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新しいお茶が出てきました



 皆の様子を見ると、女性の方が手で掴んで食べる事に抵抗があるように見える。

 ティルラちゃんは怒られる方を気にしているようだから、ちょっと違うかもだが。

 これはちょっと失敗したかな? もう少し食べやすい物にしたら良かった……少なくとも、ナイフやフォークを使って食べるような料理……ハンバーガーではなくハンバーグのままとか。


 ハンバーガーもナイフで切り取って……という食べ方もできるだろうけど、パンが厚めな事もあって崩れないように切り分けるのは、ちょっと難しそうだ。

 チーズのおかげで、具材とくっ付いているけど、切り分けようとしたらどうしても崩れてしまうだろうしな。

 ふむ……あぁそうだ。


「すみません、ヘレーナさん」

「はい、なんでしょうか?」

「えっと……」

「畏まりました……」


 ハンバーガーを食べた皆の様子が気になるのだろう、料理を運んできたまま近くにいたヘレーナさんに頼んで、至急ある物を持って来てもらう。


「ありがとうございます。えっと……これでこうして……はい、クレアさん。これで、ナイフやフォークを使っても、崩れたりしないですよ」

「クレアお嬢様、こちらを」

「ありがとうございます、タクミさん、ヘレーナ」


 ヘレーナさんに持って来てもらったのは、竹串……ではなく細い木の串。

 受け取ったそれを、ハンバーガーの真ん中からお皿に向かって突き刺す。

 これで、ナイフで切り分けても、サレットはともかくハンバーグとパンが崩れるのを防いでくれるだろう。

 クレアさんとアンネさん、それからティルラちゃんも受け取って、串を刺したハンバーガーを切り分け始めた。

 

 一口サイズというには少々大きめだが、なんとか切り分けてパンとハンバーグを一緒にフォークで口へと運ぶ皆。

 すぐに目を見開いて俺を見た。


「美味しいです、タクミさん、リーザちゃん!」

「凄い美味しいです! お肉が、ソーセージとは違うんですねー。それに柔らかいです」

「それは良かった。ソーセージと違うのは、捏ねて焼いてあるから以外にも、卵も入っているからだね」


 アンネさんだけは、気に入ったのか黙々と切り分けて食べ始める事に集中しているが……それはともかく。

 クレアさんとティルラちゃんが喜んでくれて、思わず俺も頬が緩む。

 いや、懐かしい味もあって、元々緩んでいたか。

 ハンバーグを捏ねる時に入れた卵、あれは合い挽き肉のつなぎであるのと、食感がふわっとして柔らかくなる効果もある……というのは、何かの受け売り。


「見た目はそうでもなかったが、食べてみると満足感は高いのだな。美味しかったぞ」

「喜んでもらえて、何よりです。パンもありますし、具材を一つにまとめていますからね」

「チーズと……ハンバーグでしたか? 二つが合わさって、とても美味しかったです。これは癖になりそうですね」

「私も作ったんだよー!」

「リーザちゃん、頑張ったわね」


 ハンバーガーを食べ終え、皆が満足そうにしている。

 パンやハンバーグが大きくてボリュームもあったし、一つにまとめて挟んでいるおかげで、第一印象よりは多く食べられなかったのだろう。

 かくいう俺も、二個食べるのが限界だった……十分か。

 あー、できればポテトも欲しかったけど、それはまた今度にしよう。

 リーザが自分も頑張ったと主張し、クレアさんが目を細めて笑いながら褒めていた。


「旦那様、皆様、こちらタンポポ茶になります」

「うん? 聞き慣れない物だな?」

「タクミ様が作られた、新しいお茶になります」

「ほぉ、タクミ殿が? ……香ばしい香りがするな。いつものお茶とは随分違うようだ」

「タクミさん、これはどのような物で?」


 満腹になり、食後の休憩になった頃合いを見計らって、セバスチャンさんや使用人さん達が、お茶を持って来てくれる。

 それは俺が作った、タンポポの根で淹れられたお茶だった。

 粉末にして渡していたから、早速試飲とばかりに作ってくれたんだろう。

 俺が料理を作るのに、合わせてくれたのかもしれない。


 カップに入っているのは、黒く澄んだ色の液体で、ほんのりとだが俺の知っているコーヒーよりも透明感がある。

 エッケンハルトさんが言うように、香ばしい香りが漂っており、クレアさんやアンネさんも興味をそそられている様子だ。

 いつものお茶とは違う色や香りに、前もって言っていなかった事もあって、驚いているみたいだな。


「えーと、タンポポという花があるんですけど……こちらでは、ダンデリーオンという呼び方ですね。まぁ、分類として雑草だろうと考えて試しに作ってみたら、成功しました」

「ふむ、それは『雑草栽培』でだな?」

「はい。そして、そのお茶は根を乾燥させて粉末にした物を使い、淹れた物となりますね」

「ダンデリーオン……どこかで聞いた事があるような気もします」

「私は、聞いた事がありませんわ」

「遠方の国では、そう呼ばれて見事な庭園となっている所もあるようです。タクミ様の『雑草栽培』で作られたという事は、人為的に作っているという事ではないようですな」


 俺の『雑草栽培』には、作れる植物に制限がある。

 まぁ、元々雑草というくらいだから、農作物とか人の手が入っている植物ができないくらいだけどな。

 それで作る事ができたという事は、ダンデリーオンには人の手は入っていないという事だ。

 その遠くの国で庭園になっているのも、環境が偶然あって多く繁殖した結果なんだろう。


 名称は、クレアさん以外は聞いた事がない様子だった。

 女性だから、花について興味があったり聞いた事や、書物で見かけた事があるのかもしれない……と言うと、花や植物に興味がある男性に怒られてしまうか。

 それに、アンネさんも同じく女性だし……セバスチャンさんが近くにいるおかげで、広い知識が得られていると考えた方が良さそうだ。


「『雑草栽培』という事は、何か薬草としての効果があるのか?」

「うーん、効果が全くないとは言いませんが、他の薬草と同じように考えない方がいいかもしれません。ただいつも飲んでいる、お茶に含まれている物がないというくらいですね」

「ほぉ? その、含まれていないという物は、なんなのだ……?」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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完結しました!
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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 カフェインの説明。 ……セバスさんの出番かな? 興奮(精神高揚)作用があるとかかな?(説明)
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