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親フェンリルのお腹を撫でました



「えっと……こう、かな?」

「ガウゥー」

「ガウガウー」

「結構、気持ち良さそうだな……」


 転がる二体のフェンリルの間に入り、左右の手を使ってそれぞれのお腹を撫でる。

 さすがに体が大きいため、全体を一度に撫でたりする事はできないが、そこはそれ、レオを育ててきた経験を生かして、気持ち良さそうなポイントを重点的に撫でてやった。

 フェンリルと犬では違う可能性があるため、どうなるかは不安だったが、二体とも気持ち良さそうに声を漏らしていたので、成功したようだ。


「ワフワフ」

「クレアお姉ちゃんもだってー」

「私も……ですか? まぁタクミさんも大丈夫なようですし……わかりました」


 フェンリルのお腹を撫でている俺の後ろで、今度はレオがクレアさんに言って同じ事をと言っていた。

 おとなしくしているし、大丈夫だろう。

 意を決したような声で、レオとリーザに返事をしたクレアさんが、俺へと近づいて来る気配。

 と、突然お腹を撫でていたフェンリルが、二体とも飛び上がった!


「グルルルル……」

「ガウゥゥゥ……」

「きゃっ!」


 レオが時折、調子に乗って風呂場でするように、体を起こす反動で飛び上がり、空中で体を回転させてスタッと着地。

 クレアさんに向かって唸り始めた。

 俺は大丈夫でも、クレアさんは駄目なのか……?

 レオといつも一緒にいるから、匂いが移っているからかもしれないな。


「キャゥ! キャゥ!」

「ガウ?」

「ガウゥ? ガウガウ」

「……シェリー?」


 短い悲鳴を上げ、後退った気配が後ろから感じられた。

 後ろを振り返ると、フィリップさん達がクレアさんに駆け寄って来ようとしていた。

 臨戦態勢となったフェンリルに、危ないと思ったんだろう。

 その時、シェリーがクレアさんとフェンリルの間に割って入って吠えた。

 二体のフェンリルが、首を傾げてシェリーに確認するような仕草。


「キャウー、キャウー!」

「ガウゥ……」

「ガフ……」


 シェリーが説明しているように鳴き、それを聞いて臨戦態勢を解くフェンリル二体。

 だが、フェンリルにとっての受難はこれからだった。


「グゥルルルルル………」

「キャイン!」

「キャウン!」

「レオ様?」


 レオがのっしのっしと歩いてクレアさんの横に並び、唸ってフェンリルを威嚇。

 クレアさんを行かせた自分の面目を潰す気か……とでも言っている雰囲気だ。

 レオに面目という概念があるのか、微妙な気もするが……多分そんな感じだろう。

 それを見て、またごろんと転がり、お腹を見せて服従のポーズをするフェンリル二体。


「ワウゥ? ワウワウ! ガウ!」

「ガゥ……」

「ガァゥ……」

「キャゥキャゥ」


 さらにレオが一歩近づいて、説教するように吠えた。

 フェンリル二体は、体を震わせて怯えた様子で、尻尾を後ろ足の間に挟んですらいた。

 ちなみに、こんな両親の情けないとも思える姿を見たシェリーは、わかるわかると言うように鳴いて頷いていた。

 あ、レオに服従したり怯えたりするのって、なさけないというより当然の事なんだな。


「えーっと……レオ様?」

「ワフ。ワウワウ」

「もう大丈夫だってー」

「わかりました……」


 レオが説教している間、少しかわいそうに思ったので再度俺がお腹を撫でている。

 そこでクレアさんが、恐る恐るレオに声をかけると、説教を止めてもう大丈夫と頷いた。

 それを見たクレアさんは、もう一度挑戦するようにフェンリルを撫でている俺に近付いてきた。


「クレアさん、こうやって……手の平を使って撫でるようにしてあげて下さい」

「わかりました、やってみます」

「クレアさんばかりズルいですわ! 私も……ちょっと、離して下さいまし!」

「駄目だぞアンネリーゼ、今はフェンリルを刺激するべきではない」


 フェンリルのお腹を撫でる方法を、クレアさんに教え撫でてもらう。

 フワフワの毛に包まれているお腹は、クレアさんの手を優しく包み、ゆっくりと撫でている事でその感触を楽しんでいる様子だ。

 離れている場所で、何やらアンネさんが騒いでいる気がしたが、またもそちらは無視。

 エッケンハルトさん、もう少しそのまま押さえておいて下さい。

 レオがいるから、滅多な事はないと思うが、野生の獣……魔物を変に刺激するわけにはいかないからな。


「ガウ?」

「グルゥ……」

「ガウゥ……」

「キャウ」


 俺とクレアさんがフェンリルを撫でている間に、レオがフェンリル二体に対して声をかけた。

 お腹を撫でているから、はっきりと震えが伝わってくるが、よっぽどレオが怖いんだろう。

 フェンリル達は力なく唸って、レオの声に頷く。

 シェリーもなぜか頷いていた。



「あぁぁ……素晴らしい撫で心地ですわぁ……」

「アンネリーゼ、シェリーはともかくレオ様を怖がっているのに、フェンリルは大丈夫なのか? こちらも多く恐怖の対象でもあるのだが……」

「レオ様やシェリー様も素晴らしい撫で心地でしたが、こちらも癖になりそうですね」

「そうですね、リーザ様もそうですが、タクミ様といると幸せの撫で心地というのを、深く実感できますね」

「ほっほっほ、大盛況ですなぁ……」

「盛況過ぎて、大丈夫なのかどうか……まぁ、レオがいるから危険はないんでしょうけど」


 しばらく後、俺とクレアさんがお腹を撫で続ける中、レオとフェンリル達が話していた。

 ほとんどが、レオに対して恐縮する様子のフェンリル達だったが、その中で特に俺には逆らわず、人間を襲わないという事を約束させていたようだ。

 人間を襲わないというのはいいんだが、俺には逆らわないって……フェンリルの飼い主になるわけじゃないんだがなぁ。

 ともあれ、未だ服従のポーズでおとなしくさせられているフェンリル達は、安全になったとエッケンハルトさん達に撫でられている。


 レオとリーザとシェリーが監督しているし、フェンリル達の方も気持ち良さそうでまんざらでもない様子だし、問題はなさそうだ。

 ちょっと調子に乗ったらしいシェリーが、勢いよく父フェンリルのお腹に飛び乗った時は、さすがに苦しそうな声を出してたけどな。

 オークの攻撃は大丈夫でも、同じフェンリルからなら痛みとかを感じるのか……。


 とりあえずは安心して、少しだけ離れた場所でセバスチャンさんとクレアさんの三人で話す。

 それ以外の人達は、全員フェンリルの周りに集まっている。

 アンネさんやメイドさんといった、女性陣には特に人気のようだな。

 ヨハンナさんも一緒に参加している。


 フィリップさん達、男性の護衛さん達はさすがに、撫でたりはせず念のための警戒をしているようだが……。

 肝心のエッケンハルトさんが、アンネさんに何か言いながらも撫でてご満悦な様子なのがな……危険はないようだからいいんだけど……まぁ、エッケンハルトさんらしいしな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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