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街の人からはレオが人気でした



「それで、今日はどうしたんだい? リーザの笑顔が見れたから、楽しく過ごしているのはわかるけど、何か用かい?」

「いえ、これからランジ村へ行くので、あまり長居はできないんですが、街に寄ったので顔を見せておこうかと」

「そうかい。またランジ村にねぇ、忙しいようだね……」

「お婆ちゃん、お婆ちゃん」

「ん、なんだいリーザ?」


 用という事はなかったんだが、イザベルさんは以前もリーザの事を気にかけていたようだし、顔見せはしておかないとと思っていた。

 あとは、イザベルさん一人でやっている店のようだから、寂しかったりしないだろうかという心配も含めてだな。

 初めて来た時、用が終わったらすぐに店を出ようとした時、少し寂しそうな表情をしていたようだし。

 それに、初めて見たら怪しさ大爆発な店の外見で、今もお客さんがいないようだから、人で賑わっているという事はなさそうだから……というのは失礼過ぎるか。


 ……いや、レインドルフさんは来ていたようだし、セバスチャンさんも時折来ているようだから、実は結構お客さんが来ていたりする事もあるのかも?

 とりあえず、お茶をすぐに用意してくれたんだから、喜んでくれているだろうと思う事にし、楽しそうにイザベルさんに屋敷での事を話すリーザを眺めて邪魔しないようにする。


「そういえばタクミ、話は聞いたよ?」

「……えっと?」

「ディームの事さ。スラムで幅を利かせていたようだからね。レインドルフの心残りを、一つ解決したようだね」

「あぁ……あはは、イザベルさんも聞いたんですね。しかし、レインドルフさんの心残りですか?」

「ラクトスの街は、その話で持ち切りだよ。治安が悪いとは言えないけど、いいとも言えないこの街も少しは安心できるってね? レインドルフの方は……そうさね、この店に来る時に何度か言っていたんだよ。リーザがいるのに、スラムは治安が悪くてそれを助長する者がいるって。……スラムの治安が悪いのは、当たり前だろうに……」

「そうなんですね……」


 イザベルさんにまで届いているという事は、本当にこの街全体に俺の事が広まっているのかもしれない。

 店をやっている関係上、そういった話には敏感なのかもしれないけど。

 ともあれ、レインドルフさんの心残りか……イザベルさんの言うように、スラムなのだから治安が悪いのは当たり前のような気もする。

 スラムを単純な貧困層の住む場所として捉えるなら、治安が悪くない所もあるのかもしれないけど……困窮しているから、治安が悪くなり街での評判も悪くなり、といった悪循環も生まれたりもするだろう。


 なんにせよ、スラムというイメージからいい印象はない。

 この街のスラムがイメージ通りかどうかまではわからないが……エッケンハルトさんと行った時は、急に襲われたりとか、絡まれたりする事はなかったか……。

 ……レオが俺やエッケンハルトさんと離れず、ピッタリと一緒にいてくれたおかげなのかもしれない。

 そう考えると、後ろの方にいたせいか初めてこの街に来た時、ニックを含めた集団に絡まれたのは、運が悪かったのかもなぁ。


「ねぇねぇ、お婆ちゃん……」

「おっと、なんだいリーザ……」

「リーザは、本当にイザベルさんに懐いているなぁ」


 俺と出会う前から知り合っていた、というのが大きいのかもな。

 イザベルさんが俺と話をして、そちらに集中すると、気を引くようにして袖をクイクイと引っ張り、リーザが話し始める。

 楽しかった事を、大好きなお婆ちゃんと共有したいんだろう。

 ランジ村の子供達と仲良くなって、リーザがこれからもっと楽しく感じてもらえるといいな。


「それじゃ、また来ます」

「またねー、お婆ちゃん」

「あいよ。できれば次は、何か魔法具を買って欲しいね。――リーザは何も気にせず、いつでも来ていいからね?」

「うん!」

「ははは……考えておきます……」


 しばらくイザベルさんと話して、席を立つ。

 初めて来た時は、ギフトについて調べるためだったが、それ以外では話をするだけで、ほとんど冷やかしに来ているようなものだ。

 魔法具を扱うお店なのだから、本来は買い物に来る場所だ……今度来る時は何かを買った方がいいだろうな。

 というか、魔法具ってどんな物があるんだろう……? また来た時に聞けばいいか。


 やっぱり、俺とリーザで対応が違うイザベルさんに苦笑を返しつつ、店を出てレオや護衛さん達と合流した。

 次は、ハルトンさんの仕立て屋だな。

 ゆっくりし過ぎたかもしれないから、少しだけ急ごう。

 ティルラちゃんやセバスチャンさんを待たせたら、悪いからな。



「ティルラちゃん達、まだかなぁ……」

「すみません……触ってみても、いいですか?」

「あぁはいはい。大丈夫ですよー、ゆっくり撫でてやって下さいねー」

「ワフゥ」


 ハルトンさんの店の近くで、レオと一緒にティルラちゃん達が来るのを待っている。

 その間、代わる代わる街の住民がレオに触りに来ていた。

 最初は、ディームに関する評判だとか、目立つレオを連れているから遠巻きに見られているだけかと思ったんだが、母親に連れられた女の子が触ってもいいかと聞いて来た事から、こんな事になっている。

 なんでも、多くの人がレオに触ってみたかったんだとか……女の子がレオを撫でている間、申し訳なさそうにしている母親から聞いた話だ。


 まぁ、レオは子供好きだし、毛を引っ張ったり無茶な事をせず撫でられるのは喜んでいる様子なので、待っている間順番に触らせていた。

 そういえば、初めてこの街に来た時も似たような事があったなぁ……あの時は確か、最初のきっかけはエメラダさんって女性からだったっけ。

 レオも着実に、ラクトスで受け入れられているんだと喜んでおこう。

 リーザに石が投げられた時は怒ったりもしたが、暴れたりせず大人しくしているのを見て、皆慣れ始めているんだろうな。


「お待たせしました、タクミ様」

「お待たせしましたー。レオ様、タクミ様」

「あぁ、セバスチャンさん。ティルラちゃんも。少し遅かったようですが、何かありましたか?」

「……いえ、何もありませんでした。少々街に入るのに手間取っただけです」


 レオを撫でに来た人が十人を越えた辺りで、セバスチャンさんとティルラちゃんが護衛さんを伴って合流した。

 イザベルさんのところで少し時間を多くとって、むしろ俺が遅れたと思っていたのに、セバスチャンさん達の方が遅れたので、何かあったのかと疑問に思ったんだが……俺からの問いには視線を明後日の方に向けて答えている。

 ……何かあったかな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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