表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

529/1996

見込みが甘かったようでした



「鈍足な事が唯一の救いか……もう少し弱らせた方が良さそうだな」


 思いついた事を実行しようにも、このままだと危険すぎる。

 片方……できれば両方の動きをもう少し遅くするか、お互いの距離を離したいところだ。


「せいっ! くぅ!」

「ギュア!?」

「ギュオア!」


 とりあえず片方のオーク、俺から見て左側のオークに見定めて、足を狙って剣を振るう。

 向こうも動いているため、完全に狙い通りではなかったが、太もも辺りを浅く斬る事には成功した。

 そうしている間に、もう片方のオークから間髪入れずにうでが振り下ろされた。

 剣を振り切った反動のまま、斬り付けたオークの横をすり抜けて前方に飛び込み、地面に手を付いて体勢を整える。


 一瞬でも動きが遅れていたら、オークの腕が俺の体に当たっていたと考えて、背中に冷たい物が流れる感覚。

 やっぱり、このままじゃ数秒も余裕がないな。

 幸い、斬り付けたオークは痛みに怯んだ様子で攻撃して来なかったし、少しだけ近づいて来る速度が下がった気がする。

 ほんとに、気がする程度だから、深くは斬れていないようだが……。


「とりあえず、じっくり戦うしかないか……」


 近付いて来るオークを睨んで、考えている事を実行するための準備に取り掛かった。

 位置が変わったため、オークの向こうにクレアさん達が見え、離れているためはっきりとはわからないが、俺の事を心配してくれているようだった。

 ……大丈夫、きっとこのオーク達は倒せますから……向こうには届かないだろうが、そう心の中で呟いた。



「……はぁ……はぁ……大分、動きが鈍って来たな。……俺も似たようなもんだが」

「ギュッギュッギュッ!」

「ギュアァァァ!」


 しばらく……といっても数分程度の間、オークの攻撃を避けつつも浅く斬り付ける事を繰り返した。

 深く入り込んで攻撃をしなければ、オークの攻撃を避けるのは難しくないので、今のところ俺は無傷だ。

 オーク達の方は、片方が両足から血を流しているため、痛みもあって突進もできなくなっていて、動きも遅い。

 もう片方は、片足を多少斬り付けてはいるものの、突進ができない程ではない。


 二体のオークは、目を血走らせており、だいぶ興奮している様子だ。

 挑発し過ぎたなとも思うが、さすがに二体を同時に倒す方法がないために、こうやってじっくり力を削いでいくしか方法がない。

 短時間とはいえ動き回って、荒くなった息を整えつつオーク二体を見て、そろそろかなと考える。


「ギュオアァァァァ!!」

「ギュゥゥゥアァァ!」

「っ、来た!」


 俺の考えの通りという程でもないが、片方の傷が浅いオークが俺に向かって興奮状態のまま突進。

 もう片方も同じように突進しようとしたようだが、両足が上手く動かないようで置いて行かれている。

 今がチャンスととらえた俺は、突進して来るオークをできるだけ引き付けるため、少しだけ後ろに下がりながら、近づいて来るのを待つ。

 そう……そうだ……もっと離れろ……助走距離が長い程、止まるのにも時間がかかるし、置いて行っているオークとの距離も離れる……。


「ギュオアァァァ! ギュア!?」

「っ!」


 二メートル程度まで近づいたあたりで、突進してきたオークの横に向かって地面を蹴る。

 たっぷりと助走していたため、方向を転換する事もできずに通り過ぎていくオーク。

 俺が正面からいなくなった事に驚いた声を上げていたが、それには構わずもう片方のオークへ向かい、剣を構えて駆けた!


「ギュオォォォォ!」

「……はぁっ!」

「ギュ!?」


 ひたすら俺を狙う事だけを考えているためか、通り過ぎたオークが後ろで無理矢理方向転換しようと、声を上げたのが聞こえてくるが、無視して置いて行かれた方のオークへと剣で突きを放つ。

 足の怪我で思ったように体が動かず、急に俺が向かてきたため、驚きながらも迎え撃とうと腕を振り上げたが、それが降ろされる前に、オークの胸へ深々と俺の剣が突き刺さった。


「ギュアァ! ギュアァ!」

「っと!」


 さすがに一撃で完全に息の根を止めるとはいかなかったのか、腕をバタバタと動かして目の前にいる俺を殴ろうとしている。

 多分、咄嗟の防衛本能で動いているだけだろうが、それでもオークの膂力で繰り出される腕だ、当たれば痛いじゃすまないだろう。

 一応心臓を狙ったつもりだが、甘かったようだ……そもそも、人間と似た位置に心臓があるかどうかもわからないか。

 そんな事を考えながらも、すぐに突き刺さったままの剣から手を離して、オークからは届かない距離まで下がった。


「ギュオアァァァァ!!」

「っ!? うぐっ!」


 後ろに下がりながらも、体を振り返りながらもう一体のオークへと向かう。

 だが、そこには俺の予想よりも早く戻って来ていたオークが、既に突進の勢いのまま腕を振り上げていた。

 もう一体のオークを助けるため……なんて事を考えているのかどうかはわからないが、少しだけオークの底力を見誤っていたようだ。

 危ないと思った時にはすでに遅く、振り上げられていた腕は俺の体の左側へと振り下ろされた!


 避ける事ができないため、そのまま受けるよりもマシだろうと左腕を持ち上げ、その腕を受け止める。

 さすがの力か、受けた腕から骨の軋む音が聞こえた……これ、折れはしなくてもヒビくらいは入ったかもなぁ……ものすごく痛い。

 痛みに視界がぶれて、怯みそうになる。

 だがここで怯んでしまっては、オークを自由にさせて畳み込まれてしまう!


「こなくそぉ!!」


 やけくそではないが、とにかく歯を食いしばって痛みに耐えながら、腰の左に下げている刀へと右手を伸ばし、引き抜く!


「ギュオォォァァァ!」

「ぐ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「ガウ!?」

「タクミさん!?」

「パパ!」

「……」


 刀で腹を深く斬られたオークは、そこから血を流しながら悲鳴に聞こえる声を張り上げて、突進の勢いのまま俺の左横を通過した。

 ここまで似たような事を狙っていたわけじゃないが、剣を使って一体に深手を負わせ、刀を抜いて武器を持ち替える……という事を考えたのは、ディームとの戦闘経験からだ。

 持っていた剣を収め、改めて刀を抜くような隙はないため、持ち替える方法としてこうしたし、これなら危ない橋を渡る事にはなっても、確実にオークへ致命傷を与えられると考えた。

 そのために片方のオークを重点的に狙って、動きを遅くするようにしたし、二体のオーク同士の距離が離れるのを待ったんだけどな……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 まぁ、流石に戦闘が本職では無いですしねぇ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ