レオが空で何かを発見しました
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書籍版第1巻、好評発売中!
活動報告にて、新たにもう一枚挿絵の公開を致しました。
クレアさんはなんというか、少し自分を押し殺しているようにも見える部分がある。
それが、公爵家の令嬢として必要な事と考えているのかもしれないが、俺やエッケンハルトさんから見ると、少し息苦しそうに感じてしまうのかもしれない。
だがそれのおかげで、今のクレアさんがある事も間違いないから、否定はしたくないし……難しいな、やっぱり。
エッケンハルトさんが悩んでしまうのも、無理はないな。
「ワフ?」
「ん、どうしたレオ?」
「ワフー……」
「どうかされましたか、レオ様?」
「レオ様?」
そんな話をして、アンネさんからクレアさんの話になっていたら、ふとレオが何か気になるものでも見つけたのか、顔を上げて小さく鳴いた。
何か異変でもあったのかと聞くが、空を見上げたまま声を漏らすだけ。
クレアさんとエッケンハルトさんも、レオに気付いたようで、二人共声をかけている。
「んー……何か異変があったのか?」
「……魔物が近付いているとか、でしょうか?」
「しかし、森の方にはフェンリルもいるからな……レオ様以外が気付かないという事は考えにくいぞ?」
「ワフ。ワフワフ」
「ん、空を見ろだって?」
「「空?」」
続いて、もう一度レオに尋ねてみる。
クレアさんが魔物が近付いているのかと聞き、エッケンハルトさんがそれを否定している。
確かに、森の方からオークなんかの魔物が近付いているのであれば、そっちの方が先に騒がしくなりそうだ。
川の方からだとしたら、こちらの方が近いからレオが先に気付くだろうが……そもそも見ているのは空だからな。
どうしたのかと思っていると、空を見上げているレオが、同じように見上げて見ろと言うように鳴く。
それを聞いて、俺が顔を空に向けて見上げ、エッケンハルトさん達も首を傾げながら続くようにして上を向いた。
「……んー……何か飛んでいる?」
「鳥か?」
「空を飛ぶと言えば、鳥でしょうね……」
月明かりに照らされ、空に見えたのは一体の鳥。
優雅に空を飛んでいるように見える。
森に入ってから、鳥のような動物は見かけた事はあるが……あそこまで高く飛んでいるのを見たのは初めてだ。
どれくらいの高さかは暗くてはっきりと見えないが、結構大きな鳥が、気持ち良さそうに空を旋回しながら飛んでいた。
空を飛べるっていいなぁ……。
「ワフ……」
レオが小さくもう一度鳴いたあたりで、その鳥は他の場所へと飛び去ってしまい、見えなくなってしまった。
「ふむ……鳥が通ったから、レオ様は気になったのか?」
「そのようですね」
「鳥……レオ、豚肉の次は、鶏肉が食べたくなったのか?」
「ワフ! ワフワフ!」
鶏肉が食べたいのかと聞くと、激しく反応。
どうやら、たまには違う肉も食べたいと言っているようだが……この森に入ってから、ソーセージはあれど、他はオーク肉ばかりだからなぁ……。
屋敷に戻ったら、ヘレーナさんに相談してみよう。
森に入る前からだが、レオがは大活躍だしな……フェンリルとの話もそうだし、オークを見つける事とか……ご褒美はちゃんと用意してあげよう。
「オーク以外の肉は、帰ってからだな。それでいいか?」
「ワフ!」
「あ、こら……ちょ……」
「ふふふ、やっぱりレオ様はタクミさんが一番なんですね」
「食べ物が原因のような気もするが……それにしてもシルバーフェンリルにここまで好かれるのも、才能なのかもしれんな」
帰ってから、オーク以外の肉を食べさせることを約束するように言うと、喜んだレオが俺の顔を舐めはじめた。
喜びの表現なのはわかるが、急に興奮して舐め始めるのは止めて欲しい……レオ相手に食べられるとかは考えないが、それでも大きな口を開けて来られるのはちょっと怖いんだぞ?
鋭い牙も見えるし……。
尻尾を振りながら舐めて来るレオと、舐められる俺を眺めて、エッケンハルトさんとクレアさんは微笑ましそうにその様子を眺めていた。
……手が空いているなら、止めて欲しいんですけど。
「それではな、今日はセバスチャンが起きて来る前に寝るとしよう。また捕まって、寝不足になったらこまるしな」
「そうですね。タクミさん、レオ様、おやすみなさい
「はい、おやすみなさい」
「ワフ、ワフ」
レオを落ち着かせて、屋敷に戻ったら美味しい物を食べさせると約束した後、まだ見張り交代の時間になっていないのを確認しつつ、エッケンハルトさんとクレアさんがテントへと戻って行った。
初日の夜のように、セバスチャンさんに捕まって、寝る時間が少なくなったらいけないと考えたんだろう。
まぁ、あれは愚痴を漏らしてそれを聞かれていた事が原因だとは思うが……とりあえず二人には、アンネさんと同様に安眠できる薬草を渡しておいた。
クレアさんはまだしも、エッケンハルトさんは喜んで受け取り、ホクホク顔でテントに戻った事から、あの薬草の効果にはまっているらしい。
……あんまり薬草に頼るのもどうかと思うが、朝に弱いうえ、いびきが大きいからな……安眠薬草でいびきまでどうにかなるのかはともかく、ゆっくり休んでスッキリとした目覚めになって欲しいと思う。
そうして、先に寝る二人を見送った後、交代の時間までレオと一緒にまったり焚き火を眺めて過ごした。
ちなみにだが、少し気になってレオにさっきの鳥の事を聞いてみたら、特に気にする程でもなかったかもしれない……という不確定な答えが返ってきた。
レオにしては珍しいと思うが、夜中だし高い場所を飛んでいたから気になったというだけなのかもしれないな。
見張りの交代をして、なんとなく昨日までより、エッケンハルトさんのいびきが静かになった気のするテントの中で、熟睡するために俺も安眠薬草を食べてからシュラフの中に潜った。
俺も、結局薬草に頼ってるなぁ……心持ち静かになったけど、やっぱりエッケンハルトさんのいびきが大きいから、仕方ないか……。
「それにしても、鳥って鳥目とか言って、夜間は目が見えなくなるから、飛んだりする事はないんじゃなかったっけ?」
シュラフの中で目を閉じながら、ふとした疑問が沸き上がる。
詳しくないから、例外もいるかもしれないが、鳥目なのに夜間を飛ぶのは少しひっかるな……と感じながら、安眠薬草の効果でそのまま意識を手放した。
……魔法とかあるし、それで視力を補完したり、空を飛んでいたのかもしれないなぁ――。
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