川へと到着しました
何とかクレアさんを言いくるめて、またセバスチャンさんを先頭に川へ向かって歩き出す。
『雑草栽培』の研究でわかった事等を隠すつもりはないが、さすがに森の中で、しかもオークを運んでる最中だ、今話す事じゃないだろう。
川に着いてからでもゆっくり話せばいい事だからな。
大分川の流れる音がはっきりと聞こえるようになって来た。
それから10分程歩いた頃、木々の隙間から川が見えて来た。
「クレアさん、川ですよ」
「はぁ……はぁ……ようやく休憩出来ますね」
やっぱりクレアさんには、森を歩き続けるのは辛いようだ。
息を切らしながら歩いてるが、川が見えた事で表情は明るくなった
「ワフー」
オークを口で持って運んでたレオが、俺達より先に走って川へ向かう。
レオは川へ着くなり、ほとりにオークを置いて川へ飛び込んだ。
前の時も川を見つけると真っ先に飛び込んだが、レオって水遊びが好きなのかもな。
バチャバチャと水しぶきを上げて泳ぎながら、時折川の水を飲んでるようだ。
「……シルバーフェンリルになってもやっぱり泳ぎ方は犬かきなんだなぁ」
泳ぐレオを見ながら、俺達は川へ到着。
クレアさんは大きめの石に腰を下ろして休憩だ。
セバスチャンさんは野営をするための場所探し、ライラさんは焚き火の枝を集め始めた。
二人共、良く動くなぁ。
護衛さん達三人は、運んできたオークを、レオの置いたオークの所で降ろし、一つにまとめながら、血抜きを始めてる。
「へぇーああやって血抜きをするのか……」
腕や足を持って持ち上げ、逆さにして血が流れ出すようにする。
時折、血が溜まってそうな部分を切ったりしてるようだ。
三人がかりでオーク一つ、二つに切り裂かれた2体と丸々残ってる1体で合計五つあるから、結構時間がかかりそうだ。
あ、ちなみにオークから出る血は直接川に流れるようにしてる。
さすがにそこらへんに血が溜まってたら色々と大変だからな……においとか……景観的にも……。
「クレアさん程疲れていないし、俺も何か動かないとな」
俺はライラさんの枝拾いを手伝う。
セバスチャンさんがしてる野営の場所探しは、知識がないから出来ないし、血抜きも同様だ。
レオに混じって遊ぶのも気が引けるし、何か手伝った方が良いだろう。
こういった準備は早く終わらせるに限るからな。
「ライラさん、枝はこんなものですかね」
「そうですね、おかげさまで結構集まりました。手伝って頂いてありがとうございます」
「いえいえ、皆のための焚き火用の枝ですからね。これくらいはやらないと」
「……クレアお嬢様のように休んで頂いても良かったんですよ?」
「まぁ、まだ体力が余ってますからね。手伝えることなら手伝わないと」
俺とライラさんは枝を集め、それを焚き火用と予備に分けてまとめる。
作業をしてるとセバスチャンさんが戻って来た。
「ライラ、タクミ様、野営をする場所が見付かりました」
「わかりました。では、そちらに移動ですか?」
「はい、よろしくお願いします。ライラと私は他の皆へ伝えて参りますので」
「では、俺はクレアさんに伝えて来ますね。そろそろ疲れもマシになって来ているでしょうし」
「お願いします」
血抜きも終わろうとしている護衛さん達の方へ行くセバスチャンさん達と別れ、俺は川辺の石に腰を下ろしているクレアさんに近づいた。
「クレアさん、セバスチャンさんが野営の場所を決めたようですよ。移動しましょうか」
「わかりました」
「……大丈夫ですか?」
「それなりに休めましたからね。ちゃんと歩けますよ」
俺の心配する言葉に、クレアさんは微笑みながら強がって見せる。
実際は、表情に疲れが出ているし、動きも重そうだ。
……クレアさんは今日、あまり動かずに休んだ方が良いだろうな。
「お、セバスチャンさんが来ましたね」
「ええ」
川で血抜きをしていた護衛さん三人を連れて、セバスチャンさんとライラさんが、俺達の所へ歩いて来てるのが見えた。
そろそろレオも呼ばないとな。
「レオー、移動するから川から上がっておいでー」
「ワフー!」
俺の声を聞いたレオが、犬かきで泳いでいた川からジャンプ!
水の無い場所に着地して、その場で体を震わせて毛に付いた水を飛ばす。
結構離れてるのに、体の大きいレオが水を飛ばすとこっちに届きそうな勢いだな……風呂に入った時、これを間近で受けたのか……そりゃ全身濡れるよなぁ。
「ワフワフ」
「よしよし」
セバスチャンさん達より遠い場所にいたのに、水気を飛ばしてすぐ駆けて来たレオは誰よりも早く俺達の所に着いた。
レオの体を撫でながら、セバスチャンさん達を待つ。
「クレアお嬢様、タクミ様、お待たせしました。では、野営をする場所へ移動しましょう」
「わかったわ」
「はい」
「ワフ」
それぞれに返事をして、再びセバスチャンさんを先頭に歩き始める。
野営の場所はそんなに遠い場所ではなく、先程の場所から10分程歩いた場所にあった。
俺とライラさんは、集めておいた焚き火用の枝をそれぞれ持ち、レオと護衛さん達は血抜きをして多少軽くなったオークを運びながら歩いている。
森の中じゃなくて川辺なので木々が進行を妨げる事も無く、クレアさんはさっきまでより歩きやすそうだ。
野営場所は、他の所よりも川と森の木までの間が広く、石も少なくて土が剥き出しになってる場所だ。
「今日はここで野営を致しましょう」
「わかりました」
「では、私達はテントの準備を致します」
護衛さん達は持って来た荷物を広げ、その場所でテントを張る準備を始めた。
俺はライラさんと一緒に焚き火の準備。
クレアさんとレオは、焚き火をするために枝を並べる様子を興味深そうに見ている。
「ライラさん、こんな感じで良いですか?」
「そうですね……ここはもう少しこう……これで、空気の通りも良くなってしっかり火が付きますよ」
「ありがとうございます」
俺はライラさんに焚き火のレクチャーを受けていた。
……ただ単に枝を集めて並べればいいだけじゃないんだな……
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