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獣人の情報を集める事になりました



「うむ。実際その場にいたわけではないが、獣人に対しこの国の人間が圧倒的に不利だったという情報はない。個人の力量は負けていたようだが、数の多いこちらが、むしろ有利だったと言われているくらいだからな」

「つまり、リーザには特別戦う才能があると言う事ですね?」

「そういう事になる。まぁ、推論でもあるのだがな。もっと、獣人の情報が欲しいところだな……」

「獣人の事ですか……ふむ……」

「セバスチャン、心当たりが?」


 リーザには、獣人の中でも戦闘センスが優れているという見方が優勢なようだ。

 確かにオークを軽々と倒すような子供が、獣人の中で普通であるのなら、戦争の時に優秀な兵士が多くなるのは間違いないだろうし、人間がそれだけ不利になる。

 中にはそういった獣人もいたのだろうし、いたからこそ根も葉もないうわさが流れたのかもしれないな。

 とはいえ、エッケンハルトさんやセバスチャンさんでさえ、獣人と接するのはリーザが初めてでわからない事が多い。


 難しい表情で獣人の情報を欲するエッケンハルトさんに対し、セバスチャンさんが顎に手をやって考える。

 それは、何か思い当たる事があるような雰囲気で、エッケンハルトさんだけでなく、俺やクレアさんもセバスチャンさんに注目した。


「いえ……獣人の情報は、おそらく王家と北側の領主貴族が詳しいでしょう。戦争に直接関わっていない南側、つまりリーベルト家にはその情報は少ない……と思いまして。ですが、おそらく本邸の蔵書の中には、獣人に関して書かれている書物もあるのではないかと……」

「本邸か。確かにこちらの屋敷とは違い、あちらの蔵書であれば、何か書かれてる可能性は高いか……」

「ですけど、あの蔵書の中を探すのは、一苦労どころではないのではないですか?」

「……そんなに、書物があるんですか?」

「うむ……タクミ殿のよく知る屋敷、あの建物の半分以上は埋まっている。そう考えるとわかりやすいか」

「それは……相当な量ですね……」

「長年蓄積された結果ですね。あの蔵書は、知識の宝庫としては素晴らしいと思うのですけど……一度埋もれてしまって、もう駄目かと思いました……」

「あの頃は、今よりも……それこそティルラよりも好奇心で動いていたからな、クレアは……」


 国の南側に位置するリーベルト家、公爵家の領地では獣人の情報に関しては少ないというのは、リーザと初めて会った時になんとなく聞いていた。

 あらゆる情報が、通信技術を使ってやり取りされてた日本とは違い、直接話すか書き記すくらいしか伝達方法がないから、仕方ないと言えば仕方ないか。

 直接話すにも、書き記した物を見てもらうにも、長い時間をかけて移動しないといけないからな。

 それはともかく、本邸の書物にならもしかすると、獣人に関する事が書かれている書物があるかもしれないとの事。


 一苦労どころではない書物を探す作業、というのは想像しづらいが、屋敷の半分程度の大きさの建物に本がズラッと並んでいるのなら、思い浮かべられる。

 ……大きめの図書館のような感じかな。

 探すのに苦労するという事だから、ジャンルごとに整理されていたりはしない、ちょっと混沌とした様子なんだろう。

 本の虫とか、本好きだったら喜びそうな場所のようだ。


 それにしてもクレアさん、小さい頃はそういうところで遊んでいたのか……。

 本が詰まっている棚を倒して、体ごと埋まってしまったのかもしれない。

 溜め息を吐くようにしているエッケンハルトさんを見ながら、そういうクレアさんも可愛いな……と思う反面、紙はかさなると重いから、埋もれてしまったクレアさんは本当に危なかったんだろうと思う。

 場合によっては、棚も一緒に倒れて来ていたかもしれないし……結構危なかったのかもしれない。


「書物に関しては、あの者に任せれば良いでしょう。公爵家で働きながらも、理由が書物を読むため……ですからな。……まったく」

「ははは、あいつは確かにそうだったな。あれなら、どこにどんな書物があるのかを覚えていてもおかしくないか。うむ、本邸に戻ったら任せてみよう。あとは、王家や北側の貴族に使いの者を出して、情報収集をするか」

「……セバスチャンさんが、溜め息を吐いているんですが……?」

「あぁ、それはな……その者というのが、セバスチャンの息子なのだ。セバスチャンは、我がリーベルト家に尽くしてくれているが、その者はあまりそういった事を考えていないようでな。父親であるセバスチャンの影響で執事になったはいいが、暇な時は常に書物を読み漁っているようで、あまり真面目とは言い難いのだ」

「……真面目にやれば、公爵家の家令にもなれたのですがな……はぁ……誰のせいでああなったのか」

「あー……そうなんですね……」


 広い場所で整理されていない書物の中から、獣人の事が書かれている書物を探すのに適任がいるらしい。

 セバスチャンさんの表情は、何やら難しそうだが、エッケンハルトさんの方は少し楽しそうだ。

 なぜそうなのかを聞いてみると、どうやらその人はセバスチャンさんの息子さんらしい。

 結構な年齢に見えるセバスチャンさんは、孫がいてもおかしくないようにも見えるから、息子がいる事にはあまり驚きはないが……その人も執事になっているんだな。


 家令という事は使用人さん達のトップという事だろうから、それになれる可能性があるのは優秀な人だというのはわかる。

 その人が誰かの影響で本が好きになり、ひたすら読み漁るってそれ……セバスチャンさんの影響なんじゃ……?

 セバスチャンさんは、説明爺さんと俺が心の中であだ名をつけているように、様々な本を読んで知識を仕入れていて、それを説明するのが好きなわけだが……知識を仕入れるのには多くの本を読まなければいけない。

 それを見て育った息子さんが、本に興味を持ち、そのまま……と考えるのが一番自然な気がするな。


 溜め息を吐いているセバスチャンさんに、貴方のせいですよとは言えないが、エッケンハルトさんやクレアさん、フィリップさんと顔を見合わせて少しだけ笑ってしまった。

 他の人達も、どうしてそうなったのか俺と同じ結論のようだ……。

 鋭く様々な事に気が付いて、優秀な人ではあるんだが、自分の息子や自分に関しては、意外と鈍い所があるのかもしれないな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 ……そう言えば、セバスさんの子供の話は初ですね?
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