料理のアレンジはヘレーナさんに任せました
ダンデリーオンに関して、毎日どれだけ飲むかという事以外にも、俺が『雑草栽培』で作る事も決まった。
継続的に飲んでいたら、すぐに足りなくなるだろうというのと、メイドさんからの期待の籠った熱い視線があったせいもある。
手間としては多くかかるわけじゃないから、これくらいは別にいいんだけど……これは、ランジ村でも栽培する事になりそうだな。
販売は特に考えていないが、エッケンハルトさんが飲むなら本邸にも運ばなければいけないし、そちらにいる使用人さん達も欲しがりそうだからなぁ……。
昼食の後は、森へ帰るフェンとリルルを見送った。
二体とも、俺が昼食のハンバーグを作ったと聞いて、しきりにモコモコの毛を摺り寄せていたから、また来そうな気がしてならない。
俺はともかく、レオや屋敷の人達がいいのであれば、来るのは構わないんだが……フェンリルが出入りする貴族の屋敷、というのはどうなのか。
レオやシェリー、ラーレがいるし……今更か。
フェン達を見送った後は、明日出立するエッケンハルトさんとの最後の鍛錬。
特別な事は何もしないが、森での経験を活かして今までよりも、本格的な鍛錬になっている気がする。
基礎的な、体作りに繋がるトレーニング……自重トレーニングとかはそのままだが、俺とティルラちゃんで剣を打ち合わせる事が多かった。
とは言っても、鍛錬なのだから木剣を使ってだ。
森から帰って来てからは、鍛錬に使うのも刃の付いた剣ではなく、木剣を使うようになった。
これも、オークと戦ったりした事での変化の一つだろうな――。
「ハンバーグは、肉を捏ねる時に混ぜるものでも、味が変わります。今回は卵を混ぜましたけど、あれがオークの肉だけだったら、卵なしでもつなぎがいらないと思うので……多分、もっと肉を味わえるようなハンバーグができると思いますよ」
「成る程……自由というか、料理人の腕が試される物なのですね……」
「そこまで大袈裟に考えなくてもいい、とは思いますけどね。あと、焼き方によっても違うみたいですが……こちらは、俺よりもヘレーナさんが考えた方がいいかと。俺は、そこまでこだわって作っていませんでしたから」
明日出立予定のエッケンハルトさんが、鍛錬を少し早めに終わらせて夕食までの空き時間、俺は再びヘレーナさんと話していた。
内容は、昼食時に作ったハンバーグやハンバーガーに関する事。
手順の確認とか、応用ができるかどうかだな。
俺はプロの料理人じゃないので、材料を使って手軽なハンバーグは作れても、アレンジの仕方に詳しいわけじゃない。
焼き方に関しても同様だな。
一応、マルチーズだった頃のレオが、食べられる食材だけを混ぜるようにして、あとは捏ねて焼くだけとの簡単な物だった。
他にこだわる事ができそうなのは……。
「あ、そうだ。ハンバーグが焼けた後、ソースをかけたと思いますけど……」
「はい。前々から私が作っていたソースですね」
「そのソースも、色々な物を混ぜて作ったのだと思いますけど、もっとハンバーグに合うよう改良したりするのもいいかもしれません」
「ふむ……ソースで味を変えるわけですね?」
「混ぜる物によっても、ハンバーグは味や食感が変わりますが、ソースや一緒に食べる物を変えた方が、簡単に変化させられますからね」
ソースに関しては、完全にヘレーナさん任せだ。
日本にいた頃も、手の込んだ事はせず大体市販の物を使っていたから、作り方もよくわからないから。
仕事に忙しくて、時間をかけられなかった事も大きいが、料理にこだわっていない男の一人暮らしなんて、そんなものだ。
レオが喜んで食べてくれるのは嬉しかったが、料理好きというわけでもないからな。
「ハンバーガーの方は、パンの味を変える事でも、違いを出せると思います。あと、挟む物を変えてもいいですね」
「ハンバーグに合う物がいいですよね?」
「そうですね……一見合わない物でも、パンに合う物と一緒ならという事もありますし、ソースで調整する事で、合うようになったりもするかなと。一番シンプルに、ソースをかけたハンバーグをパンに挟むだけでも、十分ですけどね」
「……手抜きは、したくありませんね」
「手抜きと考えるよりは、シンプルな味の追及と考えるといいですかね。ほら、食材が少ない分、ハンバーグやソースの味が大事になりますから」
「確かに、そう考えると腕が試されますね……」
ハンバーグを作るのが少し手間だが、他の物を用意する必要がなくて、気楽に作れるので俺は好きだ。
だがヘレーナさんは、単純なハンバーガーを手抜きと感じたようで、少し不満そう。
料理人の矜持のようなものだろうけど、シンプルな味の追求というのもまた、奥が深い……なんてにわかの知識で言いくるめてしまった。
まぁ、間違ったことは言っていないと思っておこう。
「ありがとうございます、タクミ様。教えて頂いた料理、試行錯誤をさせていただき、より美味しい物を作れるように致します」
「そこまで肩肘張らなくてもいいんですけどね……期待してます」
「はい! また、ソーイを使った料理も考えさせていただきます!」
「……忙しくなってますね、手間を増やしてすみません」
「いえいえ! 嬉しい悲鳴というやつですよ。正直、行き詰っている感じもあったので、とても刺激になりました」
「助けになったのなら、良かったですよ」
素人考えで、素人料理だったけど、ヘレーナさんにはいい刺激になってくれたみたいだ。
ソーイの方は、一応屋敷に備蓄はあったみたいだが、新しい料理を試すくらいの量がなかったらしく、こちらは買って来ないといけないらしい。
試すにしても、今まで使う事の少なかった食材なのだから、試行錯誤をするために多くの量が必要なんだろうな。
このあたりは、俺がエッケンハルトさんとのランジ村視察を終えて、帰って来てからだろう。
ヘレーナさんの頑張りに、期待したい……やっぱり、美味しい物は多くあるに越した事はないから。
「お父様、タクミさん、ラーレに許可が取れました!」
「ん、許可?」
ヘレーナさんとの話を終え、夕食を食べるため食堂に集まる。
朝食と昼食は裏庭だったが、夕食は屋敷の食堂だ。
さすがに、外で食べるには暗いから。
……蝋燭の明かりで照らされる中での夕食、というのも雰囲気があって、良さそうではあるがな――。
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