明日の予定を決める会議を開きました
「凄い! 美味しい!」
「はははは、そうか? 自分で倒したオークだからかもな?」
「ワフ! ワフ!」
リーザが倒したオークを使っての夕食。
全員で焚き火を囲んで、ライラさんに料理をしてもらった。
もちろん、俺やリーザだけでなく、他の人達も手伝ったがな。
夕食が出来上がるまでの間、エッケンハルトさんだけはおもむろに川に入り、腰が浸かるくらいの場所で、刀と剣を両手で重ねて持って素振りを始めた。
刀と剣を両方持っているのは、重さを追加するためなんだろうが……子供に負けるわけにはいかぬ……とか呟いていたから、リーザやティルラちゃんが戦う姿に触発されたのかもしれない。
だが、公爵様であるエッケンハルトさんが、これ以上強くなる必要性はよくわからない……。
自分の身を守るという事なら、今でも十分なはずなんだけどなぁ……向上心があるのはいい事か。
ともあれ、そんなエッケンハルトさんを見守りつつ夕食を作り終えて、皆で食事タイム。
リーザは、自分が倒したオークを食べてご満悦だ。
ティルラちゃんもそうだったが、やっぱり自分で倒したオークは別格らしい。
自分で育てて収穫した物は、他のよりも美味しく感じる……という感覚と同じなんだろうか?
まぁ、実際は戦闘を経てある程度の緊張状態からの解放感や、動いて空腹になったからという理由の方が、強い気もするけどな。
「タクミ殿、少しいいか?」
「はい? どうかしましたか?」
「ワフ?」
夕食を食べ終わり、焚き火の前でリーザやレオとのんびりしていると、エッケンハルトさんから声をかけられた。
ほんのり真面目な雰囲気を醸し出しているから、雑談をすると言うわけじゃないんだろう。
「明日からの予定なんだがな……?」
どうやら、エッケンハルトさんの話は明日以降の予定についてらしい。
リーザの事をレオに任せ、その場を離れてちょっとした会議を始める。
二つある焚き火のうち、リーザ達がいる方とは別の焚き火を囲んているのは、俺とエッケンハルトさんだけでなく、セバスチャンさんやクレアさん、フィリップさんもいた。
こういった会議にセバスチャンさんがいるのはいつもの事だし、フィリップさんは護衛としての参加だろう。
さっきまでまだ微妙に疲れを残している様子の、アンネさんと一緒にいたクレアさんが来ているのは、変な事をエッケンハルトさんが考えないようにするためらしい。
先程川で素振りをしていたのを見ていて、またおかしな事を考えそう……と思ったらしい。
「さて、皆集まったな」
「タクミ様を呼びに行くのは、私でも良かったのでは? 旦那様が行かれなくとも」
「なに、近かったしな。セバスチャンはフィリップを呼びに行っていたのだから、仕方あるまい。それに、そんな細かい事は気にしなくてもいいのだぞ?」
皆を見渡して、エッケンハルトさんが会議を始めようとした時、横に立ったセバスチャンさんが漏らす。
そう言えば、いつもならこういう時セバスチャンさんや執事さんが呼びに来る事が多かったが、今回はエッケンハルトさんから直接だったな。
セバスチャンさんとしては、一番上の地位にいるはずの人物が直接ではなく、もっと使用人を使って……と言いたいんだろうが、エッケンハルトさんの方は特に気にしていない様子。
権力だとか地位を気にしないのは、エッケンハルトさんの大雑把な性格とも言えるし、長所とも言えるのかもしれない。
「ともかく、明日の予定だ。今日、タクミ殿とティルラは見事にオークを討ち取った。シェリーとリーザもな」
「まさか、リーザちゃんがあんなに強いだなんて思いませんでした……」
「それは私達も同様だ。最初は、やるだけやって力不足という事でオークと戦わせないようにするつもりだったんだがな……」
「お父様が最初から断っていれば、危険な事はしなくて済んだのでは……?」
「それはそうなんだがな……やる気を出しているリーザに否を突き付けるのは、少々気が咎めたのだ」
リーザと腕試しを始めた事を、まだクレアさんに責められているようだが、あんな事を考え付いたエッケンハルトさんは困り者だなぁと思う反面、あれくらいしかいい方法がなかったのかもとも思う。
俺もあの時、どう言ったらリーザが傷付かずに済むかと考えるだけで、何も言えなかったしなぁ……。
クレアさんは、リーザの事をティルラちゃんと同じ妹のように可愛がってくれているから、すごく心配してくれたんだろう。
それ自体は嬉しい事ではあるが、これ以上エッケンハルトさんを責めるのもかわいそうだ。
「クレアさん、俺も止められませんでしたし、リーザの意気込みを無駄にする方法は他になかったのかもしれません。結果として、リーザが戦える事がわかったんですし……それくらいで……」
「……タクミさんがそう言うなら、仕方ありません……」
「ほっ……」
これ以上は……という事でクレアさんを止めたけど、このままだとリーザを止められなかった俺にまで飛び火しそうだったからな。
とりあえず、俺の言葉で引き下がってくれたようで、良かった。
エッケンハルトさんは、ホッとした息を吐きつつ、改めて気を引き締めた表情に戻った。
「タクミ殿は、幾度かの戦いを経験している。そろそろ、複数戦闘をやってみるのはどうだ?」
「複数戦闘ですか?」
「うむ。オークを二体以上相手にする事だな。それに慣れたら、フィリップ辺りと組んで、二対二という経験をしてみるのも悪くないな」
「私は、いつでも構いません」
「二体……ですか。……そうですね、ランジ村でも近い経験はありますので、なんとかできるかと」
「それでは、明日はタクミ殿は二体のオークだな。場合によっては、フィリップか誰かと組んでの戦闘だな。これは、自分一人だけではない状況で、協力して戦う事の練習だ。フィリップ以外と組んでもいいのだが……部下を持っているフィリップが適任だろうな」
俺はそれなりに戦闘に慣れて来ているという事で、明日以降は一体ではなく二体のオークを相手にする事がになった。
二体以上を相手、というのはランジ村で近い経験をした事がある。
あの時は、とにかく時間を稼ぐのに必死だったのと、できるだけ一対一の状況で戦おうとしていた。
村の人達も協力してくれたから、一応オークに囲まれる事はなかったが、近い経験はしていると言えるのかもしれない。
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