カレスさんにニックの事を聞きました
「おぉ、タクミ様。ようこそお越し下さいました」
「カレスさん。お世話になっています」
「なんのなんの。お世話になっているのは私どもの方ですよ」
ニックと軽く話していると、店の中から俺が来た事に気付いたカレスさんが出て来る。
薬草を売ってくれるカレスさんのような人がいてくれるから、俺も安心して薬草を作れるんだから、挨拶はしっかりしないとな。
「……?」
「あぁ、リーザは初めてだったな。こちらはカレスさん。俺が作った薬草を売ってくれる、凄い人だぞ?」
「その方がリーザ様ですね? セバスチャンさんから聞いております。――初めましてリーザ様。タクミ様の作りだす薬草を、街の者へと届けさせて頂いております、カレスと申すものです」
「……んー?」
「リーザ、自己紹介だぞ?」
「あ! えーっと、リーザ……です。よろしく、お願いします!」
「はい、よろしくお願いします」
俺の服を引っ張りながら、首を傾げて不思議そうにカレスさんを見るリーザ。
そういえば、以前に街へ来た時はカレスさんの店には来なかったから、会うのは初めてか。
まずはカレスさんに紹介し、リーザにも自己紹介するよう促す。
立派に自己紹介できたリーザには、帽子越しに頭を撫でて褒めておいた。
「あ、そうだ。カレスさん、ちょっといいですか?」
「はい、なんですかな?」
カレスさんを手招きして、少しだけニックと離れる。
「ニックですけど、真面目に働いていますか?」
「はい。以前騒ぎを起こしていたというのが、信じられなくなる程真面目に働いていますよ。生活が安定する事で、騒ぎを起こそうという気もなくなっているようで……いやはや、タクミ様の慧眼にはおそれいるばかりです」
「いや……そこまで深く考えていたわけじゃないんですけどね……」
ニックの勤務態度をカレスさんにこっそり聞くと、ちゃんと真面目に働いている模様。
多少は騒ぎを起こしたりして、俺がカレスさんに謝る事も考えていたんだが、これは予想外だ。
俺はただ、騒ぎを起こしたらすぐに処罰……というのがかわいそうかな? と思っただけだからな。
まぁ、お金がない事が騒動を起こす事にも繋がっていたようだから、給料を払って生活できるようになれば、ある程度は真面目にして働いてくれるよう、期待はしていたけども。
ともあれ、大きな騒ぎも起こさず真面目に働いているようなら何よりだ。
ディームを捕まえた時に会って話したが、今までの行いは反省しているようだし、迷惑をかけた人には謝罪したらしいから、やっぱり人は見かけで判断しちゃいけないという事なんだろう。
……初めて会った時とか、反省したり真面目な様子なんて一切感じられなかったからな。
「そういえばタクミ様、聞きましたよ? あのスラムで誰も手に負えなかった者を、捕まえたそうですな?」
「あぁ、はい。まぁ、俺だけじゃなくてレオのおかげが大きいですけど」
「衛兵達や、その場で見ていた他の者……まぁ、これはスラムの者達ですが……そこから評判が広まって、今やタクミ様はラクトスで人気のようです。おかげで、関わりがある私の店も良い影響が出ておりますよ」
「そうらしいですね……」
「おや、人気になるのはお嫌で?」
「いえ、そういうわけじゃないんですが……初めての事ですし、しばらくラクトスへ来ていなかったので、まだ実感が」
「はっはっは、それでは、街の中を巡ってみるとよろしいかもしれませんな。全てが……というわけではないでしょうが、多くはタクミ様、そしてレオ様を歓迎してくれますよ」
「だといいんですけどね……ははは……」
ディームを捕まえた事が評判に……というのはゲルダさんから聞いていた。
けど、そう言われても今までそういった事を経験していないから、よくわからないのが本音だ。
ランジ村や屋敷では、確かに感謝されたりとかっていうのはあったけど、ほとんどレオのおかげが大きいからな。
というより、ディームに関してもレオのおかげが大きいような……結局ディームに怪我をさせてもその後取り押さえたのは、レオだし……。
……失望されないように、頑張ろう。
「美味しいか、レオ、リーザ?」
「うん、美味しい! ありがと、パパ!」
「ガフガフ……ワウ!」
カレスさんやニックと話して、とりあえず真面目に働いている事を確認。
ランジ村での薬草畑に期待していると言われたが、まだ始まっていないのに気が早いと思う。
まぁ、安定した量を供給できると考えれば、品薄や品切れになる心配も減るのだから、商売をする人からすると、期待してしまうのかな?
とりあえず、街で俺が人気と言われてもよくわからなかったので、とりあえずこれからも頑張るとして、再びラクトス内を移動。
今度はイザベルさんの店に行くため、まずは大通りに出たが、その際にレオが屋台を凝視していたので、仕方なく串に刺さった焼き鳥らしき物を購入。
リーザにも食べさせてやる。
レオもリーザも、尻尾を振って喜んでいるからいいが……あまり食べ過ぎると昼食が入らなくなるから、控えめにな?
折角ヘレーナさんが用意してくれた昼食なんだし、残したら申し訳ない。
ちなみに大通りでは今まで以上に注目されて、屋台の人にもお代は結構ですのでと言われたけど、タダでもらうわけにはいかないので、料金はちゃんと払っておいた。
これも人気になったからだったり、街の人からの感謝なのかもしれない。
銅貨五十枚か……五千円程度と考えるとそれなりだけど、レオが多く食べるし、お金には困っていないから大丈夫だろう。
薬草畑を開始するまでに、食費の事をセバスチャンさんとかに相談しておこう……。
「イザベルさん、いますか?」
「おや? なんだい、タクミかい」
「お婆ちゃん!」
「おぉ、おぉ、リーザも一緒かい。よく来たねぇ」
店に入れないレオを外で待つニコラさん達に任せ、相変わらず怪しい雰囲気の建物へリーザと一緒に入る。
座って売り物と思われる物を、布で磨いていたイザベルさんが俺達に気付く。
俺とリーザで、対応が違い過ぎないかな? と思うけど、リーザはイザベルさんに懐いているし、孫のようなものだと思ったら、こうなるのも仕方ないのかもしれない。
……イザベルさんの年齢を考えたら、俺くらいの孫がいてもおかしくないとは思うけど、実際の年齢は知らないしリーザがかわいいのは間違いないからな――。
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