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お片付け中は雑談タイムになりました



「いやはや、面白く拝見させて頂きました。タクミ様は、他ではない考えの持ち主のようですな。やはり、公爵閣下が気に入るだけの事はあります」

「はぁ……」


 デリアさんをレオ達がいるカレスさんのお店に連れて行く事が決まり、会場の片づけを眺めながら部屋の隅でソルダンさんとの雑談。

 片付けと言っても、用意した椅子を片付けるくらいで、本格的には職員さんがしてくれる手はずになっているらしい。

 ちなみに、俺も片づけを手伝おうと思ったのだが、これくらいは任せて欲しいと言われたのと、セバスチャンさんから「これから人を雇って部下を持つので、このような雑事くらいはお任せするのに慣れないと大変ですよ?」と言われたからでもある。

 まぁ、確かに人に何かを任せるという事にも慣れないとなぁ……と納得してしまったので、片付けを邪魔しないようにソルダンさんの隣に椅子を持ってきて座っている。


 デリアさんは俺の隣に座っていて、耳だけでなく背筋もピンと伸ばして緊張した様子なんだけど、俺相手にそこまで緊張する必要はないのになぁ。

 初めて会った雇い主になるかもしれない……志望している会社の社長の隣に、いきなり座らされると考えれば、緊張するのも無理はないか。


「それにしても、私は獣人を初めてみましたが、本当に人間と違う耳を持っているのですな。あぁ、すみません、変な意味とかはありませんので」

「は、はい……」


 自分にはない物だからか、珍しそうに言うソルダンさんの目は、実際にはデリアさんの方を見ていないい……まだ積まれている書類を見ているから。

 書類を処理している手は、相変わらずかなりの速さだけど、面談の準備をしている時からずっと手を止めていないのだからすごい。

 それでも、積まれた書類がなくならないのも、また凄いが……。


 ともかく、ソルダンさんのように初めて見る人はそういう感想になるのも仕方ないのかもしれないな。

 俺も、リーザを初めて見た時は驚いたし、ピクピクと忙しなく動く耳や尻尾にはちょっとした感動をしたもんだ……まぁ、人間とほぼ変わらない体に耳や尻尾が付いているのに驚いたくらいで、獣の耳や尻尾そのものはレオやシェリーで慣れている分、動揺は大きくなかったけど。

 それに、日本にいればそういうキャラクターの絵を見る事もあったからな。


「そんなに緊張しなくて良いのですよ? 私などで緊張していたら、この先もちませんよ?」

「そ、そうなんですか?」


 書類を見ながらデリアさんに話すソルダンさんが言っているのは、おそらくレオやリーザと一緒にいるであろう、クレアやティルラちゃんの事を示してるのだと思う。

 公爵家のご令嬢だもんなぁ……本人達はおおらかに受け止めてくれるだろうが、デリアさんがどうなるのか……。


「デリアさんと言いましたな。シルバーフェンリルに会うという事は、おそらく公爵家のご息女方とも会うという事になるでしょうからな」

「へ……? そ、そんな……私如きが公爵家のお嬢様方と会うなんて……」

「いやまぁ、ソルダンさんの言う通りなんですけどね。今はレオ……シルバーフェンリルと一緒にいるはずですから。これから一緒にそこに行くので、会う事になると思いますよ?」

「え……わ、私なんかが会ってもよろしいのでしょうか? それこそ、失礼な事をしたりどころか、獣人が会うというだけで不敬なのでは……」


 リーザの事はともかく、クレア達の事くらいは教えておいた方がいいかな? と考えていると、ソルダンさんに先を越されてしまった。

 カレスさんと話すと言っていたクレアは、店の中で相談しているんだろうけど、ティルラちゃんはリーザと一緒にレオや子供達といるだろうからなぁ。

 それに、俺が言ったらクレアさんも出てきそうだし……うん、デリアさんが公爵令嬢と出会う事は避けられそうにないな。

 でもまぁ、クレアもティルラちゃんも簡単に怒ったりはしないし、獣人だからと忌避するような事はないから、大丈夫だ。

 ……失礼な事したり言ったりなら、俺の方がよっぽどだしな。


「大丈夫ですよ、デリアさん。クレア……あー、公爵家のお嬢さん方は、会うだけで失礼なだと考えるような人じゃありませんから。それに、獣人に関する噂は気にもしていませんし、むしろ歓迎してくれると思いますよ?」

「わうぅ……」

「あ、すみません……つい……」

「い、いえ。大丈夫です……」


 デリアさんを安心させるように言葉をかけるだけのつもりが、つい手を伸ばして頭を撫でてしまった。

 緊張から、クレア達の事を聞いて怯えに変わり、なんとなく会ったばかりのリーザを思い出したからかもしれない。

 いかんいかん、女性の頭を気安く撫でるのは失礼だな、恥ずかしそうにして俯いてしまった……気を付けないと……男性だったらいいってわけでもないけど。

 というか、犬っぽい声を漏らしていたけど、そこは猫じゃないんだなぁ……リーザは狐っぽい耳と尻尾なのに、猫っぽい声を出すし……見た目とか関係無しに、個人差なのかもしれない。


「……タクミ様、なんだか慣れているようにも感じました。村の人達に撫でられるように、あったかかったです。……耳、ちょっと気持ち良かったなぁ」

「そうですか? まぁ、レオをいつも撫でてたりするから、それでなのかもしれないですね」


 最後に、ボソッと呟いた言葉は聞かなかった事にしよう。

 リーザもそうだが、レオも撫でられるのが好きだし、喜ぶならとよく撫でているから慣れているんだろう……リーザの撫で方講座も、レオから指南されたのもあるしな。

 デリアさんを思わず撫でたりという事もありつつ、ソルダンさんの公爵閣下がいかに素晴らしいかという話を聞いて過ごす。

 少しして片付けが終わった後、ソルダンさんに挨拶をしてデリアさんを連れて役所を出た。


 ちなみにその雑談をしている際、俺がデリアさんに敬語を話すのはおかしい……という指摘を本人からされ、クレアやリーザ達のように砕けた話し方をする事になった。

 一応、仕事関係の際にはできるだけ丁寧に話すよう心掛けているんだけど、雇う側と雇われる側での関係をはっきりするさせるためにも必要、とまで言われたら仕方ない……そういうものなのかな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……あれ? 確かネコ……。
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