薬草畑運営に関しての話を始めました
「……変な意味ではありませんからね? ゲルダさんやミリナちゃんもいましたし、ティルラちゃんやリーザも。それに、レオやラーレ、シェリーもいましたから……」
「ほぉ……これはまた、両手に花では足りませんな」
「いやいやいや……セバスチャンさん、からかわないで下さいよ……」
「ほっほっほっほ! 若いのですから、これくらいは楽しむのもよろしいかと思いますよ? 旦那様が若い頃は、もっとこう……」
「そういう事ではなくてですね……とにかく、話して決めておかないといけない事があるんでしょう?」
「おっと、そうでしたな……」
部屋へと入ってきた俺に気付いたセバスチャンさんは、目を落としていた机から顔を上げて俺を見る。
薬草の方は全部済ませてきたと報告をしただけのつもりなんだが……なぜか途中からセバスチャンさんにからかわれ始めてしまった。
前々から、こういった女遊びというか……女性とくっつけようとする節があったから、今更ではあるけど……慣れない俺としてはとても困る。
というか、レオやシェリーを女性側に混ぜていいものなのか? いや、性別としては雌なのは間違いないが……あ、ラーレが雄なのか雌なのかまだ確認してなかったな、今度確認しておこう。
話が進まないので、昔語りを始めようとしたセバスチャンさんを止め、本題へと戻る。
はぁ……仕事ではなく、世間話をする時のセバスチャンさんは、要注意だな。
「では早速、ランジ村での薬草畑の事をお話しようかとは思うのですが……その前に……」
「ん? どうかしたんですか?」
「いえ、これにはクレアお嬢様も必要でしょうからな。――すみませんが、呼んで来てもらえますか?」
「畏まりました」
話を始めようとしたところで、すぐにセバスチャンさんが止める。
どうしたのかと聞くと、クレアさんも話をしなければならないとの事で、同じ部屋にいた他の執事さんに呼んで来るように頼むセバスチャンさん。
「クレアさんも、ですか?」
「はい。もちろん、先にタクミ様と話しても良いのですが……共同運営、ですよね?」
「あぁ、そうですね。確かに、一緒に運営すると考えると、クレアさんとも話さなければいけませんね」
「そういう事です」
共同運営は俺が言い出した事。
クレアさんが何を思ったのか、俺に雇われるために書類……履歴書のような物の中に、自分の名前も紛れ込ませていた事から、そうしようと考えた。
公爵家としては、クレアさんが雇われる事に問題はないようだが、共同経営とした方が外聞も良さそうだしな……俺だけでなく公爵家としても。
呼びに行ってくれた執事さんを見送り、椅子に座って待つ事にした。
十分もかからない時間だったが、その間セバスチャンさんからのからかいとも言えそうな会話を逸らすのに、かなり苦労したひと時だったなぁ……。
「それでは、薬草畑を運営する事について、話を始めましょう」
「はい」
「そうね」
クレアさん到着後、三人で一つの机を囲んで会議のような形で話を始めた。
セバスチャンさんからの言葉に、俺とクレアさんが頷く。
「まずはそうですな……タクミ様が暮らす家について話しましょうか」
「そこからですか? 以前にとりあえずは決まっていたと思うんですが……」
以前にも話した、俺やレオが暮らす家。
あまり大きくなくていいんだが、体の大きいレオがある程度自由に動くために、通常の家では狭すぎるという話をした。
その時、豪邸と言えるくらいの家を造ろうとしていたエッケンハルトさんを止め、なんとか大きめの家……というだけで話は終わったと思うんだがなぁ。
「いえ、住む家というのは重要です。クレアお嬢様もお住みになる事ですし、使用人もいますからな」
「タクミさん、場合によっては雇う人達を住み込みで……という事も考えないといけません。ランジ村では、ハンネス村長が空いている家を使わせてくれると言っていましたけど、全員それに甘えるわけには……」
「言われてみれば、そうですね……。そうか、雇う人、働く人が住む場所の事も考えないといけないんですね」
「はい。例えば、ラクトスの街で何かを始める場合、そこに住んでいる人を雇えば、家に関して考える必要はありません。まぁ、住む家もない……という人もいるかもしれませんが、確実にその可能性は減ります。ですが、今回はランジ村に移動してもらう必要があるので、そこで住む家というのを考える必要がありますな」
俺やクレアさん、レオやリーザは新しく建てた家に住めばいいが、新しくランジ村に来て働く人は、住む家の事も考えなきゃいけない。
けど、全員が全員新しく家を建てられるわけでもないし、ランジ村での空き家にも限りがある。
ずっと……というわけでもないだろうが、使用人さん達のように住み込みで働かせる事を考えると、人を雇うより先に考える必要があるわけだな。
「私とタクミさん、レオ様とリーザちゃん。シェリーは……私と一緒でいいから、特に部屋は必要ないわね。あとは、使用人達と雇う人が住める場所ね」
「はい。それと、以前にも話したように、タクミ様も執事を雇った方が良いでしょうな。一人で全てをやれるわけではありませんし、執事がいれば家の管理からお金の管理も任せられます。もちろん、信頼できる者でなければいけません」
「そうですね……俺一人で全てをやろうとしても、必ずどこかで無理が来ますね。クレアさんはいるとしても、頼り切りというわけにはいきませんし……」
「私は、頼って下さる方が嬉しいのですけれど……」
「お嬢様、旦那様のような事を言わない方がよろしいかと。お嬢様が加わっても、規模が大きく一人や二人でどうにか出来る仕事量ではございません」
「まぁ、そうね……」
執事さんに関しては、前にもセバスチャンさん達と話しているように、誰かに任せなければいけないと思う。
この世界に来る前の俺だったら、誰かに頼るなんて事を考えず、全部一人でやろうとして潰れるか失敗するかだっただろうなぁ。
まぁ、あの頃は頼れる人もあまりいなかったというのもあるんだが、それはともかく、今は頼れる部分は頼ってしまおうと考えている。
もちろん自分でできる事はやろうと思うが、無理していい事なんてないからな――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。