表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

607/1997

レオお楽しみのブラシの登場でした



「はぁ~……」


 どうでもいい俺の疑問も、実際に浸かってしまえばすぐに吹き飛ぶ。

 思わず出る溜め息のような声を発しながら、じんわりと体が温まるのを感じる。


「パパと一緒に入る―!」

「服を着てというのも、楽しいですねー!」

「もう、リーザちゃんだけでなく、ティルラまで……」

「あははは、もう単なる遊びになってますね」


 俺が湯船に浸かったのを見て、リーザが飛び込み、ティルラちゃんもそれに続いた。

 子供達にとっては、水遊びの延長のようになってしまっているようだ。

 困った様子で、ティルラちゃんを見ながら呟くクレアさんだが、その目は優しい。

 無邪気に遊んでいる様子を見るのが、嬉しいんだろう。


「タクミ様、大丈夫ですか?」

「あ、はい。おかげで温まったので、もう大丈夫ですよ」

「良かった……」

「ライラは、少し心配し過ぎではないの? いえ、私も心配はしましたけど……」

「すみません……お世話を任された人が、ご病気になられるといけないと思い、つい……タクミ様、差し出がましい事を……」

「あぁいえいえ、心配してくれたんですから、気にしてませんよ。ティルラちゃん達じゃありませんが……こうして、服を着たままお湯に浸かるのも、楽しいですね」

「……ありがとうございます」


 温まって、体が冷え切ってしまわない事に安心した様子のライラさん。

 確かにクレアさんが言う通り、少し心配し過ぎかなと思うところもあるけど、それだけ真剣にお世話してくれているだけだと考えれば、一切怒る気も沸かない。

 申し訳なさそうに謝るライラさんに、冗談を交えながら笑って大丈夫と伝えた。

 ちなみにリーザとティルラちゃんは、完全に遊びモードのようで、お互いにお湯を掛け合って遊んだりしている。

 まぁ、水じゃないから体が冷えたりしないし、風邪を引く事はないだろうし、服が濡れてそのままというよりはいいのかもな……楽しそうだし。


「……ワフ?」

「あぁ、レオ。放っておいてすまんな。……よし、温まったからそろそろお楽しみの時間だな!」

「お楽しみの時間ですか?」

「何か、レオ様に?」

「どうしたのパパー?」

「他にもまだあるんですか?」


 湯船の端に浸かったままの俺に、顔を近付けて傾げる仕草をするレオ。

 風邪とかひかなそうだが、濡れたまま放っておく事になってしまっていた。

 もとはと言えばレオが原因ではあるが、放っておいた事の謝罪を込めて、丹念に毛を梳いてやるからな。

 クレアさん達はなんの事かわからないようで、首を傾げているけど、すぐにわかる。


「ライラさん、例の物を。……すみません、ブラシをお願いします」

「例の……? あ、はい! 畏まりました」

「急がなくてもいいですよー、足を滑らせたら危ないですからー」

「ゲルダのように転ばないように気を付けます!」


 皆が首を傾げている状況に、少し気分が良くなって格好つけた言い方をしたら、伝わらなかった。

 そりゃそうか……ライラさんはレオを直接洗うのは初めてなんだから。

 バツが悪そうに言う俺に、ブラシの事を思い出したライラさんは、すぐに脱衣場の方へと取りに向かう。

 急いで行こうとしていたので、転ばないよう注意したら、ゲルダさんが例に出てきてしまった。


 うん、俺の前以外でも転んだりする事があるみたいだな……。

 風呂場の床はタイルで、一応滑りにくい材質でできているようだが、それでも濡れているので転んでしまう危険性がある。

 プールの近くで走ったりしないようにするのと、同じだな。

 もしライラさんが転んで、スカートの中が見えてしまったら……という以前に、タイルで勢いよく転ぶとか、危険過ぎるからな。

 ……と、経験者は語る……どうでもいいか……あの時は痛かったなぁ。


「どうぞ、タクミ様。他の皆様も」

「ありがとうございます」


 脱衣場から複数のブラシを持ってきたライラさんは、俺だけでなくクレアさん達にも手渡す。

 前もって頼んでいたから、これでレオの毛をしっかり梳いてやろう!

 お湯と違って、こっちはレオも好きなようだからな。


「よーしレオ、こっちにおいでー!」

「ワフ、ワフ!」

「嬉しそうですね……?」

「はい。レオは風呂嫌いでお湯が苦手ですけど、ブラシで毛を梳かれるのは好きなんです」

「成る程、そうなんですね。……なんとなく、わかる気がします。タクミさんなら、優しくしてくれそうですし……」

「タクミ様、どうやればよろしいのでしょうか?」

「えぇとですね……」

「ブラシー!」

「ブラシですよー。これは髪の毛を梳いたりするものです」

「そうなんだね、ティルラお姉ちゃん!」


 ティルラちゃんやリーザを構っていて、少し離れていたレオにブラシを見せながら呼ぶと、嬉しそうに尻尾を振りながらこちらへゆっくりと近寄る。

 嬉しいのはわかるが、尻尾はまだ濡れてるから……ほら、リーザ達にかかってるぞ。

 まぁ、気持ちが勝手に尻尾を動かしているのかもしれないから、完全に止めることはできないんだろうけども。

 クレアさんがレオの嬉しそうな様子を見て呟いたので、ブラシで梳かされるのが好きな事を伝えた。


 なんとなくわかるというのは、長い髪をした女性だからなのかもしれないな。

 俺なんて、男だからという事も多少あるだろうけど、日本にいた頃から櫛で髪を梳いたりして来なかった。

 ドライヤーでざっくり乾かす程度だな……でもそういえば、散髪をした時とか誰かに髪を梳かされるのは気持ち良かったっけ。

 もしかしたら、クレアさんにもやってあげれば喜んでくれるかな……? と考えたが、なんとなく気恥ずかしい気がして言うのは躊躇われた。


 そうしているうちに、ブラシを配り終わったライラさんが、自分で使うのを持ったままどうやるのか聞かれる。

 近付いて来てお座りしたレオにブラシを当て、手本を見せるようにして皆に教えた。

 リーザはブラシを見た事がなかったらしく、受け取ったまま不思議そうに首を傾げていたが、ティルラちゃんがお姉さんらしく教えていた……微笑ましい。

 けど、一応説明は聞いておいてくれー。


「ワフ~、ワフ~」

「喜んで下さっているようですね、良かった」

「はい。撫でられているのと近いんでしょうけど、気持ちいいんでしょうね。昔から、レオはブラシで毛を梳かすのが好きですから」


 俺達が寄ってたかってブラシを使い、毛を梳いてやると気持ち良さそうな声を漏らすレオ。

 それを聞いて、クレアさんが微笑んで少しホッとした様子。

 昔からブラシは好きだったからなぁ……風呂に入る時はしょんぼりするのに、ブラシを使ってやるとすぐに機嫌が良くなっていたからな。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 レオちゃんは可愛いなぁ……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ