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クレアさんに謝られました



「権力を笠に着て頼み事をするなんて、公爵家として恥ずかしい行いをしてしまいました。それに何より……」

「何より?」

「タクミさんが断れない性格だと知って、それを利用するように強引に誘った自分が許せないんです……」

「そうですか……」


 俺は強引に誘われたとまでは思って無いんだけどなぁ……この森に来るいい機会とも思ってる部分もあったくらいだ。

 まぁ、あの時はクレアさんが恐かったのもあって断れない気がしたが、それでもクレアさんに利用されたとは思わない。

 それに、あの時クレアさんが言ってた言葉を思い出してるけど……クレアさん、権力を笠に着るような事は言って無かったよな?

 俺がそう思ってるだけかもしれないが、クレアさんは公爵家だからと俺に強制したわけじゃない。

 クレアさんはそれでもあの時の行動で、自分を責めてるみたいだ。

 ……とりあえず、一つ一つ答えて行こうかな。

 その前に……。


「レオ」

「ワフ?」


 俺は黙って聞いていたレオに声をかけ、クレアさんに聞こえないような小さな声でレオにやって欲しい事を伝える。

 レオは頷いて、伏せていた体勢から立ち上がり、俺の隣を離れてクレアさんの隣に行く。

 クレアさんの隣に行ったレオは、そこでも伏せの体勢をして座ってるクレアさんの膝に顔を置いた。


「レオ様? タクミさん、これは?」

「とりあえず、レオを撫でて落ち着いてください」

「……はい」


 クレアさんは言われたように、レオの頭を撫で始める。

 すぐにレオのモサモサの毛の感触に癒されたのか、自分を責めて固まっていた表情が和らぐ。


「クレアさん」

「はい……」


 おっと、俺が声を掛けたらまた表情が硬くなったぞ?

 俺にもセバスチャンさんと同じく怒られると思ってるのかな?

 とりあえず、レオを撫でて表情を和らげて下さいねー。


「……えーと、クレアさんは俺に公爵家の権力をと考えているのでしょうけど、俺はそんな事は微塵も感じていません。実際、あの時クレアさんは公爵家として俺に何か言ったわけではないと思っています」

「……」


 よしよし、黙って聞いてるな。

 レオ、そのままクレアさんに撫でられててくれ。

 俺はレオにアイコンタクトを送って、クレアさんへの話を続ける。

 ……レオがアイコンタクトを理解したかはわからないけどな。


「セバスチャンさん達へクレアさんが怒った時は正直、少し怖かったのは否定しません。ですが、それは俺に対してでは無いですし、俺にはその時大きな声を出したと謝りもしてました。俺にはそれで充分だったんです」

「タクミさん……」

「俺が断れない性格を利用してと、先程言いましたが……俺には利用されたという思いはありません。むしろ、俺の方がこの森に来るいい機会だと思ってたくらいですからね。……それに……」

「?」

「美人な女性にお願い事をされるのって、男としては嬉しい事なんですよ?」

「……もう……タクミさん……」


 クレアさんの頬が赤くなったな……俺、余計な事言った?

 まぁいいや、言ってしまった物は仕方ない。

 それに、ようやくクレアさんも表情を崩してくれた。

 美人さんが硬い表情をし続けるのを見るのはあんまりね……。


「……ですが、それで本当に良いのでしょうか?」


 まだクレアさんは自分を責めているようだ。

 ふむ……それなら……。


「なら、クレアさん。クレアさんがこの森に来た理由を教えて下さい。それでこの件はお終いにしましょう」

「……タクミさんがそう言うなら。それに、タクミさんには伝えるつもりでしたので」

「……そう言えばそう言ってましたね」

「あの時はタクミさんとレオ様、それと私だけで行くと考えていましたから、いつでも話せると思ってました」

「あはは、セバスチャンさんやライラさん、それに護衛の人達も一緒ですからね」

「あまりセバスチャンには聞かせたくない話なので……今なら良いですね。皆は寝ていますから」

「そうですね」


 ようやくクレアさんからこの森に来たい理由を教えてもらえる。

 セバスチャンさん達を怒る程、そして俺を少しだけ強引に誘った事の理由……気になって夜も8時間くらいしか寝れなかった……。

 なんて冗談、クレアさんに言うわけでもなく考えてるだけで意味の無い事を頭に浮かべながら、クレアさんが話し始めるのを待った。


「私は……この森に興味があったのではなく、本当に興味があったのはシルバーフェンリルなのです」

「レオとは別の、ですか?」

「そうです。レオ様とは違うシルバーフェンリル……タクミさんの言葉を借りるなら、この世界のシルバーフェンリル……ですね」

「ふむ……何故またシルバーフェンリルに興味が?」

「それは……レオ様と出会ったという事も大きいのですが……」


 そこで一旦話を区切って少しだけ考えるクレアさん。

 その間、レオはおとなしくクレアさんに撫でられたままだ。

 レオを撫でてるクレアさんは、先程までと違って顔には優しい笑みを浮かべてる。

 レオの癒し効果は凄いな……。

 シルバーフェンリルが最強ってもしかしてこの事なんじゃ……なんてつまらない事を考えてるうちに、クレアさんの考えはまとまったようだ。


「私は……産まれた時……正確には物心付いてからなのですが……それくらいから本邸の使用人たちの間で噂が流れ始めました」

「噂ですか?」

「はい。私は、リーベルト家の初代当主様の生まれ変わりではないかと」

「生まれ変わり……何かそう思える事があったんですか?」

「それが……初代当主様の生前の絵が原因だったのです」

「絵……ですか」

「その絵はいくつかあり、初代当主様が成長なさって行く過程を描いた物でした。その中に、産まれてしばらく経った頃の初代当主様の絵がありました。……それが私にそっくりだったんです」

「クレアさんに? ……初代当主様は女性だったんですか?」

「そうです。女性だてらに戦場に立ち、勇猛果敢に敵軍を蹴散らしていたという事が伝わっています」


 初代当主様……女性だったんだな……戦果を挙げたとか言ってたし、貴族になった事から男性だと思い込んでた……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


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