからな、その疲れも溜まってるだろうからゆっくりと馬車に乗って帰ってもらいたい。

 まぁ、レオに乗ったのは俺が三人で馬車に乗る事を躊躇ったのが原因だけどな。

 ……ライラさん、ごめんなさい。


 日も暮れ始め、地平線の向こうに綺麗な夕焼けが見える頃、俺達は屋敷へ到着した。

 屋敷の門をくぐる前、レオが急に夕日に向かって遠吠えを始めたのには驚いた。

 馬車を曳いてる馬や、護衛さん達の乗っている馬がその声に驚いていたようだが、さすがに皆扱いに慣れてるのか、すぐに馬を落ち着かせていた。


 ――アオォォォォォン――アォォォォォン。


 辺りにレオの遠吠えが響く。

 レオが何度か夕日に向かって遠吠えをする中、俺とクレアさんに挟まれるようにしてウトウトしていたフェンリルが起き上がり、レオに呼応するように遠吠えをし始める。


 ――アオォォォォォン――アォォォォォン。

 ――キャォォォォォン――キャォォォォン。

 ――アオォォォォォン――アォォォォォン。


 遠吠えで会話でもしてるのかと思うくらい交互に数回鳴いた後、レオは驚かせた事を謝るように俺達が乗っている馬車の馬の顔に頬を摺り寄せていた。

 フェンリルの方は「キャゥ」と一言謝るように鳴いた後、また俺とクレアさんの間に挟まって寝始めた。

 ……何だったんだろう……。


「レオ様はどうしたのでしょうか?」

「シルバーフェンリルの遠吠えに何事かが起こったのかと思いましたぞ」

「……んー、遠吠えって確か意味があったはずなんですけどね……」


 何だったかな……確か、縄張りを主張したり、はぐれた仲間を呼んだりするためだと聞いた覚えがある。

 総じて、仲間とコミュニケーションを取るためだったはずだ。


「このフェンリルと何か話したのかもしれませんね」

「確かに……話してるようにも聞こえましたね」

「レオ、どうなんだ?」

「ワフ?」


 馬車は先程の遠吠えで馬が驚いたため、落ち着かせるように止まっている。

 近くで馬と頬を擦り合って謝ってるような行動をしていたレオに聞いてみると、レオは俺の声に振り向き、首を傾げた。


「さっきの遠吠え、このフェンリルと話してるようにも聞こえたからな」

「ワフ。ワフワフーワーウワフワフ」


 レオは一度頷き、俺の言葉を肯定した後、何やら伝え始めた。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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