トロルドが出た理由をラーレに聞きました
「ラーレのいた山と繋がっているなら、ラーレに聞いたらわかるかもしれませんね。レオ、呼んでくれるか?」
「ワフ。アオォォーーン!!」
「……キィー!」
「どうしましたかー?」
「せっかく気持ち良く空を飛んでいましたのに……何かあったんですの?」
レオに頼んで、ラーレを呼ぶ遠吠えをしてもらう。
何事かと、エッケンハルトさんやクレアさんだけでなく、他の護衛さん達も驚いてこちらに顔を向けた……ごめんなさい、急過ぎました。
あ、でもクレアさんからの注意が逸れて、エッケンハルトさんは少し嬉しそうだ。
空を飛んでいたラーレが、鳴き声を発しながら近くに降り立ち、鞍に座ったままのティルラちゃんとアンネさんから声がかかる。
アンネさん、心配したけど楽しそうな様子だから、大丈夫みたいだな。
セバスチャンさんと違って、空を飛ぶのは問題ないようだ。
あくまで、馬車に乗っている時の揺れで酔ってしまったんだろう。
「えーと……ラーレ、ちょっと聞きたいんだが、いいか?」
「ワウ?」
「キィ!」
「……とりあえず、ティルラちゃんとアンネさんはラーレから降りようか。その方が話しやすいだろうし……。それでだな、ラーレの住んでいた山と、あっちの森は繋がっているらしいんだが……」
降りてきたラーレに声をかけるのと一緒に、レオからも問いかけるような視線と首を傾げる仕草。
俺というよりも、レオに対して「なんでも聞いて下さい!」と言わんばかりに、翼を上げ、敬礼っぽい仕草をするラーレ。
急に姿勢を変えたものだから、乗っているティルラちゃんとアンネさんが、地面に背中を向けている状態になって、苦しそうだ。
鞍があって固定されているから、落ちはしないようだが、そのままじゃ話しづらそうだったので、ラーレから降りてもらった後、山と森、トロルドについて聞いた。
「ふむ、成る程……そういう事ですか」
「シルバーフェンリルって、存在するだけで影響があるんですねぇ」
「ワウー……ワウワウ!」
「わかってる。レオは何も悪い事はしていないからな、よしよし」
「ママー、よしよしー!」
セバスチャンさんが納得して頷くのに対し、俺はレオが悪いわけじゃないからと抗議するように鳴くレオを撫でて慰める。
リーザも俺の真似をして、背中に乗りながら抱き着くようにして撫でていた。
レオやリーザ、ティルラちゃんを介してラーレに聞いた話では、もしかするとシルバーフェンリルが近付いたからかもしれないとの事だった。
ラーレも、山にいたから森の状況を詳しく知っているわけじゃないらしいが、シルバーフェンリルであるレオが森に近付いた事で、一部の魔物が気配を感じて騒ぎ始めたのかもしれないらしい。
そのため、トロルドが追いやられて森から外へ出たのだろうという予想だった。
前回、俺が一緒じゃない時もレオはこの道を行き来していたはずだが、その時は今回のようにゆっくり移動せず過ぎ去ったから、トロルドや他の魔物が森から出る前に収まったのではないかと。
まぁ、フィリップさんを乗せた時は、括り付けて走っていたし、セバスチャンさん達を乗せて屋敷から走って駆け付けてくれた時は、休憩すらしなかったらしいからな。
俺との時や今回は、休憩したり馬の速度に合わせたりと、ゆっくりだったからトロルドが森の外に出て来る余裕があったわけだ。
森にいるレオの気配を感じて騒いでいた一部の魔物にとっては、余裕どころか焦りしかなかったのかもしれないけどな。
「一度、森の中を捜索する必要がありそうですな。この道は、ラクトスと繋がる道なので、そこに魔物が頻出するというのは少々問題です。いつもレオ様や、ラーレがいるわけではありませんから。トロルドならば、ある程度の兵士を集めれば対処できるでしょうが、他にも魔物はいるでしょう。無辜の民が襲われてはなりません。」
「そうですね。それに、薬草畑で作った薬草を輸送するには、この道を通る事が多いでしょうから」
「はい。ラーレにも協力してもらう事になるかもしれませんが、屋敷に戻ったら、一度検討いたしましょう。元々、ラーレのいた山に向かう準備を整えようとしていたので、森の方へ向かわせられるでしょうから」
今回はレオやラーレ、それに護衛さん達もいるから、トロルドが出て来ても問題はなかった。
けど、ただ通るだけの商隊が襲われたら危険だからな。
森にはトロルド以外にどんな魔物がいるのかはわからないが、これからも使う道であるのは間違いないし、調べておくに越したことはないだろう。
薬草を運ぶために使ったりもするんだし、ランジ村に近いから、村がまた魔物に襲われてしまうのも防ぎたいからな。
こちらの森にも、話がわかるフェンリルとかがいてくれれば、楽なんだけどなぁ。
「それではタクミ様、クレアお嬢様、本日はここで野営となります」
「はい。それじゃあ……レオやリーザと一緒に、焚き火に使えそうな枝を拾って来ますね」
「私は……アンネと話しておきます。ラーレに乗れた興奮で、他の作業を邪魔しそうですから」
トロルドを護衛さん達が片付けた後、再びランジ村に出発し、日が落ちて完全に暗くなった頃に野営の準備へ取り掛かる。
暗くなっての移動は、馬も馬車も危険が伴うから。
無理をしたら走らせられるんだろうけど、急いでいるわけでもないからな。
馬も休ませないといけないし、護衛している人達も含めて、人間だって休まないといけない。
止めた馬車を降りたところで、セバスチャンさんと話してクレアさんとは別行動となる。
アンネさん、先にラーレから降りてさっきから興奮気味に空を飛ぶ事の素晴らしさを、言って回っているからな……。
馬が走る速度と同じくらいだったからか、それとも適性があったのかはわからないが、アンネさんはラーレに乗るのを気に入ったようだ。
クレアさんが止めに向かうのを見ながら、レオとリーザの方へ。
ちなみにエッケンハルトさんは、既にレオから離れてラーレの方に向かっていた。
空を飛んだ感想を、ティルラちゃんに聞きたいんだろう。
ともあれ、俺は枝拾いをしないと。
森が近いから、ここでも枝はすぐに拾えそうだ……雨で濡れていなければだが――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。







