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デリアさんの正体が判明しました



「そうですか……」

「もちろん、ラクトスだけでなくこの国の法でそういった事は禁じているのですが……ゼロにはなりません。他国からという者もいますし、不届きな者がなくならないというのが現状です。身元がわかれば、親元へ戻す事もできますが、そういった事はあまり多くなく……それに、一度は子供を孤児にまでした親ですから、そこへ戻すというのが正しいと言えるのか、私にはわかりません……」


 人が色んな場所から集まる以上、良からぬことを考える人間も来るわけだし、それこそセバスチャンさんの言っているように何かしらの事情で、子供を育てられない人もいたりするわけだ。

 あまり考えたくないが、口減らしのためだったり、身勝手な理由でという事も中にはあるだろうし、場合によっては魔物に襲われて親がやられる……なんて事もあったりするかもしれない。

 魔物はともかく、いかなる事情であっても子供を置いて行く親がいていいわけがないが……ここで考えて解消できる問題でもないから、今は忘れておこう。

 人が多く行き交う場所であるからこそだろうし、根深い問題だ……視界の隅では、ソルダンさんも頭を抱えていた……やっぱり、これに関しては難しい問題になっているんだろう。


 まぁ、公爵家が孤児院をやっているから、それで救われた子供もいるんだろうし、手をこまねいて何もやっていないわけではないのだから、悲観するばかりでもいけないか。

 なんとなく、セバスチャンさんやクレアが、駅馬に乗り気になるわけがわかった気がする……各地にそういう場所を設ければ、見張り代わりにもなるし、旅をしている間に魔物から襲われる頻度も減るだろうからな……おっと、随分思考が逸れてしまったけど、今はデリアさんの話だ。


「えっと、デリアさんがブレイユ村で育ったというのはわかりました。なんとなく、色々な違和感の内容がわかってきましたよ……」

「違和感、ですか?」


 今は座っているので手は下ろしているが、歩くときはほとんど帽子を気にして手を当てていたり、微妙に違和感を感じていた正体がなんとなくわかった。

 捨てられていたのを、拾われて育ったというのも一つの理由だが、一番わかりやすかったのがさっき怯えていた時の表情や仕草……それと目だ。


「デリアさん……すみませんが、その帽子を取ってもらえませんか?」

「え!? こ、この帽子をですか!? そ、その……すみません、大変気に入っているので、この帽子はこのまま……」


 帽子を取るようにお願いしたら、デリアさんは慌てて下ろしていた手で押さえ、拒否する事を申し訳なさそうにしながらも、決して離さないといった構えだ。

 まぁ、会談の時の質問を考えると、それも当然か……気に入っているのは本当でも、帽子を取りたくない理由は一つだな。


「大丈夫です。帽子を取ったからといって、デリアさんを糾弾するつもりも、ましてや差別するつもりもありませんから。単なる確認ですよ。それに、デリアさんにちょっと紹介したい人がいるので、そのためにも、お願いします」

「あ、あわわわわ! そ、そんな、私に頭なんて下げなくても! わ、わかりました……帽子を取ります……」


 安心してもらえるよう言葉を尽くしながら、椅子から立ち上がって頭を下げてお願いする……嫌がる相手に対して、無理をお願いしているんだから、俺が頭を下げるくらい安いもんだ。

 予想外だったのか、慌てたデリアさんは覚悟を決めた様子で、帽子を頭から外した。

 あぁ、やっぱり……。


「獣人、だったんですね……デリアさん」

「はい……隠していて、申し訳ありません」

「これは驚きましたな。募集した際には、種族問わずという項目を入れてはいましたが、人間以外が来るとは思いませんでした。ラクトス周辺には、人間しかいないと思っていたので……」

「リーザと同じように、拾われて育てられていたんでしょうね。まぁ、今のラクトスならともかく、例の戦争時に広まった噂を聞けば、隠しておきたいと考えるのも無理はないでしょう。――デリアさん、大丈夫です。俺は……いえ、公爵家に関わる人達も、獣人だからといって、差別をしたりはしませんよ」

「はい。一部の者はまだ噂を信じ込んでいる者もいるようですが、我が公爵家は獣人を人間の良き隣人と認識し、差別したり、ましてや下に見る事などあり得ません」

「そ、そうなんですか……?」


 デリアさんが帽子を外してすぐに目に入ったのは、ピンと立った耳……髪の色は茶色っぽいのに、耳の毛は真っ黒だ。

 リーザにある狐のような耳よりも小さく、短い毛で覆われた耳は多分……猫、かな? 綺麗な三角形を描いて立っているのは、初めてその耳を見せる俺達を警戒しているからなんだろう。

 やっぱり獣人だったか……なんとなく、デリアさんだけを呼んで部屋に戻って来た時、怯えたような雰囲気が、イタズラをしたのが見つかった時のレオに似ていたからな……叱られるんだろうなと警戒しているようであり、申し訳なさそうにしている雰囲気がだ。

 もちろん小さかった時の話で、まだ成長途中でやんちゃだった頃の事だな。


 あとは、捨てられて拾われたという話がリーザと似ていたのもあった事と、決定的なのは目だ。

 大きな目はよく見てみると、瞳孔が縦に細長く、人間とは違うようにも見えたからな。

 もしかしたら獣人じゃないか? と考えてみると、耳付き帽子をやたらと気にしていたのが腑に落ちた。

 まぁ、雰囲気とか、拾われた話とかは、ただ似ているだけで決め手というわけじゃなかったが、疑う材料にはなったかな。


「公爵家の当主様や、その娘のクレア……さんと話して確認しましたけど、確かに獣人を下に見るという事はないと言っていましたよ」

「そ、そうです……か。それを聞いて安心しました。隠していた事は……本当に申し訳ございません!」

「まぁ、今まで村で育ったんですから、人の多い街に来て警戒しているのだとわかります。安心して下さい、この街ではもう獣人を差別するような人は少ないですから」


 謝るデリアさんは、俺の話を聞いてピクピク動かしていた耳を、ペタンとしおれさせて頭を下げた。

 忙しなく耳を動かしているデリアさんを見ていると、リーザを思い出すなぁ……子供達と上手く遊んでいるだろうか? 

 とりあえず、公爵家の人達だけでなく街の人達の多くは、獣人に対して偏見や差別をするような考えはない事を知ってもらいたいから――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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