エッケンハルトさん達のお見送りをしました
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書籍版第1巻、大好評発売中!
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「私もそろそろ孫の事を考えておかねばならぬな、はっはっは! それではな!」
「「「「「公爵家当主、エッケンハルト・リーベルト様!! 行ってらっしゃいませ!!」」」」」
「……出立!」
エッケンハルトさん、最後までクレアをからかって行ってしまった……。
クレアと俺の新居だなんて……間違いではないんだけど、誤解を招く言い方のうえに孫なんて……ほら、クレアの顔が真っ赤になってるじゃないか。
笑いながら馬で去っていくエッケンハルトさんの後ろ姿は、何処から見ても悪人にしか見えなかったが、それはともかく、ここでも使用人さん達による一斉に声をかけての見送りが行われていた。
やっぱりこれ、公爵家の伝統か何かなんだろうなぁ……あ、ハンネスさんやロザリーちゃんは見た事があるからいいけど、他の村人さん達が驚いていた、犬達もか。
いきなり声を揃えて叫ばれたら、誰だって驚くか。
「それじゃ、僕達も出発するよ、タクミ君」
「ユートさん。あぁ、元気で」
エッケンハルトさんを見送った後は、ユートさんの見送り。
こちらは、ラクトスを経由せずに各貴族領を回って行くようだから、長い旅になるんだろう。
ちなみに、大きな森や山が邪魔をして、ラクトスを経由しないとこちらから王都へはかなり遠回りになるらしく、通常の旅なら大きく迂回して移動しないといけなくなるらしい。
昨日聞いてみたんだが、道程を短縮するために道なき道や森とか山も関係なく進むため、ついて行くルグレッタさんは大変らしい……何かあっても、ギフトと魔法でなんとでもなる、と気軽に言っていたから問題はないらしいけども。
「うん、タクミ君も。久しぶりに同郷と会えて嬉しかったよ」
「こっちこそ。まさか王家だとか、そういう人物が同郷だとは思わなかったけど……でも、嬉しかった」
こちらの世界に来て、レオがいてくれたり公爵家の人達やラクトス、ランジ村の人達がいて、寂しいとまで思う事はなかったけど、やっぱり同じ出身の人がいたんだとわかったのは大きい。
心細いわけじゃないが、知らない事が多い中で日本の事を共有できる人がいるというのは、やっぱり安心感があるからな。
「まぁ、大丈夫だろうけど、気を付けて。またいつか会えるのを待っているよ」
「旅を楽しみながら戻るよ、もちろん注意は怠らないつもりだけどね。……あ、そうだ」
「ん?」
笑い合い、握手をしながら声をかけあっていると、何かを思い出したらしいユートさん。
何か俺に伝え忘れた事でもあるのかな?
「ハルトも来るみたいだけど、タクミ君の家ができたら遊びに来るよ」
「……えーと、大丈夫?」
遠回りまでして、各貴族領を回ってからと言っていたから、かなりの期間旅をすると思っていたんだけど……それこそランジ村での薬草畑ができるまでには、まだ旅の途中だと思っていたくらいだ。
「なんとかなるよ。ルグレッタには申し訳ないけど、近道をするからね」
「はぁ……もう慣れましたが、もう少しまともな道を通る事を覚えて下さい、閣下。面白そうというだけで、獣道すらない場所や断崖絶壁を走ったりするのはさすがに……」
「あはははは! でも、楽しいからやっちゃうんだよねぇ」
「いや、断崖絶壁って……」
ユートさんの近道という言葉に反応したのか、溜め息を吐きながらクレア達と挨拶をしていたルグレッタさんが、会話に参加してきた。
というより、ユートさんへの文句かな?
獣道がなくても一応歩く事くらいはできるだろうけど、断崖絶壁を走るなんて人間には無理……あぁ、それも魔法とかギフトの力でなんとかするんだ……俺よりよっぽどすごい能力だよなぁ、ユートさんって。
強さを競う趣味はないから羨ましく思えないけど、ユートさんがやってきた事や、やろうとしているのが常人とかけ離れているせいもあるのかもしれない。
「それじゃタクミ君、またねー!」
「失礼いたします、タクミ殿、クレア殿。お世話になりました、ランジ村の方々……」
「はい、二人共お気をつけて!」
「ワウー!」
「お気をつけて、ユート様!」
元気よく走り去っていくユートさんと、それを馬に乗って追いかけるルグレッタさん。
最初に向かう方向が同じらしく、この後先に行ったエッケンハルトさんと合流するらしいけど……なんでユートさんだけ馬に乗っていないのか、疑問に思ってはいけない気がした。
遠目で砂ぼこりを巻き上げながら、激走しているようにも見えるけど……見なかった事にしよう、ギフトや魔法関係だろうけど、よくわからないからな。
「……少し、村が静かに感じるかな?」
エッケンハルトさんとユートさんがいなくなったランジ村は、なんとなく静けさを感じた。
「ユート様もいましたけれど、お父様がいましたからね。うるさいとは言いませんが、少々騒ぐ事が多かったですね。……タクミさんまで、私の事をからかっていましたし……」
「あはは……まぁ、クレアが可愛い反応をするので、つい」
「か、可愛いだなんてっ! ……そんな言葉では誤魔化されませんよ?」
ジト目で俺を見るクレアに、とりあえずおだてておこうと思ったら、誤魔化すつもりだとバレてしまった。
からかい過ぎて耐性ができてしまったかも? とも思うが、可愛いと思っているのは本当の事だ。
まぁ、ほんのり頬が赤くなっている気がするので、完全に慣れたわけじゃなさそうだな……俺も同じく少し顔が熱いけど。
……他の人がいない状況でからかうのは、俺にはまだ少し難易度が高かったかもしれない。
「ワン! ワン! キャン!」
「おっと、静かだと思ったらお前がいたな」
「ワフワフ!」
「パパー!」
「おっと! ははは、レオやリーザもいるから、静かだなんて感じている暇はなかったか」
「ふふふ……皆タクミさんは慕っていますね」
足元で吠えられたと思ったら、マルチーズが俺の足に前足をかけ、抱いてくれとせがんでいた。
抱き上げて撫でていると、レオが横でお座りして自己主張しながら、リーザも駆けて来て全身でぶつかってくる。
全力というわけじゃないみたいだけど、マルチーズを落っことしそうになるから、いきなりぶつかって来るのは止めような?
レオを撫で、時折リーザの頭を撫でてやると満足したのか、他の子供達の方へ駆けて行く……元気だなぁ。
マルチーズだけは、俺に抱かれて落ち着いているのか、そのままだ……なんというか、この世界に来る前のレオを思い出してしまうなぁ――。
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