レオの強力な魔法が直撃しました
「よし、皆離れましたね。――レオ、いいぞー。やってくれー!」
「ワウー! ウゥゥゥゥ……ガウワウ!」
「きゃっ!」
「うぉ!」
「むぅ!」
「これはっ!」
「ふわぁ!」
「眩しいです!」
皆が離れた事を確認し、空を見上げたまま指示を待っているレオへと声をかけた。
返事をするように吠えたレオが、唸るようにして力を溜め、少しだけ銀色の綺麗な毛が淡く光ったと思った瞬間、凄まじい音を立てて一筋の光が空へと駆け抜けていった。
その光は、一瞬ではあるが俺達の目を眩ませるには十分で、期待して見ていた皆はそれぞれに声を上げる。
俺が使う光の魔法を強力にしたような魔法……か?
もしかして空を飛んでいる魔物の目を眩ませて、地上へ落とすつもりなのだろうか……と思ったが違った。
一瞬で迸った光は、眩しくてよく見えない部分もあったが、レオの眉間辺りから迸ったような気がする。
そしてその光は、一直線に空を飛んでいる魔物へと駆けて行き、バチィッ! という大きな音と共に上空で再びまばゆく光った。
レオが魔法を放った瞬間はまだしも、上空での光は距離が離れていた事もあって、なんとか見えた。
「雷……稲妻の魔法……ってところか?」
「凄まじいな……あれ程の光を放ち、高速で走って行く……人間に扱える魔法とは思えん」
「そうですな。放った瞬間の光にも驚きましたが、その光が移動する速さ、そして上空で標的に当たった時の音と光から、凄まじい威力を証明しているかと」
「シルバーフェンリル……いえ、レオ様の魔法……すごいわ。これが見られただけでも、価値があると言えるわね」
「ママすごーい!」
「凄いですレオ様!」
「「「キューン……」」」
頭上で弾けた光は、今まで優雅に飛んでいた魔物をその場につなぎとめた。
それを見て、それぞれ声を出す俺達。
エッケンハルトさんとセバスチャンさんは、その威力に感心し、クレアさんは感動すらしている様子。
リーザとティルラちゃんは、レオがすごいとただ喜んでいるだけだが、フェンリル達は怯えて情けない声を出していた。
……フェンリル達にとっては、文字通り雷を落とされたような気分なのだろうか?
「あ……落ちて来ますね……?」
「そのようだな……」
上を見上げている人達全員が気付いている事だが、思わず声に出た。
エッケンハルトさんも、俺の呟きに反応するように声を出して頷いている。
空を飛んでいた鳥型の魔物は、レオによる雷を打ち付けられ、衝撃からなのか少しだけ空中で静止した後、頭を下にしてそのまま落下して来ている。
「というか、レオ? あれ、あのまま落ちたら危ないんじゃないか?」
「ワフ。ワウー!」
「ガウ!? ガウワウ!」
「ガウウ!」
「キュゥ……」
離れた場所から、俺がレオに聞くと、空を見たまま頷いたレオが親フェンリル達に向けて吠えた。
一瞬驚いた父フェンリル……リーザ曰くフェンの方か。
フェンが「え、俺達!?」というような表情で声を上げた後、すぐに立ち上がって鳥型の魔物が落下するであろう場所へと駆けた。
母フェンリルのリルルも一緒だが、シェリーはその場で縮こまったまま、小さく声を漏らしているだけだな。
二体のフェンリルに、落ちている鳥型の魔物の事を任せたようだが、どうするんだ?
そう思いながらも、俺達人間は見ているだけだ。
少なくとも人間以上の大きさを誇る魔物が、かなりの高さから落下して来ているんだから、俺達が手を出そうとしたら危ないだろうしな……巻き込まれる可能性が高い。
「ガウゥ!」
「ガーウ!」
「お?」
ひゅるるるる……と音がしそうな様子で、真っ逆さまに落ちて来る鳥型の魔物。
意識がないのか、レオの魔法が強力過ぎて体が動かないのかはわからないが、落ちている間に身じろぎするような動きはなかった。
その鳥型の魔物の落下予測地点……おそらく俺達が寝るために設営しているテントの真上なんだが、そこに向かって走る二体のフェンリル。
テントの傍で、親フェンリル達が同時にジャンプし、テントよりも高く飛んだ。
助走してジャンプ……そのままの勢いで、ちょうど落下してきた鳥型の魔物へ二体同時に体当たり……。
その反動で反対方向へ飛んだ親フェンリル達は、何もない地面で着地した。
体当たりで弾かれた魔物はというと……。
「えっと……むしろ自由落下するだけよりも、酷い事に?」
「ワフ?」
高い場所から落ちる勢いと、さらに横からフェンリル達の体当たりで弾かれ、きりもみ回転こそしなかったが、それでもかなりの勢いで地面に叩きつけられた魔物。
真っ直ぐ落ちたわけじゃないから、ズザザザザザ! と地面を少しえぐりながら滑っていたが、やがて森より少し手前で止まり、そのまま沈黙した。
直下で落ちたら、小さなクレーターができてもおかしくない勢いと重さだったようだが……どちらにせよ無事とは思えないんだが……。
思わずつぶやいた俺の言葉に、レオはあれ? と言うように鳴いて首を傾げた。
……レオとしては、テントに被害が出ないように指示しただけだろうが、もう少し柔らかく受け止めるように想像していたのかもしれない。
だからと言って、落下物からテントを守ってくれた親フェンリル達を、責めたりはできないけどな。
「……ワフ。ワフワフ?」
「あ、あぁ。そうだな。一緒に行こう」
「タクミ殿、私もいいか?」
「レオ様がいらっしゃるので、大丈夫でしょう。興味深いので、私も行きますかな」
「私も……行きます!」
「私も行きますよー」
「パパやママと一緒ー!」
レオから、魔物の様子を見に行くかと聞かれるように鳴かれたので、それに頷いて一緒に行く事にした。
一緒に魔物がいる方へ向かうレオや俺に、エッケンハルトさんやセバスチャンさんだけでなく、他の皆もついて来た。
結局、さっきレオの周辺にいた人は全員という事になったな……まぁ、フェンリル達も一緒にいてくれるようだし、フィリップさんやニコラさんも合流してくれたから、滅多な事にはならないだろう。
ちなみにアンネさんは、レオが放った魔法に驚いて顔というより、目を手で塞いで蹲っていた。
多分、激しい光を直視し過ぎたんだろうなぁ……とりあえず、ライラさん達にお任せしておこう。
あ、シェリーが自分の傍から親フェンリル達が離れて心細くなったのか、ライラさんに抱かれて甘えてるな……まぁ、さっきまであれだけ怯えていたんだから、存分に甘えていいんじゃないかな。
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