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駅馬に関して話しました



「では、先程の駅馬という事に関してですが……」

「ずっと気になっていたんですね……」


 フェンリル達を見送った後、夕食までの時間をティルラちゃんと剣の鍛錬をして過ごした。

 レオは相変わらずシェリーを走らせ、ダイエットをさせているようだが、ランジ村に行く前程に厳しくしていない様子だったのは、以前に比べてシェリーが痩せてきているからだろう。

 そろそろ、ダイエット計画も終了かな? まだ、その先にフェンリルとしての戦闘訓練……とかが待ち受けてそうだけど。

 ここ最近、毎日毎食となって慣れた感のある裏庭での夕食を食べ終わった頃合いに、セバスチャンさんから声がかかる。


 鍛錬をしている時はいつも通りにしていた様子だけど、夕食を食べ始めたくらいの頃から、微妙にソワソワしている様子が見られたので、ずっと気になっていたんだろう。

 食事中に話をさせるのは、行儀が悪いとか考えて今まで我慢していたのかもしれない……セバスチャンさんの知識欲のようなものは、わりと厄介かも?

 さらに、向かい合って座っているクレアの方からも、何か面白い提案をしてくれるのではないか、と考えているのがよくわかる視線を向けられているから、この主人にして執事ありと言えなくもないか。

 まぁ、セバスチャンさんの本来の主人はエッケンハルトさんだけど、そちらで考えても結局同じ事になりそうだ。


 以前は、セバスチャンさんがたしなめる場面もあったのに、いつの間にこうなったのか……俺が中途半端に思い付きで、しかも聞きかじった知識で口に出すのが原因だったりは……しないと思っておこう。

 とりあえず、駅馬の事だな。


「えっと、今は遠くへ行く際に、村や街に立ち寄って馬の交換をする……という事でいいんですよね?」

「はい。馬も生き物ですから、道中の休憩もさることながら、ずっと同じ馬に走らせるわけにもいきません。まぁ、急いでいない場合や商隊などはまた別ですが。商隊は自分達で馬を用意する事が多く、交換をするとお金がかかってしまうので、よっぽど急いでいる場合でない限りは、利用しません」

「馬を交換するというのはつまり、今までの馬を売り、新しく馬を買うのと同義ですからね。馬を潰してしまうよりはいいのでしょうけど、やはり誰もが使いたいとは考えていないようです。長距離の使いを出す際には時間の短縮のために重宝されますが、それも裕福な者に限られます」


 言い方は悪いが、今まで使っていた馬を下取りに出して、新しい馬を買う、といったシステムかな。

 それまで使っていた馬の状態にもよるが、強行軍に使う馬なだけあって下取り価格も悪くないかもしれないが、どうしても差額で損失が生まれるため、旅の費用を抑えたい商隊とか旅人が使う事はほとんどないんだろう。

 最初に考えていたのは、単純に馬の交換所のような場所を村や街以外の場所で作り、休憩を減らして移動時間の短縮をという考えだったんだけど、これだともう少し工夫が必要そうだなぁ。


「……駅馬というのは、村や街の間で別に馬を交換できる場所を作り、そこで交換する事で馬を休憩させる時間を減らして、総移動時間を減らすという考えになります。もちろん、乗っている人の休息も必要なので、交換する際にでも休憩したもらうため、宿場を併設できるとそこから収入を得る事もできるかと」

「成る程、宿屋もですか……」

「まぁ、話を聞く限りではあまり利用する人は多くなさそうなので、その場合は宿屋の方で採算が取れればなぁ……なんて甘い考えですけどね」


 いくら駅馬を用意しても、それを利用する人が少なければ費用がかさむだけで、早い話が赤字だ。

 エッケンハルトさんとかは喜んで利用しそうだけど、それだけじゃな……。

 慈善事業とするならいいんだけど、最低でもプラスマイナスゼロにするくらいじゃないと、長く続ける事はできないだろう。

 そこで働く人だって、生活しなきゃいけないからなぁ……こういう考えが先に出てくるのは、会社で働いた経験が大きいのかもしれない。


 何か企画を考えても、採算が取れそうにないとかで、却下される事が多かった。

 他にもいろいろな理由を付けられたりもしたけど、あれは結局下っ端の社員は言われた事だけを身を粉にしてこなせという事だったんだろう……そのくせ、言われた事しかできないとも言われたりしたが……。

 まぁ、この辺りの事は今どうでもいいか。


「宿も付けるとなると、もしかしたら可能性はあるかもしれません。タクミ様の言った案ですが、実は以前にも考えられた事があるのです」

「そうなんですか?」

「はい。ですが、馬の費用を考えると……管理をする者も雇わねばなりませんので、難しいという結論だったのです」

「馬の交換ついでに、宿を取る人というのは多くいるでしょう。もしかしたら、宿の方が人が多く来るかもしれませんね?」

「旅の途中の休息場も兼ねて考えているから。野宿するよりも、できる事なら屋根のある場所で寝たいと思う」


 特に俺は、アウトドアに慣れていないのもあって、できればちゃんとした場所で寝たい……野宿に慣れていないからな。

 クレアや屋敷の人達と行動する時は、テントなりなんなりと野営ができているし、森に行ったりランジ村から戻って来る時もそうだったから慣れたんだけど、さすがに星空を眺めながら寝るのは難しそうだ。

 旅に野宿は付き物とはいえ、しっかりとした野営ができるのは公爵家の人々のおかげで、商隊やその他の人達はあの規模の野営なんてできないだろう。

 それこそ、最小限の荷物で移動するのも旅の鉄則……という事もありそうだから、基本的には焚き火の傍で見張りを立てながら寝るくらいか。


「そうですな。夜は移動にも危険が伴うため、通常の旅であれば休むのが定石です。ですが、その際にも外で寝るのと宿で寝るのでは、はっきりと違いが出る事と思われます」

「一日程度ならそこまで気にならなくても、数日から十数日も旅をしていれば、慣れている人でも如実に疲れが出ると思うわ。私は旅慣れていないし、皆のおかげで良い状態で野営できたけれど、それでもやっぱり疲れを感じるもの。――タクミさん、薬草ありがとうございます」

「あぁ、うん。まぁ皆外で寝るのは慣れていても、はっきり疲れは取れないからね」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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[一言] 更新有り難う御座います。 これが後の[道の駅]に……。
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