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レオが魔法で火を付けてくれました



「セバスチャンさん、すみません。レオが火を付けたいみたいです」

「……ほぉ。シルバーフェンリルの魔法でございますね。では、お願いします」

「レオ様の魔法が見られるんですね。シルバーフェンリルが魔法を使う所なんて、そうそう見られる物じゃありません。しっかり見ておかないと」


 セバスチャンさんはレオに場所を譲り、火を付ける役を任せてくれた。

 クレアさんの方は、興奮気味なようだ。

 シルバーフェンリルの魔法を見てみたかったらしい。


「ウー……ガウ!」


 レオは枝に向かって一度唸るようにしてから吠えた。

 吠えると同時、レオの口から炎が迸って枝に火が付く。

 そういえば、最初にこの森に来た時にも、オークの肉を焼くために同じようにして火を付けてたなぁ。

 色んな事があって、今まで忘れてたが。


「これがシルバーフェンリルの魔法……口から火を吐くと知っていましたが、実際に見ると想像とは少し違いますね」

「……多分、足とかよりも使いやすいからだと思いますよ?」


 クレアさんは、レオが口で魔法を使った事に驚いてるようだ。

 でも、驚きながらもしっかり感激してる様子なのは、その笑顔から見て取れる。

 セバスチャンさんと、ライラさんは驚くというよりは感心してる様子だな。

 護衛の人達はレオと接してる時間が短いせいで慣れていないのか、驚いた様子で火の付いた焚き火を見ていた。

 シルバーフェンリルが魔法を使う事は知識として知っていたが、皆見るのは初めてのようだ。

 そりゃそうか……シルバーフェンリル自体、見るのはレオが初めてだって言ってたしな。


「では、調理をさせて頂きます。レオ様、少しお待ち下さいね」

「ワウ!」


 ライラさんが、鍋と食料が入ってるらしい麻袋を持って焚き火に近づきながらすぐ傍にいたレオに声を掛ける。

 レオは食事の準備を邪魔しないよう、俺の前まで戻って来た。

 ……火を付けたからか、少しだけ誇らし気な表情だな。


「良くやったぞレオ」

「ワフワフー」

「……ふわふわですね」


 褒めて欲しそうだったので、レオの頭を手の届く位置に持って来させて頭をしっかり撫でておいた。

 俺が撫でてる時、横から手が伸びて来てレオを同じように撫でる。


「……クレアさん?」

「……私もレオ様を撫でてみたかったので……」

「ワフー」

「ははは、もっと撫でてやって下さい」

「はい!」


 どうやらクレアさんも、前からレオの事を撫でてみたかったらしい。

 最初は恐る恐るだった手付きも、すぐにレオのふわふわの毛に慣れてしっかり撫で始める。

 レオの方は撫でられて気持ち良いのか、せがむように頭をクレアさんの手に押し付けてたりする。

 レオを撫でる事が出来たクレアさんは満面の笑みだ。

 こうやってレオと仲良くしてる姿を見ると、やっぱりティルラちゃんとは姉妹なんだなぁと思う。

 それからしばらく、良い匂いが辺りに漂い始めた。


「調理が終わりました。皆様どうぞお食べ下さい」

 

 セバスチャンさんが、荷物の中から木の皿を取り出し皆に配る。

 クレアさんや護衛の人達も一緒に昼食だ。


「レオ様には追加でこれを」


 ライラさんが、鍋で作った料理とは別にソーセージを数本焼いてたようだ。

 それを料理と一緒に木の皿に入れてレオの前に置いた。


「ワフワフ」

「ふふふ、どうぞ」


 レオがライラさんにお礼を言ってるようだ。

 それを見たライラさんが微笑みながらレオに促すと、レオは勢いよく食べ始める。

 俺も食べよう、匂いでお腹が空いて来た。

 またいつかのように、人前でお腹が鳴ったら恥ずかしいしな。

 ライラさんが鍋から、皆の持ってる皿に次々と料理を入れて行く。

 ライラさんが作った料理は、肉と野菜が一緒に入ったごった煮のスープのような物だ。

 肉から良い出汁が出てるのか、スープも味が染みた野菜も美味しかった。


「美味しかったです、ライラさん」

「ありがとうございます。ヘレーナ程上手くは出来ませんでしたが……」

「ヘレーナさんは料理人ですからね。でも、家庭の味のように温かみがあって、これはこれで良い物だと思いますよ」

「タクミ様、ありがとうございます」


 少しだけ頬を赤くしたライラさんにお礼を言われる。

 お礼を言いたいのは、美味しい料理を作ってもらった俺の方なんだけどな。

 少し照れ臭くなって頬を指先で掻いてると、お皿を空にしたセバスチャンさんが近づいて一言。


「ライラは家庭的で良い女性ですよ。ほっほっほ」


 それだけ言って笑いながら離れて行くセバスチャンさん。

 何か……昨日までの執事の仕事をきっちりこなしてたセバスチャンさんのイメージが、音を立てて崩れて行くような感覚……。

 というか、セバスチャンさんは若者を煽る趣味でもあるのか?


「説明爺さんというだけじゃないとは……」


 侮りがたし……セバスチャンさん……。

 その後、皆がライラさんの料理を食べ終わり、残るは後始末。

 後始末と言っても、昼食につかった木の皿や鍋を軽く洗うだけ。

 焚き火も消すのかと思ったが、ここで馬を見張る護衛さんがいるので、その人のために残しておくとの事。

 木の皿は、セバスチャンさんが魔法で水を作り出して、それを使って洗っていた。

 魔法ってそんな事も出来るんだ……。


「ワフー」

「ほぉ、レオ様も出来るのですか。助かります」

「シルバーフェンリルが火以外の魔法を使ってる所を見れるなんて……」


 木の皿を洗うため、水を作っていたセバスチャンさんに近づいて行ったレオが何をするのか見ていたら、なんと顔の前に丸い水の塊を作り出した。

 火と違って口からじゃないのは、レオなりの気遣いなのかもしれない。

 まぁ、火の時と同じように口から水が出て来てもなぁ……その水を使うのはためらってしまうだろうな。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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完結しました!
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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] >まぁ、火の時と同じように口から水が出て来てもなぁ……その水を使うのはためらってしまうだろうな。 後ろ足で立ち上がって使えばマーライオン。 宴会芸にはなるよね。
[気になる点] 始めと終わりで文章が重複してる部分があります 丁度真ん中あたりで半分にして、本文を丸々挿入したような状態になってます
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