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622/1996

料理を作る事になりました



「では、私はまずソーイを使った料理を考えさせていただきます」

「はい。俺はタンポポの方を試作してみます」


 ソーイの料理は、ヘレーナさんにお任せだ。

 調理法なんて、料理をしない俺が助言できる事は少ないだろうし、どういった料理にするかはヘレーナさんが考える事だしな。

 タンポポの方は、作れるかどうかを試して、作れるのならそれをヘレーナさんに渡す簡単な作業。

 ……ヘレーナさんに頼りっきりな部分が多い気もするが、元々こういった料理を作れというより、ヒントを与える程度の方がヘレーナさんもやりがいがあるだろうからな。

 という、少ない知識の自分への言い訳だが……。


「あぁ、それともう一つ食材で……」


 ついでなので、こんにゃくについてもヘレーナさんに伝えておく事にした。

 こちらはニャックという呼び名で、こんにゃくを少し言い換えただけの食材となっていたようだ。

 イモ類があれば、こんにゃくもあるだろうと思っていたので、ヘレーナさんも知っていた事には驚かなかったけど……やっぱり、この世界で日本であった物の呼び方がどう変わっているかの、法則が良くわからなかった……。

 ちなみに、ヘレーナさんとの別れ際……「ソーイをソーイ! っと料理して下さいね?」なんて口から出そうになったのを、押しとどめて裏庭へと向かった。

 空気が凍るような事を口走らないように、気を付けよう。



「タクミ殿、ヘレーナに呼ばれていたが、なんの話だったのだ?」

「まぁ、ちょっとした料理の相談? ですかね」


 裏庭に戻ると、先程と変わらずレオ達が遊んでいるのを眺めながら、エッケンハルトさんやクレアさんはゆっくりお茶を飲んでいた。

 ティルラちゃんリーザは、レオ達に混じって遊んでいるみたいだな。

 先程まではラーレとティルラちゃんは別だったのだが、今はなぜかフェンとリルルが後ろ足で立ち、左右からラーレに両前足をかけているという状況だ。

 また、リーザが何か提案したのかもしれないな……手を叩いて喜んでいるし。


「そういえば、聞いた事がなかったな。タクミ殿は料理ができるのか?」

「できなくはない……程度ですかね。ヘレーナさんと比べたら、できると言えないようなものですけど。ただ、知識としての部分で期待されているようで、相談されたりしてますね」

「ふむ、そうか。……クレアとは違うのだな」

「お父様、余計な事は言わなくていいのですよ? ……タクミさんの料理ですかぁ、ちょっと食べてみたいかも……?」


 一人暮らしが長かったから、料理も一応はできる。

 とは言っても、野菜炒めを始めとした、フライパンとかで適当に炒めた大雑把な物ばかりで、ザ・男の料理という物ばかりだ。

 ヘレーナさんのようにしっかりとした料理の基礎や、経験からくる繊細な味の違いなんて、とてもじゃないが真似できないだろうな。

 余計な一言を付け加えたエッケンハルトさんに、ジト目で牽制しながらポツリと呟くクレアさん。


 小声だったけど、今のはしっかり聞こえた……が、男の料理なんて喜ぶものでもないと思うけどなぁ。

 むしろ女性の手料理の方が嬉しい、と思うのは俺が男だからか。


「なんなら、作ってみましょうか? 味の方は……保証できませんが……」

「き、聞こえてたのですね……えーと、タクミさんのご迷惑にならないようなら……」

「ははは、迷惑だなんて。むしろ、ヘレーナさんの美味しい料理でなくて申し訳ないくらいですよ」

「ほぉ、タクミ殿がか。それも面白いかもしれんな。私も、明日にはこの屋敷を去るからな、できれば今日中に食べてみたいものだが……」

「今日ですか? そうですね……大丈夫ですよ」

「……やった!」


 半分くらい冗談のつもりで、クレアさんに提案。

 ヘレーナさんどころか、ライラさんとすら比べられると恥ずかしい程度の料理しかできないと思うんだが……それでも食べたいというなら、作るのもいいかもな。

 食事に関しては、ずっとお世話になっている事だし、恩返しのつもりで……俺の料理の味が、恩返しになるかは微妙だが。

 エッケンハルトさんも興味があるようで、少し考えて了承する。


 今日の予定は特にないはずだし……さっきタンポポを作れるかどうかを話したが、それくらいだしな。

 薬草調合はとりあえずミリナちゃんに任せているし、ラクトスへの薬草は昨日作った。

 もう少し作りたいから、タンポポを試す時に一緒に作ればいいだろうし、昼前にでも作ってみようかな。

 クレアさんが向かいの席で、小さくガッツポーズしていたのがかわいい。

 ……期待され過ぎても、大した物は作れませんよー?


「タクミ殿の料理か……どんな物が出るのだろうな? この世界になかった物という事もあり得るか、楽しみだ」

「いやぁ、そんなに期待されても……料理の腕がいいわけではないので、期待外れかもしれませんよ? それに、こちらの世界で食材があるかどうかわかりませんし……」


 もしかしたら、食材がない可能性はある。

 簡単で大雑把な料理だし、難しい食材だったり珍しい物を使う気はないし使えないので、大丈夫だとは思うが。

 期待しているエッケンハルトさんやクレアさんには悪いが、大したものはできないだろうなぁ。


「ワフ、ワフ!」

「ママー!」

「お、レオどうした?」

「ワフワウ!」

「パパ、ママが急にパパの所に走ったの」

「そうか……そういえば、レオは好きだったなぁ」

「レオ様の好物ですか? ソーセージ以外にも?」

「いえ、好物と言えるのかわかりませんが……以前から、俺が作った料理を喜んで食べてくれていた事があるんです」


 忙しくて、あまり作ってやれなかったけど。

 ソーセージは別格として、レオはドッグフードとかよりも、なぜか俺の料理を食べたがることが多かった。

 ちょっとお高いドッグフードとかよりも、だな。

 とは言っても、あの頃は今みたいに意思疎通はできなかったので、俺が料理をし始めると、尻尾を振ってレオ用のお皿を咥えて持ってくるという具合だった。


 最初の頃は、犬が食べてはいけない物も入っていたので、食べさせずに我慢させていたが、そのうち犬が食べても大丈夫な味付けだったり、食材を使って作るようになってたっけ。

 そうだな……久しぶりだし、レオのためにあれを作ってみるか。

 あれなら、クレアさん達も喜んでくれるだろうし、あまり失敗をするような物じゃない。

 焼き加減に気を付けるくらいだろうが、そのあたりはヘレーナさんと一緒に作れば大丈夫だろうし、この世界にも間違いなく存在するはずの食材だからな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 変なアレンジをしなければ"基本的に"料理は失敗しない……はず?
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