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雇う人員について提案しました



「しかし旦那様、宿を作るとなればその宿を管理する者が必要です。建物を作ってそこに泊まれ、というだけではいきませんからな。新しく別の者も雇うように致しますか?」

「ふむ、そうだな……職にあぶれている者はいるのだから、探せばすぐに雇えるだろうが、信頼できるかどうかが問題になるな。多少素行が悪い程度ならともかく、客に迷惑をかけるような人員は、村の評判だけでなく領内の評判にも響くだろう。近くにクレアがいるのだから尚更な……」


 いや、素行が悪いのも、客商売になるから駄目だと思うんだけど。

 俺が日本の旅館やホテルでの、丁寧な接客を想像しているからだろうか、雇う人材に関してエッケンハルトさん達の考えと隔たりがあるように思えてならない。

 まぁ、そこはいずれ擦り合わせるとして……雇う人員については心当たりがある。

 少し前に思いついた事だけど、これなら問題にはなりそうにないし、向こうも余裕ができてくれるだろうな……断られなければだけど……。


「すみません、エッケンハルトさん、セバスチャンさん。人員について考えていた事で相談があるのですが……もちろん、クレアにも」

「ほぉ?」

「タクミ様が考えている事ですかな?」

「私にも、ですか?」

「僕にはないの?」


 いや、ユートさんはここで会ったばかりだし、相談できる事じゃないと思うから一切ないんだけども。


「えーとですね、屋敷の使用人さんはラクトスの孤児院から雇っていると聞きました」

「うむ。まぁ、クレアが直に見て、雇うに足るかどうかを判断しているのだがな」

「そうですな。本邸から来た者もおりますが、最近ではラクトスより雇うようにしております。孤児院から雇う人物の方が、尽くして下さる方が多いというのが、今までの経験則です」

「孤児となった事情は様々ですが、孤児院で育てられている以上、ちゃんとした身元の保証にもなりますから」

「はい。それでですね、リーザを見つけた時に知ったんですが、今ラクトスの孤児院は人が多くて困っているようです……」

「それは聞き及んでおります。ですので、タクミ様が屋敷の者より人員を雇った場合、孤児院にいる者で希望する者は、雇い入れようと考えています」

「でも、それだけだとそんなに多くはないですよね?」

「そうですね……私やタクミさんが新しく雇う人数にもよるとは思いますが、数人……多くとも十人といったところでしょう」


 十人か、何も知らない子達……いや、雇うのは基本的に十五歳以上で、この国では成人扱いになるから人達か。

 俺が雇う人数、クレアが雇う人数は決まっていないが、だからと言って全てを孤児院からというわけにはいかないだろう、ある程度は仕事内容に関して知識を持っている人が欲しいのと、俺やクレアだけで全員に説明して教えるのは難しい。

 それに、十人くらいだったら孤児院に多少、新しく子供が入れる余裕ができたとしても、スラムの事を考えるとまだまだ足りなさそうだ。


「その……孤児院の人達の中で、ランジ村に来てもらえる人を募るというのはどうでしょう? 俺やクレアが雇ったり、屋敷で雇うのは別に、です」

「ふむ、新しく作る宿屋で働いてもらうという事だな?」

「はい。そうしたら、もっと多くの人が働けますし、孤児院にも余裕ができると思うんです。それと……そのできた余裕で、以前の子供達……いえ、少年くらいで小さくはありませんでしたけど」

「ディームの時に、衛兵が保護した少年達ですな?」

「そうです。あの子達もそうですし、同じくスラムにはまだまだ子供がいると思うので……そういった子達を余裕ができた孤児院に、というのはどうでしょうか?」


 最初は、俺やクレアでできるだけ孤児院から雇って、少年達を代わりに孤児院へと考えていたけど、宿屋がランジ村にできるのなら人手は多い方がいいだろうから、いい機会かもと考えた。

 さすがにいきなり専門職に……というわけにはいかないが、働き口を紹介するだけで孤児院から出る人だっているはずだし、その働き口は多い方がいい。

 もちろん、無理に働かせたり、体を壊すような扱いをするところは紹介したくないが……というのは、俺自身の経験からだな。


「……セバスチャン、スラムにいる子供の数は把握できるか?」

「いえ……大まかにはわかっても、人の出入りが激しい街なので、正確な数はなんとも。ですが、これはスラムに住み着く子供を減らし、後々にはスラムの範囲縮小にも繋がるかと思われます」

「そうだな。厳しく取り締まり、私が力を持って介入すれば、一時的にスラムはなくなるだろうが……またいずれできてしまうだろう。それでは根本的な解決にはならん。特に、ラクトスのような街はな。だがタクミ殿の案は、すぐにスラムをどうこうするわけではないが、少しずつでも改善するような案に思える」

「孤児院の人達を公爵家で雇う事で、少しでも子供達が安全に、そして働き口を増やす意味もあったのですけど……タクミさんの案はそれ以上ですね。今まで、公爵家は直にラクトスに対し、表立って対策を講じてはいませんでしたから」

「まぁ、クレアやティルラが近くの屋敷にいる事で、スラムも含めて睨みを利かせている状況にはなったがな。多少は、働き口を紹介する事もあったか。だが、それを快く思わない者もいるからなぁ……スラムの者達も含めて、不公平であるとな。だが、今回の案をうまく使えば……」

「公爵家ではなく、タクミ様がという事や、ランジ村でというのも良いですな。大々的に多くの人員を雇い入れるような場所の紹介は、さすがにできませんでしたが、これなら可能になるでしょう」

「えぇ、さすがタクミさんですね。ラクトスの問題を解決とまでは言いませんが、良い方へと向かわせる案の提示をして下さいました」

「いえ、俺はただ、人を雇うのであれば孤児院から雇って、余裕を作れれば……と考えていただけなので、問題の解決とまでは考えていませんでした」


 俺の提案は、クレアやセバスチャンさん、エッケンハルトさん達が考えていながらも、公爵家が表だって動くと、やっかむ者や不公平に思う人が出てしまうため、実行できなかった案らしい。

 まぁ、俺自身公爵家と深くかかわっているから、絶対に不満が出ないわけではないと思うけど、クレア達からの実行案よりは、少なくなるんだろう。

 いつの世にも、権力者が相手というだけで反感を持つ人間がいるのもだからな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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