カレスさんの店で落ち着いて説明する事になりました
「まぁ、一応俺がパパになるみたいです」
「ワフ」
「し、シルバーフェンリル様とタクミ様の……? という事は、この子は……獣人の王!? いえ、女の子なので女王様!」
「にゃ?」
リーザが興味を持ったのか、デリアさんにてこてこと近付き、服の袖を引っ張ると、ようやくリーザの事に気付いて獣人だと認識した様子。
首を傾げるデリアさんにレオが主張し、俺も一応そう呼ばれていると言ったら、後退りしながらとんでもない事を言い出すデリアさんに、キョトンとして首を傾げるリーザ。
いやいやいや、どうしてそこで急にリーザが女王とかになるのか……まぁ、シルバーフェンリルは最強の魔物だから獣人にとって、神様とか王様みたいなものと言われてもある意味納得するけど。
でも、別にここは獣人の国ではないし、そもそも親代わりをしているだけだから。
「……タクミさん、リーザちゃんの事を説明していなかったのですか?」
「驚かそうかなと思って……レオやクレアと会って十分過ぎるくらい驚いているので、少しくらい説明しておいた方が良かったかも……」
レオ、クレア、リーザと続いて混乱の極みに達しているデリアさん……こんな事なら、ちゃんと説明しておいた方が良かったなぁ。
それでも、まずレオと実際に対面して緊張しまくっていたから、どちらにせよ似たような状態になっていたかもしれないけど……。
あとセバスチャンさん、説明と聞いて目を光らせないで下さい……ちゃんと活躍の場は用意しますから。
「ふむ……とりあえず、詳しく話をした方が良さそうですな? 店の二階で、詳しい話をしましょうか。お茶でも飲んで落ち着いた方がいいでしょう」
「そうですね、ありがとうございます、カレスさん」
「いえいえ……レオ様の効果で、子供を持つ親達のお客様が増えておりますからね。できるだけ引き延ばしておきたいというのが本音ですよ」
「ははは、カレスさんも随分商売上手ですね。――レオ、リーザ、済まないけど俺達はこのデリアさんと話をして来るから、もう少し子供達と遊んでてくれるか?」
「ワウ!」
「うん! 遊ぶの楽しいからいいよー。でも……そのお姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫、今は驚いているだけだから、落ち着けばちゃんと話せるようになるよ。――じゃあ、ティルラちゃんリーザやレオの事を頼むよ」
「お任せください! と言っても、私も一緒に遊んでいるんですけどね」
デリアさんの様子を見て、腰を据えて……というよりお茶でも飲んで落ち着いてから話そうと、カレスさんから提案されて承諾。
レオやリーザにはもう少し子供達と遊んでおくように言って、ティルラちゃんにもお願いしておいた。
ライラさんにより、驚きやら緊張やら、色んな感情で固まっているデリアさんの背中を押して店まで連れて行き、俺やクレア、カレスさんにセバスチャンさんも店の中へ入る。
ちなみに、店に入る前にレオへ男の子が迂闊にリーザへ近づかないよう、注意しておいてくれと言ったら、盛大に溜め息を吐かれた……むぅ。
「あ、アニキ!」
「あぁ、ニック。真面目に働いているようだな。あ、そのままでいいぞ。俺はこのまま二階でカレスさん達と話すから、お前はお客さんの相手をな」
「へい!」
カレスさんの店に入り、久しぶりに会う店員さん達と挨拶をしている際に、接客中のニックがいた。
俺の所へ駆け寄ろうとするのを止めて、お客さんに集中するように言う……接客中に放っておいたりしたら、お客さんに失礼だからな。
ニックが俺に懐いているというのはよくわかるんだが、相変わらずスキンヘッドで年上に見える男にというのは微妙な気分だ……悪い気分ではないけどな。
ともあれ、ニックや店員さん達を見ながら、階段を昇って二階へ向かう。
二階では、俺とカレスさんの向かいに、クレアとデリアさんが座る形でテーブルについた……セバスチャンさんはクレアの後ろに立っていて、説明の機会を窺っているように見える。
本来なら俺達三人の向かいにデリアさん、という配置になるところだったんだが、それだとデリアさんが緊張したり委縮するのが続くだろうと、クレアからこの配置を提案された。
……実際、隣に公爵令嬢が座っているっていう状況も緊張すると思うけど、クレアがピンと立ったままのデリアさんの尻尾や耳を注視しているのを見て、仕方ないなと納得……近くで見たいんだろうなぁ。
全員が椅子に座り、ライラさんが店員さんを手伝ってお茶の用意をしてくれるのを待ってから、話し始める。
「はぁ、ようやく一息吐けますね……結構喋ったので、喉が渇いていたんですよ」
「タクミ様、お代わりはありますので、必要であればいつでも」
「ありがとうございます。――さて、デリアさん……落ち着きましたか?」
「は、はい……取り乱してしまって、申し訳ありません」
淹れてもらったお茶を飲んで、息と共に疲れのようなものを吐き出す。
会談というか、説明会の時はセバスチャンさんも話していたけど、俺も随分話したからな……のどがカラカラだった。
お代わりを用意してくれているライラさんにお礼を言いつつ、デリアさんに声をかけた。
デリアさんは、一番強大な気配と体を持つレオから離れた事で、ようやく落ち着きを取り戻してくれたようだ……まぁ、ライラさんと店員さんが淹れてくれたお茶が美味しいおかげもあるんだろう。
隣にクレアがいるから、緊張はまだしている様子だけど、先程までと違ってしっかり話せそうだな。
「それじゃあ……何から話しましょうか? あぁ、レオは単純にシルバーフェンリルですし、クレアは公爵家のご令嬢というのはわかっているので、リーザの事ですかね?」
「あ、はい! そうです、あの獣人の子です! あの子は一体……タクミ様をパパ、そしてシルバーフェンリル様をママと呼ぶとは……」
「んー、そう呼んでいるのは、単純にリーザが父親と母親を求めた結果、偶然助けた俺達をそう呼んでいるんだと思っています。まぁ、親代わりと思ってもらえばですね。それでリーザは……」
お茶を飲みながら、ゆっくりとデリアさんにリーザとの出会いを話し始めた――。
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