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薬草は驚きの効果を発揮しました



「……!」


 薬草がフェンリルに触れた瞬間、薬草が仄かな光を放ち、巻き戻し再生のようにフェンリルの怪我が塞がって行く。

 光が収まるのと一緒に薬草も手から消え、フェンリルの折れていた後足も、ちゃんと通常の方向を向いていた。


「……あぁ、タクミさん!」

「ワフ! ワフ! ワウー!」


 クレアさんが瞳を潤ませながら、手で口を覆い、レオは喜びの鳴き声を上げている。


「まさか、致命傷を治せる薬草があるとは……」


 セバスチャンさんは怪我の治ったフェンリルを見ながら驚きの表情だ。

 まぁ、俺も上手く行くかはわからなかったし、思ったよりすごい効果が見れて驚いている。


「タクミさん、凄いです!」

「ワフーワフー!」


 クレアさんとレオは、怪我がたちどころに治ったフェンリルを見て興奮が収まらないようだ。


「……ははは。たまたま上手く行っただけですよ。こんな効果の薬草が栽培出来るなんて確信はありませんでしたからね」

「『雑草栽培』……すごい能力なんですね!」

「ワフー!」


 クレアさんもレオも、表情を輝かせて俺を見ている。

 ちょっと照れ臭い……。


「俺達は凄いものを見たんじゃないか?」

「そうですねフィリップさん。致命傷を一瞬で治すなんて……普通は見れる物じゃないでしょう」


 少しだけ離れて見ていたフィリップさんもニコラさんも驚きを隠せない様子。


「怪我は治りましたが……体力の方は戻っていないようですな」


 一人だけ、早々に落ち着いたセバスチャンさんは、持っていた袋からひざ掛けくらいの毛布を取り出し、フェンリルを包んだ。

 おっと、今は薬草の効果に喜ぶんじゃなくて、このフェンリルの方が大事だ。


「冷えないようにしないといけませんね」

「はい」

「セバスチャン……触ってみてもいいかしら……?」

「クレアお嬢様、このフェンリルは今まで深い傷を負って生死を彷徨っていたんですよ? 今はおとなしくしておいた方が良いでしょう」

「……わかったわ」


 残念そうなクレアさん。

 そんなに触りたいのか……。


「ワフ」

「あらレオ様、ありがとう」


 そんなクレアさんの体にレオが顔を寄せ、フェンリルの代わりに撫でさせる。

 笑顔で撫でてるクレアさんは満足そうだ。


「しかしこのフェンリル……大きさからすると、まだ子供ですな」

「そうなんですか?」


 中型犬くらいの大きさだから、もう大人なのかと。

 レオと比べると小さいが、レオは大きすぎるだけだ。

 シルバーフェンリルより小さいと聞いていたからこんなものかと思ってた。


「子供のフェンリルが群れからはぐれた所をトロルドに襲われたのかもしれませんね」

「そうですね」

「ん? さっきまでレオ様に倒されて転がっていたトロルド達はどうしたのですか?」

「クレアお嬢様、そのフェンリルの様子を見てる間に私達が片付けました」

「さすがにあの氷漬けのは動かせませんでしたが、レオ様に切り裂かれたのなら、あちらに穴を掘って埋めました」


 いつの間にそんな事をしていたのか。

 俺とレオ、クレアさんとセバスチャンさんが、瀕死のフェンリルを見ている間に護衛の二人はそんな事をしてくれていたようだ。

 まぁ、魔物の死体がそこらに転がってるってのはあまり見ていたくない光景だからな。

 氷漬けのトロルドだけは最初の場所にいたままになってるが……。

 あれ……いつ氷が解けるんだろう……。


「気持ち良さそうに寝ていますね」


 トロルドの氷を見ながらそんな事を考えていると、怪我が治ったフェンリルの様子を覗き込むように見ていたクレアさんが言った。


「そうですね」


 レオが自分の毛で守るように包み込んでるフェンリルに顔を近づけてみる。

 さっきまでは苦しそうでか細い呼吸をしていたフェンリルは、今は怪我の痛みや出血が止まったおかげか、安らかな寝息を立てている。


「怪我が治ったとはいえ、消耗した体力は戻っていないのでしょう」

「このまま寝かせておきましょうか」


 怪我を治す薬草は使ったが、体力を回復させるような効果は無かったようだ。

 ……怪我が治っただけでも良しとしよう、寝ている時に無理矢理薬草を食べさせるなんて事はしないでも良いだろう。 


「ワウ……ワウワウ」

「ん? レオ、どうした?」


 俺達は怪我の治ったフェンリルに安心して、引き上げようとしていたところだった。

 そろそろ引き返して野営地に戻らないとまずい時間だしな。

 クレアさんとセバスチャンさんが空を見上げながら日の位置を確認している。

 だが、レオはそれを引き留めるように鳴いた。


「ワウワウ……ワフー」


 俺達に顔を向けて鳴いた後、レオ自身で包んでるフェンリルに顔を寄せて一声上げながら、フェンリルの毛を口で咥えて持ち上げるような仕草をする。


「……連れて行きたいって事か?」

「ワフワフ」


 頷くレオ。

 連れて行くか……フェンリルって人といても大丈夫なのか?


「……クレアさん、セバスチャンさん」

「何でしょうか?」

「どうしました?」


 二人は空を見上げて日の位置を確認していたのを止め、俺に顔を向ける。

 レオがフェンリルを連れて行きたいと考えてる事を二人に伝えた。


「レオが、このフェンリルを連れて行きたいようなんです」

「レオ様が……フェンリルをですか……」

「……私は賛成です」

「クレアお嬢様。このフェンリルは今寝ているから私達も近づけますが、本来獰猛な魔物なのですよ? 目が覚めたらどうなるか……」

「でも……このままここに居たらまた魔物に襲われるかもしれません」

「それは……そうですが……」

「ワフワフ、ワフーワウワウ」


 レオもクレアさんを援護するように声を出す。

 仕草でも、前足を上げたり、首を振ったり頷いたりとフェンリルを連れて行っても安全だと伝えたいようで、包まれているフェンリルを起こさないように気を付けながら一生懸命ジェスチャーをしてる。

 今更だが、ジェスチャーをする犬って……いや、シルバーフェンリルなんだがな。

 レオのジェスチャーってたまにコミカルな動きをするよな……何て考えながら、セバスチャンさんにフェンリルを連れて帰る事に賛成する事を伝える。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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