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605/1996

皆でレオを洗い始めました



「あはははは! ママ、ちっちゃくなったー!」

「本当です! 不思議ですねー!」

「シェリーも同じようになっていたわね。やっぱり、全身をやわらかい毛が覆っているからかしら?」

「濡れてぺったりと肌に付いていますからね。元がフワフワな毛なので、特にそう見えるんでしょう」


 全身が濡れたレオは、大きな体なのはそのままだが、ボリューム感が減るような感じだ。

 毛が長めの犬を風呂に入れた事がある人はわかると思うが、毛のフワフワ感がなくなって、小さくなったようにも見える。

 リーザとティルラちゃんは面白そうに笑い、クレアさんとライラさんは不思議そうに見ていた。

 皆、こういう風に動物を洗った事がないからだろう。


「よし、そろそろいいでしょう。全身を濡らした後は……こうして、泡立てて……」

「はい」

「こうして見ると、人間の手って小さいんですね……」

「クレアお姉ちゃん、私の手はもっとちっちゃいよ?」

「そうね。リーザちゃんは、これからおっきく成長していくんでしょうねぇ」


 全身をお湯で簡単に洗い流し、大まかな埃などを落とした後は、石鹸を使って洗う作業だ。

 桶に溜めたお湯と混ぜ、手で泡立てていく。

 ライラさんは頷いて静かに泡を立て始め、クレアさんは自分の手とレオの大きさを比べているようだ。

 そんなクレアさんに、泡を立てるどころか全身のあちこちに泡を付けたリーザが、手のひらを見せていた。


 飛び散らないように泡立たせるのは、まだリーザには少し難しかったかな?

 見れば、ティルラちゃんも少し服に泡が飛んでしまっているようだ。

 石鹸の泡を大量に作るなんて、普段やる事じゃないから仕方ないか。


「泡ができたら、それを使ってレオを洗って行きます。こうして……毛をしっかり洗うように……少し強めに力を入れた方がいいですかね。――あ、リーザ、引っ張ったりはしちゃだめだぞー?」

「はーい!」

「んしょ……力を入れて、引っ張ったりしないように……」

「大きいのもあって、中々……全身には行き渡りませんね……んっ」

「そうですねぇ。それに、今はお腹や足を洗っていますけど、この後は背中もありますからね……」

「やっぱり、体が大きいと大変なんですね……」


 泡立てた石鹸をレオの毛に擦り付けるようにして、丁寧に洗いながら説明する。

 引っ張ったりするとレオが痛がると思うので、そこにだけ注意しつつ、柔らかな毛を洗って行く。

 ……不思議だな、手で触ったりすると柔らかい毛で、今は濡れているからフカフカというわけではないが、これが戦闘となるとエッケンハルトさんの剣を当てても斬れたりしないんだから……。


 ともあれ、大きな体を持つレオだから、複数とはいえ人間の手で洗うのは結構時間がかかってしまう。

 泡も人間の手で付けて行くから、全身を洗うのには濡らすよりもさらに時間がかかる。

 今は下になっている背中も、後でちゃんと洗わないといけないし、やっぱり結構な作業だな。


「ママ、おっきくなったー!」

「泡にまみれてますねー」

「ちょっとやり過ぎたかしら?」

「ですけど、毛を洗うとしたらこれくらいは必要なのでは?」

「大丈夫ですよ。毛に付いた汚れを落とさないといけないので、これくらいしっかり泡を付けて洗ってあげた方がいいかと思います」


 お腹や手足にたっぷりと泡を付け、洗われた状態になっているレオは、モコモコとして毛玉というよりも泡玉のようになっていた。

 リーザとティルラちゃんは、さっきと同じように大きくなったように見えて喜んでいる様子。

 クレアさんが少し心配そうにしていたが、しっかり洗うにはこれくらいでちょうどいい。

 毛は長いし量も多いしな。


「それじゃ、さっきと同じようにお湯をかけましょう。あ、勢いよくかけずに、ゆっくりとです。泡がレオの顔に飛び散ったら、嫌がると思うので」

「はい」

「わかりました」

「ばしゃー!」

「こっちもばしゃー!」

「スピ!? スプー!」


 石鹸の匂いは我慢できても、唐突に飛んで来た泡が鼻や目に入ったら、かわいそうだからゆっくりとお湯をかけるように伝える。

 目に入ったら痛いのは当然ながら、鼻に入っても感覚が鋭いレオは悶絶しそうだ……。

 泡を使って洗われていた時は、全身を撫でられるのに近いためか、少しだけ気持ち良さそうな息を漏らしていたレオだが、再びいろんなところからお湯をかけられて、驚いていた。

 とはいえ、我慢する事にも慣れて来たのか、鼻から変な音となって息が出ただけだが。


 ティルラちゃんとリーザはお湯をかけて、泡が流されて行くのを楽しそうにしていた。

 少し勢いが強すぎると感じたので、もう一度ゆっくり洗い流すように教えつつ、お腹側を終わらせた。


「よし、レオ。それじゃあ反対を向いてくれるか? ゆっくり頼むぞ?」

「スピ……」


 今度は背中を洗うため、レオに言って起き上がってもらう。

 返事のような、拗ねているような息を漏らしながら、体を横に回転させながら起き上がる。

 いつものように、勢いよく飛び上がったりなんてしたら、皆に水飛沫が飛んでしまう。

 俺だけならまぁ、注意するだけで済ませられるが、今はクレアさんやライラさんもいるからな。

 ……リーザとティルラちゃんは喜びそうだが。


「それじゃあ、もう一度お湯をかけて濡らして……後はさっきと同じ事の繰り返しです」

「畏まりました」

「はい」

「またお湯をかけます!」

「行くよーママー!」

「スプー……」


 立ち上がったレオに、伏せをしてもらいお腹側でやった作業と同じ事を繰り返す。

 前足の上に顎を乗せたレオは、固く目を閉じている事以外は拗ねているようにも見えた。


「お腹だけでも大変でしたが、こちらはもっとですね……ふぅ」

「そうですね。お腹はあれでも毛が少ないので……背中の方が長い毛が多いですし、量も多いですからね」

「んっ……んっ……ふぅ。力を入れて洗うというのも、大変なのですね」

「あまり無理はしないでもいいんですよ?」

「いえ、大変ではありますが、これも楽しませて頂いているので、大丈夫です」



 お腹以上に毛が長く多い背中側に、クレアさんとライラさんは苦労しながらも丁寧に洗ってくれる。

 二人共大変そうではあるが、ちょっと楽しそうな雰囲気もあった。

 まぁ、お腹側と違って背中側は手足を洗う必要もなくて単純作業だから、洗う毛が多い事以外はなんとか大丈夫だろう。

 ちなみにティルラちゃんとリーザは、ほとんど遊んでいるに近い様子だけど、まぁいいか。


 楽しんでくれているだけで十分だ。

 子供達が遊ぶように洗っている、最強の魔物か……ちょっと面白いな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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[一言] 更新有り難う御座います。 ……ある意味ハーレム(黒一点)のタクミさん?
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