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503/1996

フェンリルは予想以上に危険な魔物のようでした



「そう、それだ。フェンリルが魔法を使う事は広く知られているから、私も知っていたが……連続で使用できるとは思わなかった。――レオ様、フェンリルならできるものなのですか?」

「ワフ? ワウ……ワフワフ、ワフンワフワフー?」

「んー、どうなんだろう? 多分、シェリーにもできたんだから、他のフェンリルもできるんじゃないかな? って言ってるー」

「レオ様でもわからないのですか……」

「エッケンハルトさん、そういった事は聞いた事はないんですか? もしくは、実際に他のフェンリルと遭遇した時とかに見たりとか……」


 連続で魔法を使用したシェリーの事を思い出したエッケンハルトさんが、レオにその事を聞くが、首を傾げてはっきりしない。

 レオにもわからない事があるんだなぁ……と思う反面、それも当然かとも思う。

 シルバーフェンリルだからって、なんでも知っているわけじゃないからな。

 エッケンハルトさんが難しい顔をしているのに、俺から他で同じような事例がなかったのか聞いてみた。


「いや私はフェンリルと会うのは、シェリーが初めてだからな。それに、あまり人と遭遇して戦うという事が多くない魔物だ。あまり情報がないのだよ。まぁ、特徴や戦い方なんかは一応、伝わってはいるがな」

「そうなんですか? ……だから、このフェンリルの森や初代当主様は、貴重なんですね」

「それもあるな。通常、フェンリルは広い森の奥で群れて暮らしていると言われている。魔法を連続で使用する事は知られていないようだが、魔法を使う事と身体能力の高さは広く知られているからな。そんな魔物がいる森の奥深くに、わざわざ行こうと考える者は少ない。一体ならまだしも、群れでいるような場所に行くなど、命を捨てに行くようなものだ。……時折、自分の力を誇示したがる馬鹿者が、森に入って帰って来ないという事もあるようだが」

「フェンリル自体は広く知られていて、恐れられている……という事ですか……」


 エッケンハルトさんならフェンリルと戦った事もあるかも……と思ったが、それはないらしい。

 まぁ、公爵家の当主という偉い人なんだから、さすがにわざわざ会いに行くような無謀な事はしないか。

 それに、フェンリルの方も森の奥で暮らしているらしいし、エッケンハルトさんの言うような命知らずな人間が行く以外は、そうそう会う事もないんだろうな。

 そう考えると、俺がクレアさんと出会ってすぐ、森の奥にフェンリル……いや、シルバーフェンリルを探しに行くと言ったクレアさんが、どれだけ無謀な考えだったのかわかる。


 レオというシルバーフェンリルがいてこそ……というのが大きかったんだろうが、これは確かにあの時セバスチャンさんやライラさん達が慌てて止めようとしていたのも納得だな。

 それこそ、あの時のクレアさんはセバスチャンさん達にとって、無謀な人に見えたのかもしれない。


「フェンリルの全てが……というのはまだわからないが、ともあれシェリーは魔法を連続で使用できるという事が判明したわけだな。……シェリーが特別に使えると考えるのは、浅はかだな。これは、今以上にフェンリルに対して警戒心を強めねばならんだろうな」

「どうするんですか?」


 シェリーしか今のところフェンリルを見ていないのだから、他のフェンリルがどうなのか……という事はわからない。

 ここにいるシェリーだけが特別で、と考えるのも確かにその通りだ。

 警戒心を強めるというエッケンハルトさんは、何かを考えているようだが……フェンリルに対して何かを仕掛けるとか考えていたりするのかな?


「なに、簡単な事だ。フェンリルに対する脅威をもう少し民に知ってもらう。それと、フェンリルが確認されている場所への立ち入りを禁止する事だな。今のところ、フェンリルが能動的に人間に対して何かをしてきているという事は報告されていない。ほとんどが、自ら赴いて帰って来なかった程度だ。……屋敷に戻ったら……いや、本邸に戻ってから取り掛かる事になるだろうがな」

「成る程……それは確かに……」


 無謀な人が出ないように、しっかりとフェンリルに相対するのは危険だと伝えるという事か。

 フェンリルを排除して危険を取り除くなんていう、過激な考えじゃなくて良かった……。

 とにかく、『触らぬ神に祟りなし』という事だろう……神様とかではなく、フェンリルに対してだけど。

 事なかれ主義ともとられそうだが、下手に被害を出すよりはよっぽどいい。

 それでも、さっきエッケンハルトさんが言っていたように、無謀に挑戦するような人間はいるんだろうけど……少しは減ってくれるといいな。


「……それとだが……いや、それとなんですが……レオ様?」

「ワフ?」

「もしかして、レオ様も連続で魔法を使えるのですか? フェンリルができるのであれば、シルバーフェンリルも……」


 若干、恐る恐るといった様子で、レオに聞くエッケンハルトさん。

 確かに、フェンリルの上位であるシルバーフェンリルならば、同じ事ができても不思議じゃない。

 というより……できるんだろうなぁ……俺の相棒は凄い奴だよまったく。


「ワウ! ワフ?」

「いや、それは止めておこうなレオ? なんとなく、大変な事になりそうだし……」

「ワフゥ……」

「レオ様はなんと? ……タクミ殿が止めた事からして、なんとなく想像がつくが」

「頼む、リーザ」

「うん。もちろん! 使ってみようか? だってー」

「むぅ……見てはみたいが、必要でない時に使ってもらうのもな。申し訳ありません、レオ様。魔法を使うのは必要な時という事で……」

「ワフ……」


 勢いよく頷いてシュタッと立ち上がったレオだが、声をかけつつ体を撫でて止めた。

 通訳するのが楽しそうだし、リーザの役目だから頼んだが、俺の目にはレオが強いのいっとく? とやる気満々に見えたからな……。

 声には出さなかったが、やっぱりレオは魔法が使いたいようで、少しだけ不満げに息を漏らしながら、またお座りしたレオ。

 ……いつか、周囲の影響がない範囲で魔法を使わせてやるから……全力は、さすがに難しいだろうけど。


 エッケンハルトさんの方も、なんとなくレオの雰囲気と俺が止めた事で察したのか、口の端を引きつらせるようにしながらレオに謝って使わないように言ってくれた。

 とりあえず、溜め息を吐くようにしたレオだが、一応は納得してくれたようだ。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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