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606/1997

水をかけられるのは宿命のようでした



「さて……最後は問題の顔です」

「……はい」

「顔……」


 さっきまでと違い、少しだけ真剣な雰囲気を出して皆に伝える。

 顔の部分は特に注意しなければいけないからな。

 目や鼻に石鹸が入ってしまうと、レオが痛がったり嫌がったりしてしまう。

 少しくらいなら仕方ないとは思うが、今までずっと我慢してくれているんだから、できるだけ嫌な事はしたくない。


「顔に関しては……レオ?」

「ワフ!」

「レオ様?」

「あぁ、その大きな桶は、そうやって使うのですね」


 レオに声をかけ、たっぷりとした水を入れておいた桶へと促す。

 ようやく口を開けていつもの鳴き声を発したレオは、ゆっくりと顔を桶に近付けて水に浸けて行った。

 桶の中で、レオ自身が顔を動かして濡らすのと同時に汚れを落とす動作。

 意思疎通ができて、自分で動いてくれるのは楽でいいなぁ……以前はこんな事してくれなかったしな。

 その分、大きな体を洗うのが大変だけども。

 

「では、さっきと同じように泡を使って顔を洗って行きますが……鼻と目、口には注意して下さい。泡が入ったりしないように、ゆっくりと洗って行きましょう」

「はい、わかりました」

「畏まりました。レオ様、失礼します」

「スピー」

「あ、あと今は大丈夫ですが、水で濡らして冷たいので、寒い時はそこにも注意して下さいね。無理せず、手が冷たくなり過ぎた時は、お湯で温めて下さい」


 顔の部分は特に注意が必要だと伝える。

 再び目と口を固く閉じたレオが、諦めたような息を漏らすのを見ながら、恐る恐る泡を付けて行く二人。

 ここに関しては、ティルラちゃんとリーザは見ているだけだ。

 二人共、手が小さいから繊細な作業に適任かと思えるが、はしゃいでしまいそうだしな。


 今はおとなしく、濡れて張り付いた毛を触ったりしておとなしくしてもらっている。

 さらに、手が冷たくなった時は温めるように伝えながら、俺も泡を使って顔を洗い始めた。

 屋敷のあたりは温暖な気候だし、今は大丈夫だろうけど、冬になったら手が冷たくてしもやけになったりしかねないからな……その時までレオが水で顔を洗うかはわからないが。

 ……ん、あれ? この世界……というか、この地域に冬ってあるのかな?

 そういえば、気候について聞く事がほとんどなかったな……薬草畑の事もあるし、近いうちに聞いておかないと……。


「お腹や背中よりは楽ですが、目や鼻や口に気を付けてとなると、気を使うわね……」

「そうですね。私達も、石鹸が目や鼻に入ると痛いですし、感覚の鋭いレオ様だとさらにでしょう。ここはきをつけないといけません」

「まぁ、多少の事は我慢してくれるでしょうけどね。な、レオ?」

「スピー!」

「……抗議しているように聞こえますが」

「ははは、気のせいですよ」

「スピー! スプー!」


 顔は気を使う分、手を大きく動かして洗う事ができない。

 少しづつ丹念に洗って行くので、クレアさんの言う通り少し神経を使う作業だ。

 ライラさんの言う通り、人間でも目に入ったら痛い石鹸が、感覚の鋭いレオに入ったら辛いのは当然だろうな……と思いつつも、少しからかうようにレオへと言葉をかけた。

 鼻から抜ける声のような息は、クレアさんの言うように抗議をしている内容だったが……。

 その後も抗議を続けるレオの鼻息を聞きつつ、顔全体を洗い終える。


「よーしレオ、いいぞー」

「スピッ!」


 顔を洗い終える……というよりも、石鹸を付け終えて声をかけると、すぐに桶の水へと顔を浸けて洗い流すレオ。

 桶の水は俺達が顔を洗っている最中に、リーザやティルラちゃんに頼んで代えてもらっていた。

 遊びの延長になっていたおかげで、二人ともびしょ濡れだ……いや、それはほぼ最初からか。


「レオ様は、お湯が苦手なんですね……?」

「そうみたいなんです。川には平気で入って、泳いだりするんですけど……」

「シェリーとは違うんですね。あちらは喜んでお湯を浴びたがるくらいなので」

「ワフ!?」

「ぶっ!」


 桶の中で顔を浸して石鹸を洗い流しているレオを見ながら、ふと首を傾げるクレアさん。

 まぁ、今までの様子を見ていたら、苦手というか嫌いだというのもわかるよな。

 お湯をかけられるたびに、体をビクッとさせたりしてたし、顔を洗うのは水だしな。

 水が平気なのに、お湯が苦手なのは不思議だなぁと思いながらクレアさんに答える。


 シェリーの方は、どうやらレオとは逆でお湯が嫌いという事はなく、風呂にも喜んで入るらしい。

 それを聞いたレオが、驚いたためなのか桶から顔を上げて勢いよくこちらを向く。

 当然、濡れていた毛から水が大量に俺へと降り注いだ。

 横にいたから仕方ないが、もう少し気を付けて欲しかった……もろに顔へかかったじゃないか……濡れるのは覚悟してたけども。


 ちなみにクレアさんは、レオから見て俺の後ろにいたため、被害はほぼなし。

 俺が盾になった形だな。

 服はある程度濡れているが、風呂へ入る前にまとめていた長い髪が濡れると大変だろうから、良かったと思うべきかな。


「……レオ、急に顔を上げたらこうなるだろう? 少しくらいなら仕方ないと思うけど、頭からかけられたようなもんだぞ。しかも水……」

「ワフゥ……」


 びしょ濡れになった俺を見て、済まなさそうにするレオ。

 一応、気を付けてくれてたようで、今まで体を震わせたりする事はなかったんだけどなぁ。

 まぁ、仕方ないか。

 水も滴るいい男……という事で前向きに考える事にしよう。

 ……本当にいい男かどうかは、あまり自信ないけど。


「タクミさん、大丈夫ですか?」

「えぇまぁ。ちょっと冷えるくらいです……」

「体調を崩してしまってはいけません! さぁ、とりあえずこちらで温まって下さい!」

「え、でも……服のまま……」

「気にしなくていいですから!」


 クレアさんが心配顔で尋ねるのに、苦笑して返していると、ライラさんが大きく反応した。

 多分、冷えるという言葉に反応したんだろうが、冷たい水とはいえ、寒くて風邪をひく程ではないので、大丈夫だと思うんだが……。

 だがライラさんは、服を着たままの俺を広い浴槽の方へと引っ張り、中へと入るよう促した。

 服のまま湯に浸かるというのは気が引けるが、勢いに押されて入る事に。

 プールで水着とかだと抵抗感はないんだが、服を着たまま風呂というのには抵抗感があるのは、なぜなんだろう……?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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[一言] 更新有り難う御座います。 お水プルプルも宿命……。
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